「樹脂 材料 選定」と検索したあなたは、「部品を金属から樹脂に置き換えたいが、どの樹脂を選べばいいか分からない」「種類が多すぎて、カタログのどこを見ればいいのか迷う」という状況ではないでしょうか。
樹脂材料の選定は「使用条件の整理→求める特性の優先順位づけ→候補の絞り込み→試作・評価→量産性とコストの確認」という順番で進めれば、初心者でも筋道を立てて判断できます。 樹脂は金属に比べて温度や時間、湿気の影響を受けやすいため、「使われる環境」を具体的に想像することが何より大切です。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、樹脂材料の種類と特徴、選定の5ステップ、確認すべき特性、よくある失敗と学び方までを解説します。
樹脂材料とは?金属との違い
樹脂材料は、一般に「プラスチック」と呼ばれる高分子の材料です。軽く、形を自由につくりやすく、さびないことから、家電、自動車部品、医療機器、産業機械のカバーや歯車など、幅広い製品に使われています。
樹脂の選定で最も大切なのは、「金属と同じ感覚で選ばない」ことです。 樹脂は温度や時間、湿気によって強さや寸法が変わりやすく、その性質を理解しないまま選ぶと、使用中の変形や割れにつながります。
| 観点 | 金属材料 | 樹脂材料 |
| 重さ | 重い | 軽い |
| 強度・剛性 | 高い | 金属より低いものが多い |
| 耐熱性 | 高い | 種類によって大きく異なる |
| さび・腐食 | 対策が必要な場合がある | さびない |
| 形状の自由度 | 加工方法によって制約がある | 射出成形で複雑な形をつくりやすい |
| 時間による変形 | 常温では起こりにくい | 荷重をかけ続けると変形が進むことがある |
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂
樹脂は、熱に対する性質で大きく2つに分かれます。
- 熱可塑性樹脂:温めると柔らかくなり、冷やすと固まる樹脂。射出成形で量産しやすく、機械部品の多くはこちら
- 熱硬化性樹脂:熱を加えると化学反応で硬化し、再び温めても柔らかくならない樹脂。耐熱性や電気絶縁性にすぐれ、電子部品や接着剤などに使われる
機械部品の設計で最初に検討することが多いのは熱可塑性樹脂です。本記事でも、以降は熱可塑性樹脂を中心に解説します。
汎用プラスチック・エンジニアリングプラスチック・スーパーエンジニアリングプラスチック
熱可塑性樹脂は、性能と価格によって3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。
- 汎用プラスチック:安価で大量に使われる樹脂。日用品や外装部品に多い
- エンジニアリングプラスチック(略してエンプラ):強度や耐熱性を高めた樹脂。歯車や機構部品に使われる
- スーパーエンジニアリングプラスチック:さらに高い耐熱性・耐薬品性を持つ樹脂。価格は高い
性能が上がるほど価格も上がるため、「必要な性能を満たす中で、最も扱いやすく安価な層から選ぶ」のが基本の考え方です。
主な樹脂材料の種類と特徴【一覧表】
代表的な樹脂と「何が得意か」を押さえておきましょう。
| 分類 | 樹脂名 | 得意なこと | 注意点 | 主な用途例 |
| 汎用 | ポリプロピレン | 軽く安価で、耐薬品性がよい | 耐熱性・剛性は高くない | 容器、日用品、自動車内装 |
| 汎用 | アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂 | 成形しやすく外観がきれい | 溶剤や屋外の紫外線に弱いものがある | 家電の外装、筐体 |
| 汎用 | アクリル樹脂 | 透明性が高い | 割れやすく、溶剤に弱い | 表示板、カバー、照明部品 |
| エンプラ | ポリアセタール | 摺動性・耐摩耗性・寸法安定性がよい | 酸や一部の薬品に弱いとされる | 歯車、軸受、ファスナー |
| エンプラ | ポリアミド(ナイロン) | 粘り強く、耐摩耗性がよい | 吸水で寸法や強さが変わる | 歯車、ローラー、結束部品 |
| エンプラ | ポリカーボネート | 透明で衝撃に強い | 薬品によって割れが起きることがある | 保護カバー、照明、筐体 |
| エンプラ | ポリブチレンテレフタレート | 電気特性がよく成形しやすい | 加水分解に注意が必要 | コネクター、電装部品 |
| スーパーエンプラ | ポリフェニレンサルファイド | 耐熱性・耐薬品性が高い | もろさがあり、価格が高め | 電装部品、ポンプ部品 |
| スーパーエンプラ | ポリエーテルエーテルケトン | 耐熱性・強度・耐薬品性が非常に高い | 価格が非常に高い | 半導体装置、医療機器部品 |
| その他 | ふっ素樹脂 | 耐薬品性・摺動性・耐熱性が高い | 強度が低く、成形しにくい | パッキン、配管ライニング |
同じ樹脂名でも、ガラス繊維を混ぜて強化したもの、難燃剤を加えたものなど、多くの「グレード」があります。最終的な特性は、必ず樹脂メーカーのデータシートで確認してください。
樹脂材料選定の5ステップ
ここからが本題です。実務での樹脂材料選定は、次の5ステップで進めると抜け漏れを防げます。
| ステップ | やること | 主に確認する情報 |
| 1 | 使用条件を整理する | 荷重、温度、湿度、薬品、屋外かどうか、寿命 |
| 2 | 求める特性に優先順位をつける | 強度、耐熱、透明性、摺動性、難燃性、コスト |
| 3 | 候補を絞り込む | 一覧表、メーカーのデータシート、社内実績 |
| 4 | 試作・評価で確かめる | 実際の形状・環境での強度、寸法、外観 |
| 5 | 量産性とコスト、法規制を確認する | 成形性、材料費、供給の安定性、規制対応 |
ステップ1 使用条件を整理する
最初にやるべきことは、樹脂の名前を調べることではなく、部品が置かれる環境を書き出すことです。
- 荷重:どれくらいの力が、どれくらいの時間かかり続けるか
- 温度:使用中の最高温度と最低温度、周囲に熱源があるか
- 湿度・水:水がかかるか、湿気の多い環境か
- 薬品:油、洗剤、溶剤、アルコールなどに触れるか
- 屋外:日光(紫外線)や雨にさらされるか
- 寿命:何年使えればよいか
樹脂のトラブルの多くは、この使用条件の見落としから起こるとされます。 とくに「清掃時に使う洗剤やアルコール」は見落とされやすいので、使われ方まで確認しましょう。
ステップ2 求める特性に優先順位をつける
すべての特性で優れた樹脂はありません。そのため、「絶対に必要な特性」と「あればうれしい特性」を分けて整理します。
たとえば、歯車なら耐摩耗性と寸法安定性が最優先、保護カバーなら透明性と衝撃強さが最優先、といった具合です。優先順位がはっきりすると、候補を一気に絞り込めます。
ステップ3 候補を絞り込む
整理した条件と優先順位を、前の章の一覧表に当てはめて候補を2〜3つに絞ります。そのうえで、樹脂メーカーのデータシートで具体的な特性値を比較します。
社内で同じような部品に使った実績がある材料は、成形条件や不具合の情報もそろっているため、有力な候補になります。
ステップ4 試作・評価で確かめる
データシートの値は、決められた形の試験片を決められた条件で測ったものです。実際の部品は、形状や成形のされ方、使用環境によって性能が変わるため、必ず試作して評価します。
- 実際の荷重・温度で、変形や割れが起きないか
- 湿気や薬品にさらしたあと、寸法や強度が変わらないか
- 成形品にひけ(へこみ)やそりが出ないか
ステップ5 量産性とコスト、法規制を確認する
最後に、量産できるかとコストが合うかを確認します。成形のしやすさ、材料費、供給の安定性は、量産後のトラブルや原価に直結します。
あわせて、有害物質の使用を制限する欧州の規制など、製品が出荷される国や地域の規制に対応した材料かどうかも確認が必要です。規制の内容は変わることがあるため、品質保証部門や材料メーカーに最新情報を確認してください。
樹脂材料の選定は、実際の案件で何度か経験すると一気に身につきます。設計職を目指す方に向けて、未経験からの転職事例やはじめの一歩の進め方をLINEでお届けしています。友だち追加だけで、気軽に情報を受け取れます。
選定で必ず確認したい6つの特性
データシートを見るときに、とくに注意したい特性を6つにまとめました。
1. 耐熱性
樹脂は温度が上がると柔らかくなり、強さが落ちます。データシートには、荷重をかけた状態で変形し始める温度(荷重たわみ温度)や、長期間使い続けられる温度の目安などが載っています。どちらの値を見ているのかを区別して読むことが大切です。
2. 強度とクリープ
樹脂は、一定の荷重をかけ続けると、時間とともに少しずつ変形が進む「クリープ」が起きやすい材料です。ねじで締め付けた部分や、ばねのように力を受け続ける部分では、短時間の強さだけでなく長期の変形も考える必要があります。
3. 吸水と寸法安定性
ポリアミド(ナイロン)のように水を吸いやすい樹脂は、吸水によって寸法が大きくなったり、強さや硬さが変わったりします。はめあいや精度が重要な部品では、吸水の少ない樹脂を選ぶか、寸法変化を見込んだ設計が必要です。
4. 耐薬品性
樹脂は、薬品に触れた状態で力がかかると割れが起きる「ソルベントクラック」(薬品による割れ)を起こすことがあります。油や洗剤、アルコールなど、使用中や清掃時に触れる薬品をすべて洗い出して確認しましょう。
5. 難燃性
電気製品の部品などでは、燃えにくさが求められます。難燃性には国際的な評価規格があり、製品の種類によって必要な等級が決まっていることがあります。
6. 摺動性・耐摩耗性
歯車や軸受、スライド部品では、こすれ合っても摩耗しにくいことが重要です。ポリアセタールやポリアミド、ふっ素樹脂などは摺動部品によく使われます。相手材が金属か樹脂かによっても摩耗の仕方が変わるため、組み合わせで評価します。
樹脂材料選定でよくある失敗と注意点
手順を知っていても、実務では思わぬところでつまずきます。若手設計者に多い失敗をまとめました。
| よくある失敗 | 起こりうる不具合 | 対策 |
| データシートの値をそのまま使う | 実際の部品で強度が足りない | 形状・温度・時間の影響を見込み、試作で確認する |
| クリープを考えない | ねじの締付部が緩む、部品が変形する | 長期の荷重を考慮し、金属の補強部品を検討する |
| 吸水による寸法変化を見落とす | はめあいがきつくなる、精度が出ない | 吸水の少ない樹脂を選ぶか、寸法変化を見込む |
| 清掃用の薬品を確認しない | 使用中に割れが発生する | 触れる可能性のある薬品をすべて洗い出す |
| 金属の形状をそのまま樹脂にする | ひけ・そり、強度不足 | 肉厚を均一にし、リブなど樹脂向けの形状にする |
| 量産時の供給・規制を確認しない | 材料の入手難、出荷先の規制に不適合 | 購買・品質保証部門と早めに確認する |
樹脂の選定は「材料を選ぶ」だけでなく、「樹脂に合った形を設計する」こととセットで考える必要があります。 迷ったら、樹脂メーカーや成形メーカーの技術窓口に相談するのも有効です。
私たちが機械設計の方と面談していると、「金属部品の設計経験はあるが、樹脂部品になると成形の知識が足りず、そりやひけで手戻りが多かった」という声をよく聞きます。樹脂部品の設計経験は、家電や自動車、医療機器など幅広い業界で評価されやすく、経歴の強みとして伝えやすいスキルの一つです。
樹脂部品の設計経験を、次のキャリアで活かしませんか
経験豊富なアドバイザーが、これまでの設計経験を丁寧にヒアリングし、市場価値を客観的に評価します。
まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
樹脂材料の知識を伸ばす学び方
データシートと技術資料を読み込む
いちばん実践的な教材は、樹脂メーカーが公開しているデータシートと技術資料です。特性値だけでなく、成形条件、設計上の注意点、薬品ごとの耐性の一覧などがまとまっています。
まずは社内でよく使う樹脂を2〜3種類選び、データシートを比べて読むところから始めましょう。同じ項目を見比べることで、樹脂ごとの得意・不得意が自然と頭に入ります。
成形の現場と話す
樹脂部品は、成形の仕方によって品質が大きく変わります。成形担当者や金型設計者に「この形はそりやすいか」「ゲート(樹脂の流れ込み口)の位置はどこがよいか」と聞いてみると、図面だけでは分からない知識が得られます。
伸び悩んだら「自分」か「環境」かを切り分ける
樹脂の勉強をしているのに成長を実感できないとき、原因は2つに分かれます。ひとつは、材料や成形の基礎があいまいなまま進めている「自分の側」の原因です。もうひとつは、材料の指定や評価を先輩任せにされ、作図だけを担当している「環境の側」の原因です。
前者なら学び方を見直せば解決できます。一方で、後者のように「材料選定や評価に関わる機会がない環境」にいる場合は、努力だけでは伸びにくいのが実情です。 担当範囲を広げられる職場へ移ることで、一気に経験が積めるケースもあります。
樹脂材料の知識が活きる仕事と年収
樹脂の知識が求められる職種
樹脂材料の知識は、次のような職種で活かせます。
- 家電・精密機器・自動車部品などの機構設計
- 医療機器や半導体製造装置の部品設計
- 金型設計・成形技術
- 生産技術・品質保証(不具合の原因分析や材料変更の評価)
- 材料メーカーの技術営業・用途開発
求人動向と年収
機電系エンジニアは、ものづくりの現場で幅広く必要とされています。参考として、全職業の有効求人倍率は1.12倍です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
機構設計や成形技術のエンジニアの年収は、担当する製品分野や経験、材料選定や構想段階から関われるかどうかで大きく変わります。
私たちのもとには、「金属中心の設計から、樹脂部品も扱える機構設計に広げたい」「作図だけでなく材料選定から関わりたい」というご相談が多く寄せられます。私たちは機電系に特化し、労働条件・労働環境を独自に審査した求人のみをご紹介しています。
「今の環境で設計の幅を広げられるか」を一緒に整理しませんか
機電系に特化したアドバイザーが、あなたの経験と希望に合う選択肢を一緒に考えます。
転職を決めていない段階でも、今の悩みの相談だけでもかまいません。
まとめ
- 樹脂材料は軽く形の自由度が高い一方、温度・時間・湿気の影響を受けやすい
- 汎用プラスチック・エンプラ・スーパーエンプラの順に性能と価格が上がるため、必要十分な層から選ぶ
- 選定は「使用条件の整理→特性の優先順位づけ→候補の絞り込み→試作・評価→量産性とコスト・規制の確認」の5ステップで進める
- 耐熱性、クリープ、吸水、耐薬品性、難燃性、摺動性の6つは必ず確認する
- 材料選定に関わる機会がない環境にいるなら、担当範囲を広げられる職場を検討するのも一つの選択肢
よくある質問
樹脂材料の選定で最初に確認すべきことは何ですか?
最初に確認すべきなのは、荷重、温度、湿度、触れる薬品、屋外で使うかどうかといった使用条件です。樹脂は環境の影響を受けやすいため、条件の見落としがそのまま不具合につながります。清掃時に使う洗剤やアルコールなど、使われ方まで確認しましょう。
金属部品を樹脂に置き換えるときの注意点は何ですか?
金属と同じ形のまま樹脂に置き換えると、強度不足やひけ・そりが起きやすくなります。肉厚を均一にする、リブで補強するなど、樹脂に合った形に設計し直すことが大切です。あわせて、クリープや温度による強度の低下も考慮しましょう。
エンプラとスーパーエンプラはどう使い分けますか?
一般的な機構部品で、強度や耐摩耗性が必要な場合はエンプラから検討します。高温環境や強い薬品に触れる環境など、エンプラでは条件を満たせない場合にスーパーエンプラを選びます。スーパーエンプラは価格が高いため、必要性を確かめてから選ぶのが基本です。
データシートの値はそのまま設計に使ってよいですか?
データシートの値は、決められた試験片と条件で測った参考値です。実際の部品では、形状や成形条件、使用温度、荷重のかかる時間によって性能が変わります。設計では余裕を持たせたうえで、必ず試作品で強度や寸法を確認しましょう。
未経験から設計職に就いても、樹脂材料の選定はできるようになりますか?
できるようになります。多くの方は、先輩の設計や社内の使用実績を参考にしながら、データシートの読み方や評価方法を少しずつ覚えていきます。大切なのは、材料選定や試作評価に関われる環境を選ぶことです。職場選びの段階で担当範囲を確認しておきましょう。
樹脂材料の選定のような設計の基礎を、どんな職場ならもっと伸ばせるのか。設計職を目指す方に向けて、未経験からの転職事例やはじめの一歩の進め方をLINEでお届けしています。まずは情報を受け取るところから始めてみてください。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
