「光学設計とはどんな仕事なのか」「物理や光学を専攻していないと目指せないのか」と気になって検索した方も多いのではないでしょうか。カメラや車載センサーの需要が広がるなかで、機構設計や評価職から光学設計に関心を持つ方も増えています。
光学設計とは、レンズや鏡などの光学部品を組み合わせ、狙った見え方や光の届き方を実現する設計です。 製品の画質や検出性能を左右する工程であり、物理の知識と製造を見据えた判断力の両方が求められる専門職です。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、光学設計の基礎から仕事内容、必要なスキル・資格、年収の考え方、光学設計エンジニアになる方法までを解説します。
光学設計とは
光学設計とは、光の進み方をコントロールし、製品に求められる性能を満たすレンズ構成や光の経路を決める仕事です。カメラのレンズであれば、像をくっきり、ゆがみなく結ぶことが目標になります。
設計の中心となるのが、収差(レンズを通った光が1点に集まらず、像がぼけたり色がにじんだりする現象)の補正です。光学設計者は、レンズの枚数・形状・材料・間隔を組み合わせて、収差を許容範囲に抑えます。
あわせて、製品のサイズやコスト、製造のしやすさとの両立も考えます。性能だけを追い求めるとレンズが大きく高価になるため、仕様の範囲で最適な落としどころを探るのが光学設計の難しさです。
機構設計・光学評価との違い
光学設計は、光学部品を支える機構設計や、完成品の性能を確かめる光学評価と密接に関わります。それぞれの違いは次のとおりです。
| 職種 | 主な役割 | 光学設計との関わり |
| 光学設計 | レンズ構成や光の経路を決める | 性能の目標と許容できる誤差を定める |
| 機構設計 | レンズを保持する鏡筒や筐体を設計する | 光学設計が求める位置精度を形にする |
| 光学評価 | 試作品の解像力や明るさを測定する | 設計どおりの性能が出ているかを確かめる |
| 光学薄膜設計 | 反射を抑える膜などを設計する | レンズ表面の性能を補い、全体の性能を高める |
企業によっては、光学設計者が評価や鏡筒の検討まで兼ねる場合もあります。担当範囲は求人ごとに大きく異なるため、応募前に確認しておくことが大切です。
光学設計の仕事内容【工程別】
光学設計の仕事は、「仕様策定→光学設計→公差解析→機構設計との連携→試作評価→量産立ち上げ」の流れで進みます。 机上の設計だけでなく、製造現場まで見届けるのが特徴です。
| 工程 | 主な役割 | 主に関わる相手 |
| 仕様策定 | 画角・明るさ・サイズなどの目標を決める | 企画、システム設計 |
| 光学設計 | 光学設計ソフトでレンズ構成を最適化する | 光学チーム内 |
| 公差解析 | 製造のばらつきが性能に与える影響を見積もる | 生産技術 |
| 機構設計との連携 | 鏡筒の構造や部品の位置精度を調整する | 機構設計 |
| 試作評価 | 試作品の性能を測り設計と比べる | 光学評価 |
| 量産立ち上げ | 組立・調整の方法を決め不具合に対応する | 製造、品質保証 |
仕様策定
最初に、製品に求められる画角(写せる範囲)や明るさ、全長、重さなどの目標を整理します。ここでの仕様の決め方が、後の設計の難しさを大きく左右します。
光学設計
専用の光学設計ソフトを使い、光の通り道を計算しながらレンズの形状や材料を最適化します。ソフトが計算を助けてくれる一方で、どの構成から出発するかという判断には設計者の経験が表れます。
公差解析
公差(製造で許される寸法や位置のずれの範囲)を設定し、部品がばらついたときに性能がどこまで落ちるかを見積もります。高性能でも量産できない設計では意味がないため、非常に重要な工程です。
機構設計との連携
レンズを支える鏡筒の構造や、部品の取り付け精度を機構設計者と調整します。温度変化によるレンズのずれなど、光と機構の両面から検討が必要になる場面も多くあります。
試作評価
試作品の解像力やゆがみ、明るさのむらなどを測定し、設計値との差を分析します。差が大きい場合は、原因が設計にあるのか、加工や組立にあるのかを切り分けて対策します。
量産立ち上げ
量産時の組立や調整の手順を決め、工場で安定した性能が出るように支援します。量産後に性能のばらつきが見つかった場合の原因調査も担当します。
光学設計の種類
光学設計は、大きく「結像光学」と「照明光学」の2つに分かれます。さらに、対象となる製品によって求められる知識が変わります。
結像光学の設計
カメラや顕微鏡のように、物体の像をセンサーや目に結ぶための設計です。収差の補正が中心となり、光学設計と聞いて多くの方がイメージする分野です。
照明光学の設計
自動車のヘッドランプやプロジェクター、液晶の背面光源などのように、光を狙った範囲にむらなく届けるための設計です。像を結ぶ必要はなく、光の配り方や効率が重視されます。
製品分野ごとの特徴
・カメラ・交換レンズ:高い画質と小型化の両立が求められる
・スマートフォンのカメラ:極めて薄い空間に多くのレンズを収める
・車載カメラ・センサー:運転支援や自動運転向けで、温度や振動への耐性が重要
・半導体製造装置:微細な回路を焼き付けるため、非常に高い精度が求められる
・医療機器:内視鏡など、小さな径で鮮明な像を得る設計が中心
・光通信:光ファイバーへ効率よく光を入れる部品などを設計する
光学設計エンジニアの1日の流れ(例)
光学設計エンジニアの1日は、ソフトでの設計作業と、関係部署との調整や評価を組み合わせて進むのが一般的です。メーカーで車載カメラの開発に携わる場合の一例を紹介します。
・9:00 メール確認と、前日に計算させた最適化結果のチェック
・10:00 機構設計と、鏡筒の寸法や部品の取り付け精度について打ち合わせ
・11:00 レンズ構成を見直し、収差の補正を進める
・13:00 公差解析を行い、量産時に性能が出るかを確認
・15:00 評価室で試作品の解像力を測定
・17:00 設計値と測定結果の差を分析し、報告資料を作成
開発の初期は設計作業が中心になり、試作から量産にかけては評価や工場での対応が増える傾向があります。働き方は企業や担当製品によって異なります。
光学設計に必要なスキル・知識
光学設計で特に重視されるのは、光学の理論と、製造まで見据えた現実的な判断力の両方です。 ソフトの操作だけでなく、「なぜこの構成を選んだのか」を説明できることが求められます。
・幾何光学・波動光学など、光学の基礎理論
・収差の種類と、その補正方法に関する知識
・光学設計ソフトを使った最適化と、評価結果の読み取り
・レンズ材料の特性や、加工方法に関する知識
・公差の考え方と、量産を見据えた設計判断
・機構設計・評価・製造との調整力
・英語の技術文書や論文を読む力
相談の現場では、「大学で光学を専攻していないので、光学設計は無理だと思っていた」という声をよく聞きます。たしかに物理や光学の素養がある方が有利な傾向はありますが、機構設計や評価の経験から光学の知識を積み上げてきた方もいます。選考では、学んできた内容を実務でどう使ったかを具体的に語れるかが評価されやすい傾向があります。
スキルが伸び悩んでいると感じるときは、原因が自分の努力不足なのか、設計に関わる機会が少ない環境なのかを切り分けてみてください。 評価や調整の業務だけで設計に触れる機会がない場合は、環境を見直すことで伸びるケースも少なくありません。
光学の経験をどこで活かせるか、一緒に整理してみませんか
経験豊富なアドバイザーが、これまでのキャリアを丁寧にヒアリングします。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
光学設計に役立つ資格
光学設計の仕事に、必須の資格はありません。光学に特化した国家資格も限られているため、資格よりも学んできた分野や実務経験が重視される傾向があります。
そのうえで、知識を客観的に示す手段として、次の資格が役立つ場面があります。
・技術士(応用理学部門):物理などを含む部門で、上級の技術者としての実力を示せる国家資格
・機械設計技術者試験:日本機械設計工業会が実施し、鏡筒など機構面の基礎知識を証明できる
・3次元CAD利用技術者試験:コンピュータ教育振興協会が実施し、立体の設計図を扱うスキルを示せる
未経験の方や若手の方は、資格に加えて、光学の教科書や専門書で学んだ内容を整理しておくと、面接で意欲を伝えやすくなります。
光学設計エンジニアの年収
光学設計エンジニアの年収は、担当する製品分野と、仕様策定から量産まで一貫して担えるかによって差が出やすい職種です。 光学設計に特化した公的な年収統計は限られているため、関連する職種も含めて確認することをおすすめします。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
私たちが扱う求人を見ても、光学設計は経験者を対象とした募集が中心です。特に、車載センサーや半導体製造装置の分野では、公差解析や量産立ち上げまで経験した方に、条件が高めに提示される傾向があります。
光学設計に限らず、機電系の職種研究や資格選びに役立つ情報をLINEでも配信しています。気になったときに読める形なので、情報収集の段階でもお気軽にどうぞ。
光学設計のやりがいと大変さ
光学設計は、自分の設計が製品の「見え方」として形になる、達成感の大きい仕事です。一方で、理論と製造の現実との間で悩む場面も少なくありません。
やりがい
・設計したレンズで撮った画像や映像を、自分の目で確かめられる
・カメラや車載センサーなど、社会に広く使われる製品に貢献できる
・物理の理論が、そのまま製品の性能に結びつく面白さがある
・専門性が高く、経験を積むほど替えのきかない技術者になりやすい
大変さ
・性能・サイズ・コストの制約が厳しく、両立に苦労する
・設計どおりの性能が出ないとき、原因の特定に時間がかかる
・量産の立ち上げ時期は、工場での対応が続くことがある
・学ぶべき理論の範囲が広く、継続的な勉強が欠かせない
悩みの原因は職種か、環境か
「ソフトで計算するだけで、仕様の決定に関われない」「量産の調整ばかりで設計の経験が積めない」という悩みは、職種ではなく担当範囲や組織の体制に原因があることも少なくありません。環境が理由であれば、上流から設計に関われる企業を選ぶ。光学の仕事そのものが合わないと感じるなら、機構設計や評価など隣接する領域へ移る。 この切り分けが、後悔しない選択につながります。
光学設計エンジニアになるには
光学設計エンジニアを目指すルートは、主に次の4つです。
- 物理・光学・精密工学などの学部や大学院から、メーカーに新卒で入社する
- 機構設計(鏡筒設計など)の経験を活かし、社内異動や転職で光学設計に移る
- 光学評価や光学部品の生産技術で経験を積み、設計に挑戦する
- 未経験の場合は、光学機器メーカーの評価職や機構設計職から入る
光学設計の専任職は、専門知識を前提とした募集が多い傾向にあります。そのため、未経験から直接目指すよりも、光学に関わる周辺の職種で経験を積んでから挑戦するルートが現実的です。
転職を考える方は、職務経歴書で成果を数値で示すことが大切です。次のように書き換えるだけで、伝わり方が大きく変わります。
・改善前:車載カメラのレンズ設計を担当
・改善後:車載カメラ用レンズ(○枚構成)の光学設計を担当。公差解析をもとに感度の高い部品を特定し、組立時の調整工程を○工程から○工程に削減した。量産時の性能不良率も○%改善した。
○の部分には、ご自身の実績の数値を入れてください。レンズの枚数、担当した製品の数、開発期間の短縮など、規模や成果がわかる数字を加えると説得力が増します。
光学設計へのキャリアチェンジを考え始めたら
市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。今の悩みの相談だけでもかまいません。
まとめ
・光学設計とは、レンズや鏡を組み合わせて狙った見え方や光の届き方を実現する設計
・仕事は「仕様策定→光学設計→公差解析→機構との連携→試作評価→量産立ち上げ」の流れで進む
・結像光学と照明光学に大きく分かれ、カメラ・車載・半導体・医療など活躍の場は幅広い
・年収は製品分野と担当範囲で差が出やすく、量産まで経験した人材は評価されやすい傾向
・悩みの原因が職種か担当範囲・環境かを切り分けると、次のキャリアを選びやすくなる
よくある質問
光学設計は未経験でもなれますか?
専任の光学設計職に未経験から直接就くのは難しい傾向があります。ただし、光学機器メーカーの評価職や機構設計職から入り、段階的に設計へ関わる道はあります。理系の学生や第二新卒であれば、基礎知識と学ぶ意欲を示すことで挑戦できる可能性があります。
物理や光学を専攻していないと難しいですか?
物理や光学の専攻者が有利な傾向はありますが、必須ではありません。機械系や電気系の出身でも、実務を通じて光学の知識を身につけた方はいます。専門書で学んだ内容や、関連業務での経験を具体的に説明できるよう準備しておくことが大切です。
光学設計と光学評価の違いは何ですか?
光学設計は、レンズ構成や光の経路を決めて性能の目標を作る仕事です。光学評価は、試作品や量産品の性能を測定し、設計どおりになっているかを確かめる仕事です。評価の経験は、設計に移る際の土台として活かしやすいです。
光学設計の将来性はありますか?
車載センサーや医療機器、半導体製造装置など、光学技術が使われる分野は広がっています。光学と機構・製造の両方を理解できる人材は、さまざまな分野で活躍の場を見つけやすいと考えられます。
光学設計の仕事はAIでなくなりますか?
設計ソフトによる最適化や自動化は進むと考えられます。ただし、仕様の落としどころを決めたり、製造のしやすさやコストと両立させたりする判断は、人の役割として残りやすい領域です。新しい道具を使いこなせる設計者の価値は、むしろ高まると考えられます。
機械設計の経験は光学設計に活かせますか?
活かせます。特に鏡筒などの機構設計の経験は、公差の考え方や部品の位置精度への理解として、光学設計でも強みになります。光学の理論を補うことで、光と機構の両方がわかる設計者として評価されやすくなります。
光学設計の仕事をもっと知りたい方に向けて、機電系の職種研究に役立つ情報をLINEで配信しています。まずは情報を受け取るところから始めてみてください。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
