カーボンニュートラルとは?製造業の取り組みと求められる職種を解説

カーボンニュートラルとは?製造業の取り組みと求められる職種を解説

「カーボンニュートラルで、製造業の仕事はどう変わるのか」「脱炭素に関わる仕事に、自分の経験を活かせるのだろうか」と気になって検索した方も多いのではないでしょうか。

製造業のカーボンニュートラルとは、工場や製品から出る温室効果ガスを減らし、吸収や除去する量と差し引きで実質ゼロにすることを目指す取り組みです。省エネ設備の導入や電化、製品の設計の見直しなど、取り組みの中心を担うのは現場のエンジニアです。生産技術や設備、設計の経験は、この分野で活かしやすい強みになります。

この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、製造業のカーボンニュートラルの基本と取り組み、関わる職種や必要なスキル、キャリアへの活かし方を解説します。

製造業のカーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量や技術による除去量を差し引いて、合計を実質ゼロにすることです。日本政府も、2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標を掲げています。

製造業は、工場で多くのエネルギーを使い、製品の材料や輸送でも温室効果ガスが出るため、取り組みの影響が大きい業界です。ただし、排出をすぐにゼロにすることは難しいため、多くの企業は段階的な削減の目標を立てて取り組んでいます。

脱炭素・省エネとの違い

似た言葉との違いを整理しておきましょう。「脱炭素」は、二酸化炭素などの排出を減らしていく取り組み全体を指す言葉として使われます。「省エネ」は、使うエネルギーの量を減らす取り組みで、脱炭素を進める手段の一つです。カーボンニュートラルは、それらの取り組みを積み重ねた先にある「実質ゼロ」という目標の状態を指します。

排出量の3つの範囲

製造業の排出量は、どこで出たものかによって、次の3つの範囲に分けて考えるのが一般的です。

範囲内容製造業での例
スコープ1自社で直接出す排出工場のボイラーや炉で燃料を燃やす
スコープ2購入した電気や熱の使用による排出工場の設備で使う電気
スコープ3取引先や製品の使用など、それ以外の排出部品や材料の製造、製品の輸送や使用、廃棄

スコープ3には取引先の排出も含まれるため、大手メーカーが部品を納める取引先に排出量の把握や削減を求める動きも出ています。中小規模の部品メーカーにとっても、カーボンニュートラルは身近な課題になりつつあります。

製造業でカーボンニュートラルが求められる理由

製造業でカーボンニュートラルが求められる理由は、主に次の4つです。

・国の目標に向けて、排出の多い産業として削減が期待されている
・取引先から、排出量の開示や削減を求められるケースが増えている
・海外の取引では、環境への配慮が取引の条件になる場合がある
・エネルギーの使用を減らすことが、コストの削減にもつながる

カーボンニュートラルは「環境のための負担」というだけでなく、取引を続け、コストを下げるための経営課題として扱われるようになっています。そのため、取り組みを担える技術者の役割も大きくなっています。

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製造業の主な取り組み【分野別】

製造業のカーボンニュートラルの取り組みは、工場の設備から製品の設計まで幅広くあります。代表的な取り組みを分野ごとに整理します。

分野主な取り組み関わりやすい職種
省エネ高効率な設備への更新、無駄な運転の削減設備保全、生産技術
電化・燃料の転換ガスや重油の設備を電気の設備に置き換える生産技術、設備設計
再生可能エネルギー工場の屋根への太陽光発電の設置など設備、工務
製品の設計軽量化、省電力化、材料の見直し機械設計、回路設計
工程の改善加工の条件や工程を見直し、使うエネルギーを減らす生産技術、プロセス開発
排出量の見える化設備ごとのエネルギー使用量を測って管理する設備、生産管理

省エネと設備の更新

古い空調やコンプレッサー(圧縮空気を作る装置)、照明などを高効率な設備に更新する取り組みです。設備の運転の時間や設定を見直すだけで、使うエネルギーを減らせることもあります。

電化と燃料の転換

加熱や乾燥の工程で使っているガスや重油の設備を、電気の設備に置き換える取り組みです。使う電気を再生可能エネルギーにすれば、さらに排出を減らせます。熱の扱いと電気の両方の知識が必要になる分野です。

製品の設計による削減

製品を軽くしたり、使うときの電力を減らしたりすることで、製品の一生を通じた排出を減らす取り組みです。材料の選び方や部品の点数の見直しなど、設計者の判断が大きく影響します。

工程の改善と排出量の見える化

加工の温度や時間、工程の順番を見直して、使うエネルギーを減らす取り組みもあります。どの設備でどれだけのエネルギーを使っているかを測る「見える化」は、改善の出発点として多くの工場で取り組まれています。

カーボンニュートラルに関わる職種

製造業のカーボンニュートラルには、機電系の幅広い職種が関わります。特に関わりが深いのは次の職種です。

・生産技術:工程や設備の見直しで、使うエネルギーを減らす
・設備保全・工務:設備の更新や運転の改善、省エネ設備の導入を担う
・機械設計・回路設計:製品の軽量化や省電力化を進める
・プロセス開発:製造の条件を見直し、エネルギーの少ない工程を開発する
・環境・エネルギー管理の担当:排出量を集計し、削減の計画を立てる

求人の傾向として、私たちが見ている製造業の求人では、生産技術や設備の求人で「省エネや設備更新の経験」を歓迎条件に挙げるものが見られます。また、環境やエネルギー管理を専門に担う担当者を募集する企業もあります。カーボンニュートラルという名前の職種でなくても、関連する経験が評価される場面は増えています。

必要なスキル・知識

製造業のカーボンニュートラルに関わるには、機電系の基礎知識に加えて、エネルギーと排出量を扱う知識が求められます。

スキル領域具体的な内容活かしやすい職種
熱・流体の知識加熱、冷却、空調、圧縮空気の効率生産技術、設備
電気の知識電力の使用量、受変電設備、電動化設備保全、回路設計
設備の知識設備の選定、更新の計画、費用の試算設備保全、工務
排出量の計算エネルギーの使用量から排出量を求める方法環境・エネルギー管理
データの扱い使用量の集計、グラフ化、改善の効果の確認全職種
説明・調整の力費用と効果を整理し、社内に提案する全職種

費用と効果を説明する力

カーボンニュートラルの取り組みには、設備の更新などの費用がかかります。そのため、「いくらかけて、どれだけ排出とコストを減らせるか」を整理して説明する力が欠かせません。技術の知識と、費用の考え方を組み合わせられる人は、社内で頼られる存在になりやすいです。

役立つ資格

製造業のカーボンニュートラルに関わるのに、資格は必須ではありません。ただし、エネルギーや設備に関する資格は、知識を客観的に示す材料として役立ちます。

・エネルギー管理士:工場のエネルギーの使い方を管理するための国家資格
・電気主任技術者:受変電設備など、電気の設備の保安を担うための国家資格
・公害防止管理者:工場の排出ガスや排水などの管理に関わる国家資格

受験の条件や試験の区分は、各資格の公式サイトで確認してください。

選考では、資格よりも「どの設備で、どれだけエネルギーや費用を減らしたか」といった実務の成果が重視される傾向があります。資格は成果を補う材料として考えるのがおすすめです。

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やりがいと大変さ

カーボンニュートラルに関わる仕事のやりがいは、自分の取り組みが環境への貢献とコストの削減の両方につながることです。エネルギーの使用量や排出量が数字で減るため、成果が分かりやすい仕事でもあります。

一方で、大変さもあります。設備の更新には費用がかかるため、社内の了承を得るまでに時間がかかることがあります。また、効果がすぐに出ない取り組みも多く、長い目で進める根気が必要です。

相談の場では、「会社から脱炭素の担当を任されたが、本来の業務との兼務で手が回らない」という声を聞くことがあります。担当者が一人で抱え込み、取り組みが進まないまま負担だけが増えているケースも少なくありません。

悩みの原因は仕事の中身か、会社の体制か

ここで大切なのは、悩みの原因が「脱炭素に関わる仕事そのもの」にあるのか、「担当者に任せきりで体制が整っていない会社の環境」にあるのかを切り分けることです。仕事にやりがいを感じているのに体制が原因で進まない場合は、カーボンニュートラルに本腰を入れて取り組んでいる企業に移ることで、同じ経験を活かしやすくなることがあります。一方で、仕事の内容そのものが合わないと感じる場合は、本来の専門分野に軸足を置く選択肢もあります。

カーボンニュートラル分野へのキャリアの広げ方

カーボンニュートラルの分野に関わるために、今の仕事を大きく変える必要はありません。今の業務の中で取り組める範囲から始めて、経験を積み重ねることが近道です。

  1. 自分の職場のエネルギーの使い方を知る:どの設備がどれだけ電気や燃料を使っているかを確認する
  2. 身近な改善に取り組む:設備の運転の時間や設定など、費用のかからない改善から始める
  3. 効果を数字で記録する:改善の前後で、使用量や費用がどう変わったかを記録する
  4. 関連する知識を学ぶ:熱や電気、排出量の計算などの知識を補い、必要に応じて資格にも挑戦する
  5. 社内の取り組みに参加する:省エネや脱炭素の委員会や計画づくりに、自分から関わる

経験を見直すチェックリスト

自分の経験がカーボンニュートラルに関係するかを確認してみましょう。

□ 設備の更新や導入に関わったことがある
□ 電気や燃料の使用量を減らす改善をしたことがある
□ 製品の軽量化や省電力化に関わったことがある
□ 加工の条件や工程を見直して、効率を上げたことがある
□ 設備の使用量や費用のデータを集計したことがある

当てはまる項目がある場合、その経験はカーボンニュートラルに関わる仕事で活かせる可能性があります。

実績は数字で示す

取り組みの成果は、数字で伝えられると評価されやすくなります。たとえば、次のような書き方を意識しましょう。

・「コンプレッサー○台の運転を見直し、電力の使用量を年○%削減」
・「加熱工程を電気の設備に切り替え、燃料の費用を年○万円削減」
・「部品の材料を見直し、製品の重さを○%軽量化」

数字が手元にない場合でも、対象の設備の台数、工場の規模、関わった人数などを書くと、取り組みの大きさが伝わります。

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まとめ

・製造業のカーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出を減らし、実質ゼロを目指す取り組み
・取引先からの要請やコストの削減もあり、経営課題として扱われるようになっている
・省エネ、電化、製品の設計、工程の改善など、取り組みの中心を担うのは機電系のエンジニア
・資格よりも、エネルギーや費用をどれだけ減らしたかという実務の成果が評価されやすい
・悩みの原因が仕事の中身か、会社の体制かを切り分けて、キャリアの選択肢を考える

よくある質問

製造業のカーボンニュートラルとは何ですか?

工場や製品から出る温室効果ガスの排出量を減らし、吸収や除去する量と差し引いて実質ゼロにすることを目指す取り組みです。省エネ設備の導入、ガスや重油の設備の電化、製品の軽量化など、工場の設備から製品の設計まで幅広い取り組みが含まれます。

中小規模の製造業にも関係がありますか?

関係があります。大手メーカーが、部品や材料を納める取引先にも排出量の把握や削減を求める動きが出ているためです。取引を続けるうえで対応を求められる場面もあるため、規模にかかわらず身近な課題になりつつあります。

カーボンニュートラルに関わるにはどんなスキルが必要ですか?

熱や電気、設備の知識に加えて、エネルギーの使用量や排出量を集計し、改善の効果を確かめる力が求められます。費用と効果を整理して社内に提案する力も大切です。機電系の基礎知識がある方は、今の経験を土台に足りない知識を補っていくとよいでしょう。

未経験でもカーボンニュートラルの仕事に関われますか?

専門の担当者として未経験から入るのは簡単ではありませんが、今の仕事の中で関わることはできます。設備の運転の見直しや使用量の集計など、身近な改善から始めると経験を積みやすいです。機電系の経験がある方は、その知識を活かしやすい分野です。

カーボンニュートラル関連の経験は転職で評価されますか?

評価されることがあります。製造業の生産技術や設備の求人では、省エネや設備更新の経験を歓迎条件に挙げるものも見られます。評価されるのは取り組んだ内容と成果なので、エネルギーや費用をどれだけ減らしたかを数字で説明できるよう準備しておきましょう。

エネルギー管理士の資格は取るべきですか?

必須ではありませんが、工場のエネルギー管理に関わりたい方には役立つ資格です。エネルギーの使い方を体系的に学べ、知識を客観的に示す材料にもなります。ただし、選考では実務の成果が重視される傾向があるため、資格と実務の経験を組み合わせて伝えることが大切です。

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この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部

主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。

この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大

立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。