「スクラムマスターとはどんな役割?」「プロジェクトマネージャーと何が違うの?」と気になって検索した方も多いのではないでしょうか。
スクラムマスターとは、アジャイル開発の手法の一つである「スクラム」がチームで正しく機能するよう、進め方を支え、障害を取り除き、チームの成長を促す役割のことです。 指示や命令でチームを動かすのではなく、チームが自ら考えて成果を出せる状態をつくる点が大きな特徴です。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、スクラムマスターの仕事内容や種類、1日の流れ、必要なスキル、資格、年収、なり方までを解説します。
スクラムマスターとは
スクラムマスターとは、スクラムで開発を進めるチームにおいて、スクラムの考え方と進め方が根付くよう支援する役割です。チームのコーチであり、進行役であり、障害を取り除く支援者であることが、スクラムマスターの本質です。
スクラムの考え方をまとめた公式の指針である「スクラムガイド」でも、チームに欠かせない役割の一つとして定義されています。
スクラムとは
スクラムとは、短い期間で計画・開発・確認・振り返りを繰り返しながら、製品を少しずつ改善していくアジャイル開発の手法です。この一定の短い期間を「スプリント」と呼び、1か月以内の期間で区切って開発を進めます。変化に柔軟に対応しやすいことから、Webサービスの開発などで広く取り入れられています。
プロダクトオーナー・開発者との違い
スクラムのチームは、プロダクトオーナー、開発者、スクラムマスターの3つの役割で構成されます。プロダクトオーナーは「何を作るか」の優先順位を決め、製品の価値に責任を持ちます。開発者は実際に製品を作ります。スクラムマスターは「どう進めるか」を支え、チームが成果を出しやすい状態をつくる役割です。
プロジェクトマネージャー・エンジニアリングマネージャーとの違い
プロジェクトマネージャーは、進捗や予算、納期を管理し、計画どおりに進める責任を持ちます。エンジニアリングマネージャーは、メンバーの評価や採用など人と組織に責任を持ちます。スクラムマスターは、どちらとも異なり、チームの自律的な働き方を支えることに重きを置き、メンバーへの指示や評価は基本的に行いません。
スクラムマスターの仕事内容【スプリントの流れ別】
スクラムマスターの仕事は、スプリントの流れに沿って進みます。どの場面でも「チームが自分たちで考え、改善できる状態をつくる」ことが共通の目的です。
| 場面 | 主な作業 | スクラムマスターの役割 |
| スプリントの計画 | 今回のスプリントで取り組む内容を決める | 話し合いを進行し、合意形成を支える |
| 毎日の短い打ち合わせ | 進捗と課題を共有する | 時間内に要点を共有できるよう支える |
| 開発中 | 開発を進める | 作業の妨げとなる障害を取り除く |
| スプリントの確認 | 完成したものを関係者と確認する | 意見を集め、次につなげる場をつくる |
| 振り返り | チームの進め方を見直す | 改善点を見つけ、次の行動につなげる |
| 組織への働きかけ | チームの外との関係を整える | スクラムへの理解を広げ、支援を得る |
スプリントの計画
スプリントの最初に、チームで取り組む内容と進め方を決める話し合いを支えます。プロダクトオーナーと開発者の意見がかみ合うよう、進行役として議論を整理します。
毎日の短い打ち合わせ
スクラムでは、毎日15分以内で進捗と課題を共有する「デイリースクラム」を行います。スクラムマスターは、この場が形だけにならず、課題の早期発見につながるよう支えます。
開発中の障害の除去
開発を進めるうえで妨げとなる問題を「障害」と呼びます。他部署との調整待ちや、開発環境の不備などを見つけ、チームが開発に集中できるよう取り除きます。
スプリントの確認
スプリントの終わりに、完成したものを関係者に見せて意見をもらう場を設けます。集まった意見を、次のスプリントの改善につなげます。
振り返り
チームの進め方を見直す振り返りの場を進行します。うまくいった点と改善点を率直に話せる雰囲気をつくり、次のスプリントで試す改善策を決めます。
組織への働きかけ
チームの外にいる上司や他部署に、スクラムの考え方や進め方を説明します。組織全体の理解が進むことで、チームが動きやすい環境が整います。
スクラムマスターの種類
スクラムマスターは、担当するチームの数や関わり方によって働き方が変わります。専任で置く企業もあれば、開発者やリーダーが兼任する企業もあります。
| タイプ | 主な働き方 | 特徴 |
| 専任型 | 一つのチームのスクラムマスターに専念する | チームに深く関わり、変化を支えやすい |
| 兼任型 | 開発者やリーダーと兼務する | 少人数の企業に多く、現場に近い立場で関われる |
| 複数チーム担当型 | 複数のチームを支援する | 進め方の共通化やチーム間の調整も担う |
| 組織支援型 | 組織全体へのスクラム導入を支援する | アジャイルコーチと呼ばれることもある |
求人を見ていると、スクラムマスターの募集は、自社サービスを開発する企業や、アジャイル開発の導入を進めている企業からが中心です。専任の求人では、スクラムの実践経験に加え、チームの改善を実現した経験が重視される傾向があります。
スクラムマスターの1日の流れ(例)
ここでは、自社サービスを開発する企業で、専任のスクラムマスターとして一つのチームを支える場合の一例を紹介します。
・9:30 業務開始、チャットとチームの作業状況を確認
・10:00 デイリースクラムの進行
・10:30 前日に挙がった障害について、他部署と調整
・12:00 昼休憩
・13:00 プロダクトオーナーと、取り組む内容の優先順位を整理
・14:30 メンバーとの個別の対話
・16:00 次回の振り返りの進め方を準備
・17:00 社内向けのスクラム勉強会の準備
・18:00 作業内容の記録、翌日のタスク整理、終業
チームの状況を観察し、必要な支援を先回りして行うのが、スクラムマスターの働き方の特徴です。 スプリントの区切りには、計画や振り返りの進行で、会議の時間が増える日もあります。
スクラムマスターに必要なスキル・知識
スクラムマスターには、スクラムの知識に加えて、人とチームを支えるための力が求められます。答えを与えるのではなく、チームが自ら答えを見つけられるよう導く力が、最も重要なスキルです。
| 領域 | 求められること |
| スクラムの知識 | スクラムガイドの考え方と進め方を正しく理解している |
| 進行力 | 会議を目的に沿って進め、全員の意見を引き出せる |
| 観察力 | チームの雰囲気や小さな変化に気づける |
| コーチング力 | 質問を通じて、メンバー自身の気づきを促せる |
| 調整力 | チームの外との関係を整え、障害を取り除ける |
| 開発の理解 | 開発の流れや技術的な課題を理解し、支援に活かせる |
スクラムマスターに近い経験をどれだけ積んでいるかは、次の項目で確認できます。
・□ チームの会議で進行役を務めたことがある
・□ 振り返りの場で、改善策を決めて実行につなげたことがある
・□ メンバーの作業を妨げる問題を、調整して解決したことがある
・□ 指示ではなく、質問を通じて相手の考えを引き出すことを意識している
・□ スクラムやアジャイル開発の考え方を学んだことがある
当てはまる項目が多いほど、スクラムマスターに必要な経験を積み始めていると考えられます。
スクラムマスターに役立つ資格
スクラムマスターになるのに、必須の資格はありません。 ただし、スクラムの知識を体系的に学び、理解を客観的に示す手段として、資格は役立ちます。
・スクラムに関する民間の認定資格:認定スクラムマスターなど、研修や試験を通じてスクラムの理解を証明できます
・プロジェクトマネージャ試験:プロジェクト管理の高度な知識を問う国家試験です
・応用情報技術者試験:開発や管理を含む応用的な知識を問う国家試験です
出典:IPA「情報処理技術者試験」
スクラム関連の民間資格は、認定する団体ごとに受講の条件や試験の内容が異なります。取得を検討する場合は、各団体の最新の情報を確認してください。
スクラムマスターの年収
スクラムマスターだけを集計した公的な年収統計はありません。そのため、ここでは関連するIT職種の平均年収を参考として紹介します。開発の理解とチームを支える力の両方が求められるため、経験によっては高めの水準を目指せる役割です。
| 指標(参考:関連するIT職種) | 金額(目安) |
| システムエンジニア(Webサービス開発)の平均年収 | 約574万円 |
| システムエンジニア(基盤システム)の平均年収 | 約684万円 |
| 給与所得者全体の平均年収 | 約478万円 |
出典:厚生労働省「job tag/システムエンジニア(Webサービス開発)」「job tag/システムエンジニア(基盤システム)」(令和6年賃金構造基本統計調査に基づく)
出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
上記のシステムエンジニアの値は、スクラムマスターとは職務が異なるため、年収の水準は別に考える必要があります。目安としてご覧ください。
需要の面では、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.43倍で、職業計の1.12倍を上回ります。IT人材は2030年に最大約79万人不足するとの試算もあり、限られた人数のチームで成果を高められるスクラムマスターの価値は高まっていると考えられます。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)
求人を見ていると、専任のスクラムマスターの募集は、チームの改善を数字で示せる実績や、複数チームの支援経験がある人材ほど、高めの年収帯で提示される傾向があります。
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スクラムマスターのやりがいと大変さ
スクラムマスターには、チームが成長し、自ら成果を出せるようになる過程を支えられるやりがいがあります。一方で、成果が見えにくい役割ならではの大変さもあります。
やりがい
・チームが自律的に動けるようになる変化を間近で実感できる
・メンバーが働きやすい環境を、自らの手でつくれる
・開発の進め方そのものを改善する仕事に関われる
・アジャイルコーチなど、組織全体を支える道につながる
大変さ
・自分の成果が数字や形として見えにくい
・スクラムへの理解が浅い組織では、進め方を変える粘り強さが求められる
・指示で動かせないため、待つことや見守ることにも忍耐が必要になる
私たちの相談現場では、「スクラムマスターという名前だけで、実際は進捗管理と会議の調整係になっている」という声をよく聞きます。ここで大切なのは、つらさの原因がスクラムマスターという役割そのものにあるのか、スクラムが形だけで導入されている組織の環境にあるのかを切り分けることです。 環境が原因であれば、スクラムの考え方が根付いた企業へ移ることで、本来の役割を担える可能性があります。
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スクラムマスターになるには
スクラムマスターは、スクラムで開発するチームで経験を積み、進め方の改善に関わった人が担うことが多い役割です。まずはスクラムの現場に関わり、進行や改善の経験を少しずつ積み重ねることが近道です。
次のステップで進めると、無理なく近づけます。
- スクラムガイドを読み、考え方と進め方の全体像を理解する
- スクラムで開発するチームに、開発者などとして参加する
- デイリースクラムや振り返りの進行役を引き受ける
- チームの障害を見つけ、調整して解決する経験を積む
- 民間の認定資格などで、知識を体系的に整理する
社内でスクラムを採用していない場合は、自分のチームで振り返りの場を設けるなど、小さく取り入れてみるのも一つの方法です。選考では、チームの変化を数字で示すと評価されやすくなります。
例文:6名の開発チームでスクラムマスターを担当しました。振り返りの進め方を見直し、毎回の改善策を実行に移す仕組みをつくりました。その結果、スプリントで予定した作業の完了率を○割向上させています。
応募先を選ぶ際は、面接で次のような質問をしておくと安心です。
・スクラムマスターは専任ですか、他の役割との兼任ですか
・プロダクトオーナーは、どなたがどのように担っていますか
・スクラムの導入にあたって、経営層や他部署の理解はどの程度ありますか
最後の質問は、スクラムが形だけになっていないかを見極めるのに役立ちます。
スクラムマスターへの一歩を、一緒に考えます
市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
まとめ
・スクラムマスターとは、スクラムがチームで正しく機能するよう、進め方と成長を支える役割
・プロダクトオーナーが「何を作るか」、スクラムマスターが「どう進めるか」を支える
・指示や評価ではなく、進行、障害の除去、振り返りの支援を通じてチームの自律を促す
・役割に違和感があるときは、役割そのものの問題か、スクラムが形だけの環境の問題かを切り分ける
・スクラムの現場で進行や改善の経験を積み、知識を体系化して目指すのが一般的な道
よくある質問
スクラムマスターは未経験でもなれますか?
スクラムの実践経験がまったくない状態で、専任のスクラムマスターとして採用されるのは難しいのが実情です。まずはスクラムで開発するチームに参加し、会議の進行や振り返りの支援など、できるところから経験を積むことがおすすめです。
スクラムマスターはエンジニア出身でないとなれませんか?
エンジニア出身でなくても目指せます。ただし、開発の流れや技術的な課題を理解していると、チームの障害に気づきやすく、支援の質が高まります。エンジニア以外の方は、開発の基礎知識を身につけておくと、現場で信頼を得やすくなります。
スクラムマスターとプロジェクトマネージャーは兼任できますか?
兼任している企業もありますが、役割の考え方が異なるため注意が必要です。プロジェクトマネージャーは計画どおりに進める責任を持ち、スクラムマスターはチームの自律を支えます。兼任する場合は、指示する立場とのバランスを意識することが大切です。
スクラムマスターの年収は高いですか?
スクラムマスターだけを集計した公的統計はありません。参考として、関連するシステムエンジニア(Webサービス開発)の平均年収は約574万円です。専任の求人では、チームの改善実績や複数チームの支援経験がある人材ほど、高めの年収帯で提示される傾向があります。
資格は取ったほうがよいですか?
必須ではありませんが、スクラムの知識を体系的に学ぶ手段として役立ちます。特に、スクラムの実践経験が少ない方にとっては、理解を客観的に示す材料になります。ただし、選考では資格以上に、実際にチームを支えた経験が重視される傾向があります。
AIの普及でスクラムマスターの役割は変わりますか?
進捗の整理や記録などの作業は、AIの活用で効率化が進むと考えられます。一方で、チームの雰囲気を感じ取り、対話を通じて成長を促す役割は、引き続き人に求められます。AIを道具として活用し、人にしかできない支援に時間を使える価値は高まると見られています。
チームを支えるキャリアについて、まずは情報を集めながら考えたいという方もいるのではないでしょうか。スクラムマスターを含むIT職種のキャリア研究に役立つ情報を、LINEでお届けしています。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【IT部門統括責任者】キャリアアドバイザー 小畑 大夢
近畿大学卒業後、新卒で当社入社。圧倒的な当事者意識で営業活動に従事し、全社MVP・MVMの連続受賞をはじめ多くの表彰を経験。
圧倒的な求職者様目線を強みに、これまで多くのITエンジニアの転職成功に貢献。
現在は、IT部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
