統計的品質管理(SQC)とは?基本の考え方・代表的な手法と進め方を解説

統計的品質管理(SQC)とは?基本の考え方・代表的な手法と進め方を解説

「統計的品質管理って何?」「管理図や工程能力指数という言葉は聞くけれど、何のために使うのか分からない」と検索したあなたは、品質管理の仕事を任されたり、QC検定の勉強を始めたりして、統計を使った品質管理の考え方を理解したいと考えているのではないでしょうか。統計と聞くと難しく感じますが、基本の考え方はシンプルです。

統計的品質管理とは、製品の品質に関するデータを集め、統計的な手法を使って「ばらつき」を把握し、工程を安定させて品質を管理・改善する方法です。 勘や経験だけに頼らず、データにもとづいて「工程が正常か異常か」「規格を満たす力があるか」を判断できる点に特徴があります。

この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、統計的品質管理の意味と必要性、ばらつきの基本の考え方、代表的な手法、管理図と工程能力指数の計算例、進め方、注意点、統計的品質管理に関わる仕事とキャリアまでを解説します。

統計的品質管理とは

統計的品質管理は、英語の頭文字をとって「SQC」とも呼ばれます。製造工程で得られる寸法や重さ、不良の数などのデータを分析し、品質の状態を客観的に判断するための方法です。

統計的品質管理の考え方は、1920年代にアメリカで管理図が考案されたことに始まり、戦後の日本の製造業でも広く取り入れられたとされます。

TQC・TQMとの違い

統計的品質管理とよく比べられる言葉に、TQCとTQMがあります。

言葉意味主な対象
統計的品質管理(SQC)統計的な手法を使って品質のばらつきを管理・改善する製造工程の品質
全社的品質管理(TQC)製造部門だけでなく、設計や営業なども含めて全社で品質管理に取り組む会社全体の品質活動
総合的品質管理(TQM)品質を経営の中心に置き、顧客満足を目指して組織全体で取り組む経営と組織の仕組み

統計的品質管理は、TQCやTQMの中で使われる「道具」の一つと考えると分かりやすいでしょう。会社全体の品質活動の土台に、データにもとづく統計的品質管理がある、という関係です。

なぜ統計的品質管理が必要なのか

統計的品質管理が必要とされる理由は、主に次の3つです。

  • 品質を客観的に判断できる:「最近不良が多い気がする」といった感覚ではなく、データで品質の状態を判断できます。
  • 異常を早く見つけられる:不良品ができる前に、工程の変化の兆しをとらえて手を打てます。
  • 改善の効果を確かめられる:対策の前後でデータを比べ、本当に良くなったかを確かめられます。

統計的品質管理の本当の目的は、不良品を見つけることではなく、不良品をつくらない安定した工程を維持することにあります。 検査で不良品を取り除くだけでは、つくってしまった不良品のむだはなくなりません。工程そのものを安定させることが、品質と費用の両方を良くする近道です。

統計的品質管理の基本の考え方

統計的品質管理を理解するうえで最も大切なのが、「ばらつき」の考え方です。

品質には必ずばらつきがある

同じ設備、同じ材料、同じ手順でつくっても、製品の寸法や重さは少しずつ異なります。このような品質の違いを「ばらつき」といいます。ばらつきを完全になくすことはできないため、統計的品質管理では「ばらつきの大きさ」と「ばらつきの原因」に注目します。

ばらつきの2つの原因

ばらつきの原因は、大きく2つに分けられます。

原因内容例対応
偶然原因工程を正しく管理していても避けられない、小さなばらつきの原因材料のわずかな差、室温のわずかな変化工程の仕組みそのものを改善しないと減らせない
異常原因普段とは違う何かが起きたことによる、大きなばらつきの原因刃物の摩耗、設備の故障、材料の取り違え原因を突き止めて取り除く

統計的品質管理では、偶然原因によるばらつきだけが起きている状態を「工程が安定している(管理状態にある)」と考えます。異常原因によるばらつきが起きたら、それを早く見つけて取り除くことが大切です。

平均とばらつきを数字で表す

データの特徴は、主に次の2つの数字で表します。

  • 平均:データの中心の値
  • 標準偏差:データが平均からどのくらい散らばっているかを表す値

製品の寸法などのデータは、平均を中心に左右対称の山の形(正規分布)に近い分布になることが多くあります。この性質を使って、工程の状態や規格を満たす力を判断します。

統計的品質管理の代表的な手法

統計的品質管理では、目的に応じてさまざまな手法を使い分けます。

手法何に使うか主な場面
QC7つ道具データを整理し、問題の全体像や原因をつかむ現状の把握、原因の分析
管理図工程が安定しているかを時系列で監視する日々の工程管理
工程能力指数工程が規格を満たす力を持っているかを数字で評価する工程の評価、量産前の確認
抜き取り検査ロットの一部を検査して、ロット全体の合否を判定する受入検査、出荷検査
実験計画法少ない実験の回数で、品質に影響する要因と最適な条件を見つける加工条件の最適化、開発
回帰分析・相関分析2つ以上のデータの関係を調べる要因と品質の関係の分析

QC7つ道具には、パレート図、特性要因図、ヒストグラム、散布図、管理図、チェックシート、グラフ(または層別)が含まれます。抜き取り検査については「抜き取り検査とは?」、言葉のデータを整理する手法については「新QC7つ道具とは?」の記事で詳しく解説しています。

管理図と工程能力指数【計算例】

統計的品質管理の中でも、製造現場でよく使われるのが管理図と工程能力指数です。

管理図とは

管理図とは、工程から定期的にデータを取り、時間の順に点を打って、工程が安定しているかどうかを判断するグラフです。中心線と、その上下にある「管理限界線」で構成されます。

  • 点が管理限界線の内側にあり、並び方に特徴がなければ、工程は安定していると判断します。
  • 点が管理限界線の外に出たり、同じ側に連続して並んだりした場合は、異常原因が起きている可能性があると判断し、原因を調べます。

代表的なものに、サンプルの平均値と範囲(最大値と最小値の差)を組み合わせて工程を監視する管理図があります。

工程能力指数とは

工程能力指数とは、工程のばらつきが、規格の幅に対してどれくらい小さいかを表す数字です。工程が規格を満たす製品を安定してつくる力を持っているかを評価できます。

工程能力指数(Cp)の基本の計算式は次のとおりです。

工程能力指数 = 規格の幅 ÷(6 × 標準偏差)

規格の中心と工程の平均がずれている場合は、ずれを考慮した工程能力指数(Cpk)も使います。

計算例

ある部品の長さについて、工程能力指数を計算してみます。

※以下の数値はすべて説明のための例です。

項目数値の例
規格10.00mm ± 0.06mm(下限 9.94mm、上限 10.06mm)
規格の幅0.12mm
工程の標準偏差0.015mm

工程能力指数 = 0.12 ÷(6 × 0.015)= 0.12 ÷ 0.09 = 約1.33

工程能力指数の評価の目安は、一般的に次のように考えられています。

工程能力指数評価の目安
1.67以上工程能力は十分にある
1.33以上1.67未満工程能力はある
1.00以上1.33未満工程能力はやや不足しており、管理を強化する必要がある
1.00未満工程能力が不足しており、改善が必要

この例の工程は約1.33のため、「工程能力はある」と判断できます。ただし、求められる水準は顧客や業界によって異なるため、取り決めを確認することが大切です。

統計的品質管理の進め方

統計的品質管理は、一般的に次の流れで進めます。

手順主な内容使う手法の例
1. 目的と管理する特性を決める何の品質を、何のために管理するのかを決めるパレート図で重点を絞る
2. データを集める測定の方法と頻度を決め、正確なデータを集めるチェックシート
3. 現状を把握するデータの分布や、規格を満たす力を確認するヒストグラム、工程能力指数
4. 工程を監視する工程が安定しているかを継続して確認する管理図
5. 原因を分析し、改善する異常やばらつきの原因を調べ、対策を打つ特性要因図、散布図、実験計画法
6. 標準化する効果のあった対策を、作業標準書などに反映する―

ポイントは、データを集めて終わりにせず、分析の結果を工程の改善と標準化につなげることです。改善後も管理図などで監視を続けることで、良い状態を維持できます。

統計的品質管理で注意したいポイント

統計的品質管理を正しく運用するために、次の点に注意しましょう。

よくある失敗起こりやすい問題対策
測定のデータが正確でない分析の結果そのものが信頼できなくなる測定器の校正と、測定方法の統一を行う
異なる条件のデータを混ぜて分析する原因が見えにくくなる設備や作業者、材料ごとにデータを分けて(層別して)分析する
管理限界と規格を混同する工程の異常を見逃したり、過剰に反応したりする管理限界は工程の状態、規格は製品の合否の基準として区別する
グラフを作って満足する改善につながらない分析の結果から、具体的な対策と担当者を決める
分析ソフトの結果をうのみにする前提条件を満たさない分析で、誤った判断をする手法の前提と意味を理解したうえで使う

特に注意したいのが、管理限界と規格の違いです。管理限界は「工程がいつもどおりかどうか」を判断するための線で、工程のデータから計算します。一方、規格は「製品として合格かどうか」を判断するための基準で、顧客や設計の要求から決まります。

エージェント視点で言うと、品質管理や品質保証の選考では、「管理図や工程能力指数を使って、何を判断し、どう改善したか」を具体的に話せる方が評価されやすい傾向にあります。手法の名前を知っているだけでなく、管理限界と規格の違いのような基本を正しく理解していることが、データにもとづいて判断できる人材として伝わるポイントです。

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統計的品質管理に関わる仕事

統計的品質管理は、製造業のさまざまな職種で使われています。

職種統計的品質管理との関わり
品質管理管理図や工程能力指数で工程を監視し、不良の原因を分析する
品質保証工程能力のデータをもとに、顧客に品質を説明し、保証する
製造技術データを使って加工条件を見直し、工程を改善する
生産技術新しい工程や設備の導入時に、工程能力を評価する
開発・設計実験計画法などを使って、製品や材料の最適な条件を見つける

統計的品質管理の知識は、品質部門だけでなく、技術部門の幅広い職種で役立ちます。

年収とキャリア

統計的品質管理に関わる職種の年収は、職種、業界、企業の規模、経験年数などによって大きく変わります。品質管理の職種に限った公的な統計は限られているため、信頼できる統計を確認したうえで掲載します。

指標金額・数値(目安)
有効求人倍率(職業計)1.12倍

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)

※有効求人倍率1.12倍は全職業の数値で、統計的品質管理に関わる職種に限った数値ではありません。

一般的には、データを集めて報告するだけでなく、分析の結果から改善を企画し、成果を出した経験があると、評価や待遇に反映されやすい傾向にあります。

「統計を学んでも活かせない」原因を切り分ける

ご相談の場では、「QC検定で統計を学んだのに、職場では検査とデータ入力だけで、分析する機会がない」という声をよく聞きます。この悩みは、本人の力不足ではなく、データを分析して改善につなげる仕組みや時間がない職場の環境に原因があることが少なくありません。原因が職場にあるなら、データにもとづく品質管理に力を入れている企業へ移ることで、学んだ知識を実務の成果につなげやすくなる可能性があります。

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必要なスキル・役立つ資格

統計的品質管理を実務で活かすには、次のような知識とスキルが役立ちます。

  • 統計の基礎:平均、標準偏差、正規分布、相関などの基本的な考え方
  • 品質管理の手法の知識:QC7つ道具、管理図、工程能力指数、実験計画法の使い方
  • 工程の知識:データの背景にある、設備や作業、材料の理解
  • 表計算ソフトや分析ツールの操作:データを集計し、グラフや計算を行う力
  • 説明する力:分析の結果を、現場や上司、顧客に分かりやすく伝える力

役立つ資格には、次のようなものがあります。

資格実施・主催ポイント
品質管理検定(QC検定)日本規格協会統計的品質管理の手法を含む品質管理の知識を体系的に学べる
統計検定日本統計学会統計の基礎から応用までを段階的に学べる
品質マネジメントシステムの内部監査員各研修機関品質の仕組み全体を点検する力を示せる

経験を数値で伝える

統計的品質管理に関わった経験は、数値で示すと説得力が増します。

項目改善前の書き方改善後の書き方
工程の改善工程能力を改善した加工条件を見直し、主要寸法の工程能力指数を1.0から1.5に向上
異常の早期発見管理図で工程を管理した主要工程5か所に管理図を導入し、異常の発見から対策までの時間を半分に短縮
条件の最適化実験で条件を決めた実験計画法で加工条件を最適化し、試作の回数を10回から4回に削減

※数値は記入例です。ご自身の実績に置き換えてお使いください。

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まとめ

  • 統計的品質管理(SQC)とは、データと統計的な手法を使って品質のばらつきを把握し、工程を安定させて品質を管理・改善する方法です。
  • ばらつきには、避けられない偶然原因と、取り除くべき異常原因があり、異常原因を早く見つけることが大切です。
  • 代表的な手法には、QC7つ道具、管理図、工程能力指数、抜き取り検査、実験計画法などがあります。
  • 管理限界は工程の状態を判断する線、規格は製品の合否の基準であり、両者を区別して使うことが重要です。
  • 学んだ統計を活かせないと感じたときは、自分の力の問題か、分析の機会がない職場の環境の問題かを切り分けましょう。

よくある質問

統計的品質管理は難しいですか?

基本の考え方は難しくありません。平均とばらつきの意味、偶然原因と異常原因の違いを理解すれば、管理図や工程能力指数の考え方もつかみやすくなります。まずは身近な工程のデータで、ヒストグラムや管理図を作ってみることから始めましょう。

統計的品質管理とTQMの違いは何ですか?

統計的品質管理は、統計的な手法を使って製造工程の品質を管理する方法です。TQMは、品質を経営の中心に置き、組織全体で顧客満足を目指す取り組みです。統計的品質管理は、TQMを支える道具の一つと考えると分かりやすいでしょう。

工程能力指数はどのくらいあればよいですか?

一般的には1.33以上が一つの目安とされますが、求められる水準は顧客や業界によって異なります。重要な特性では、より高い値が求められることもあります。顧客との取り決めや社内の基準を確認しましょう。

管理図の管理限界線と規格はどう違いますか?

管理限界線は、工程のデータから計算した線で、工程がいつもどおりかどうかを判断するために使います。規格は、顧客や設計の要求から決まる、製品として合格かどうかの基準です。管理限界内でも規格外になることや、その逆もあるため、区別して使うことが大切です。

統計的品質管理を学ぶにはどの資格がおすすめですか?

品質管理の手法を体系的に学ぶにはQC検定、統計の考え方をより深く学ぶには統計検定がおすすめです。まずはQC検定で品質管理全体の中での統計の使い方を学び、必要に応じて統計検定で理解を深めるとよいでしょう。

統計的品質管理の経験は転職で評価されますか?

評価されやすい経験です。特に、管理図や工程能力指数を使って工程を改善し、成果を数字で示せる経験は、品質管理や品質保証、製造技術への転職で強みになります。どの手法を使い、何をどれだけ改善したかを整理しておきましょう。

統計的品質管理について知ったうえで、品質の仕事やキャリアについてもう少し調べてみたい方もいらっしゃると思います。製造業の職種研究や、品質の分野で環境を変えた方の事例をLINEで配信していますので、気軽に受け取ってみてください。

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この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部

主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。

この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大

立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。