「LSI設計とはどんな仕事?」「回路設計やFPGA設計と何が違うの?」と気になって検索した方も多いのではないでしょうか。
LSI設計とは、スマートフォンや自動車、家電などの頭脳となる「LSI(大規模集積回路)」の回路を、仕様の検討から製造用データの作成まで設計する仕事のことです。 数億個にもなる素子を小さなチップの中に正しく配置するため、工程ごとに専門が分かれ、多くのエンジニアが分担して一つのチップを完成させます。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、LSI設計の仕事の流れや種類、1日の流れ、必要なスキル、資格、年収の考え方、なり方までを解説します。
LSI設計とは
LSI設計とは、多数のトランジスタなどの素子を一つの半導体チップに集めた「LSI」の回路を設計する仕事です。LSIは、スマートフォンの処理装置、車の制御装置、画像を処理する部品など、あらゆる電子機器の中核を担っています。求められる機能を、限られたチップの面積と消費電力の中で、正しく高速に動く回路として実現することが、LSI設計の本質的な目的です。
LSIは一度製造すると修正が難しく、製造には大きな費用がかかります。そのため、製造前の設計と検証の段階で、誤りを徹底的になくすことが重視されます。
基板の回路設計との違い
一般的な回路設計は、市販の部品を組み合わせて基板の上に回路をつくる仕事です。LSI設計は、その部品の一つであるチップの内部そのものを設計します。部品を「使う」側か、「つくる」側かという違いがあります。
FPGA設計との違い
FPGAは、購入後に中身の回路を書き換えられる集積回路です。FPGA設計は、その書き換え可能なチップに回路を書き込む仕事で、ハードウェア記述言語を使う点などLSI設計と共通点が多くあります。ただし、LSI設計はチップを新しく製造するため、物理的な配置や製造に関わる工程まで担う点が異なります。
半導体プロセスエンジニアとの違い
半導体プロセスエンジニアは、工場でチップを製造する工程の技術を担います。LSI設計は、その工場で作るための「設計図」を描く仕事です。設計と製造は、互いに連携しながら一つの製品を完成させます。
LSI設計の仕事内容【工程別】
LSI設計は、大きく分けて「上流の論理設計」と「下流の物理設計」の流れで進みます。どの工程でも「製造前に誤りをなくす」ことが共通の目的で、設計と検証を何度も繰り返します。
| 工程 | 主な作業 | 担う役割 |
| 仕様の策定 | チップに求める機能や性能を決める | 製品の要求を設計の目標に落とし込む |
| 論理設計 | 回路の動作を言語で記述する | ハードウェア記述言語で機能を実現する |
| 機能検証 | 設計どおりに動くかを確かめる | シミュレーションで誤りを見つける |
| 論理合成 | 記述した回路を素子の組み合わせに変換する | 性能や面積の目標を満たす回路にする |
| 物理設計 | 素子の配置と配線を決める | チップ上での実際の形をつくる |
| 物理・タイミング検証 | 配置後の動作や製造ルールを確かめる | 製造に出せる品質かを確認する |
| 評価 | 製造されたチップの動作を確かめる | 実物で性能と品質を確認する |
仕様の策定
チップに必要な機能、処理の速さ、消費電力、大きさなどの目標を決めます。製品全体を設計する部門や顧客と相談しながら、設計の前提を明確にします。
論理設計
回路の動作を、ハードウェア記述言語(回路の動きを文章のように記述する言語)で書いていきます。代表的な言語には、VerilogやVHDLなどがあります。
機能検証
書いた回路が仕様どおりに動くかを、シミュレーションで確かめます。大規模なLSIでは検証の量が膨大になるため、検証を専門とするエンジニアが担うことも多い工程です。
論理合成
記述した回路を、設計支援ツールを使って実際の素子の組み合わせに変換します。処理の速さやチップの面積、消費電力の目標を満たすよう調整します。
物理設計
素子をチップ上のどこに置き、どう配線するかを決めます。配線の長さや混み具合が性能に影響するため、細かな調整が求められます。
物理・タイミング検証
配置と配線を終えた回路が、目標の速さで正しく動くか、製造上のルールを守っているかを確認します。問題がなければ、製造用のデータを工場に渡します。
評価
製造されたチップを実際に動かし、設計どおりの性能が出ているかを確かめます。問題があれば原因を分析し、次の設計に活かします。
LSI設計の種類
LSI設計は工程や扱う回路によって専門が分かれており、エンジニアはそれぞれの領域を担当します。どの領域を担当するかで、必要なスキルやキャリアの方向性が変わります。
| 種類 | 主な担当 | 特徴 |
| デジタル論理設計 | ハードウェア記述言語による回路の設計 | 処理装置などの機能をつくる中心的な領域 |
| 機能検証 | 回路が正しく動くかの検証 | 検証の手法やプログラミングの力が活きる |
| 物理設計 | 素子の配置と配線、タイミングの調整 | 設計支援ツールの深い知識が求められる |
| アナログ設計 | 電源や信号の変換回路などの設計 | トランジスタ単位の設計で、経験が重視される |
| テスト設計 | 製造後の検査をしやすくする回路の設計 | 品質を支える専門性の高い領域 |
LSI設計に関わる企業には、自社でチップを設計・製造する半導体メーカー、設計に特化して製造を外部に任せる企業、電機・自動車関連のメーカー、設計を受託する企業などがあります。求人を見ていると、国内で半導体関連の動きが活発になるなか、LSI設計の経験者を求める募集も見られます。
LSI設計エンジニアの1日の流れ(例)
ここでは、半導体メーカーでデジタル論理設計を担当するエンジニアの一例を紹介します。
・9:00 業務開始、夜間に実行したシミュレーションの結果を確認
・9:30 チームの朝会で進捗と課題を共有
・10:00 新しい機能の回路の記述
・12:00 昼休憩
・13:00 検証担当者から報告された不具合の原因を調査
・14:30 回路の修正と、シミュレーションの再実行
・16:00 物理設計の担当者と、タイミングの課題について打ち合わせ
・17:00 設計資料の更新
・18:00 翌日のタスク整理、夜間のシミュレーションを設定して終業
設計と検証を繰り返しながら、チームで一つのチップを完成させていくのが、LSI設計の働き方の特徴です。 製造用データを工場に渡す前の時期は、検証の作業が集中しやすくなります。
LSI設計に必要なスキル・知識
LSI設計には、電子回路の理論に加えて、ハードウェア記述言語や設計支援ツールを使いこなす力が求められます。大規模な回路を、多くの人で分担しながら正しく作り上げるための、緻密さとチームでの連携力が重要です。
| 領域 | 主な知識・スキル |
| 基礎理論 | 論理回路、電子回路、半導体の基礎 |
| 設計 | ハードウェア記述言語(Verilog、VHDLなど) |
| 検証 | シミュレーション、検証の手法 |
| ツール | 設計支援ツール(論理合成、配置配線、検証など) |
| プログラミング | 作業の自動化に使うスクリプト言語 |
| 英語 | 英語で書かれた仕様書やツールの資料の読解 |
技術以外では、次のような力も求められます。
・小さな誤りも見逃さない緻密さと粘り強さ
・他の工程の担当者と課題をすり合わせる連携力
・不具合の原因を論理的に突き止める分析力
LSI設計に近い経験をどれだけ積んでいるかは、次の項目で確認できます。
・□ 論理回路や電子回路の基礎を学んだことがある
・□ ハードウェア記述言語で回路を書いたことがある
・□ FPGAを使った設計や開発に関わったことがある
・□ シミュレーションで回路の動作を検証したことがある
・□ 英語の技術資料を読んで、業務に活かしたことがある
当てはまる項目が多いほど、LSI設計に必要な経験を積み始めていると考えられます。
LSI設計に役立つ資格
LSI設計の仕事に就くのに、必須の資格はありません。 選考では、設計や検証の実務経験が最も重視されます。ただし、関連する知識を体系的に示す手段として、資格は役立ちます。
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験:組込システムのハードウェアとソフトウェアに関する高度な知識を問う国家試験です
・応用情報技術者試験:コンピュータの仕組みを含む応用的な知識を問う国家試験です
・半導体に関する民間の検定:半導体の基礎や製造の知識を体系的に学べます
・英語の資格:英語の仕様書を扱う力を示す材料になります
出典:IPA「情報処理技術者試験」
半導体関連の民間検定は、主催団体ごとに出題範囲や対象者が異なります。受験を検討する場合は、各団体の最新の情報を確認してください。
LSI設計エンジニアの年収
LSI設計エンジニアの年収を示す公的な統計は限られています。専門性の高い職種のため、経験によっては評価されやすいと考えられますが、具体的な水準は統計で確認したうえで判断することが大切です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
求人を見ていると、LSI設計の募集は、論理設計や検証、物理設計などの実務経験がある人材ほど、条件面で評価されやすい傾向があります。特に、一つの工程だけでなく前後の工程も理解している人材が求められやすい状況です。
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LSI設計のやりがいと大変さ
LSI設計には、世界中の電子機器を動かすチップを生み出すやりがいがあります。一方で、製造前に誤りをなくす責任の重さや、専門性の高さゆえの大変さもあります。
やりがい
・自分が設計に関わったチップが、多くの製品の中で動く
・最先端の技術に触れながら、専門性を高められる
・チームで大規模なものづくりを成し遂げる達成感がある
・専門性が高く、経験を積むほど替えのきかない人材になれる
大変さ
・製造後の修正が難しいため、検証に大きな労力がかかる
・製造用データを渡す前の時期は、業務が集中しやすい
・工程が細かく分かれ、製品全体が見えにくいことがある
私たちの相談現場では、「設計受託の会社で客先に常駐し、何年も検証の一部だけを担当していて、設計の経験が積めない」という声を聞きます。ここで大切なのは、物足りなさの原因がLSI設計という仕事そのものにあるのか、担当範囲が限られた働き方や組織の環境にあるのかを切り分けることです。 環境が原因であれば、検証で培った経験を強みに、設計から関われるメーカーなどへ移ることで、キャリアの幅を広げられる可能性があります。
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LSI設計エンジニアになるには
LSI設計エンジニアは、電気電子や情報系の基礎知識が欠かせないため、関連する学部・学科の出身者や、回路設計・FPGA設計の経験者が目指すことの多い職種です。まずは一つの工程で実務経験を積み、前後の工程へと理解を広げていくのが一般的な道です。
主なルートは次のとおりです。
・電気電子系や情報系の学部・学科を卒業し、半導体メーカーなどに入社する
・FPGA設計の経験者が、ハードウェア記述言語の経験を活かして移る
・基板の回路設計者や組込エンジニアから、チップの設計へ専門を広げる
・検証や評価の担当者から、設計の担当へ移る
次のステップで進めると、無理なく近づけます。
- 論理回路と電子回路の基礎を復習する
- ハードウェア記述言語で簡単な回路を書いてみる
- FPGAなどを使い、書いた回路を実際に動かしてみる
- シミュレーションによる検証の考え方を身につける
- 設計や検証の成果を、数字で説明できるように整理する
選考では、担当した工程と成果を数字で示すと評価されやすくなります。
例文:画像処理用のLSIの開発で、機能検証を担当しました。検証の手順を自動化する仕組みをつくり、検証にかかる期間を○割短縮しています。また、製造前に重大な不具合を○件発見し、作り直しの防止に貢献しました。
応募先を選ぶ際は、面接で次のような質問をしておくと安心です。
・入社後に担当する工程と、将来的に関われる工程を教えてください
・担当する製品の用途や規模を教えてください
・社内で設計を行うのか、客先での業務が中心なのかを教えてください
LSI設計への一歩を、一緒に考えます
市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
まとめ
・LSI設計とは、電子機器の中核となる集積回路を、仕様の検討から製造用データの作成まで設計する仕事
・論理設計、機能検証、論理合成、物理設計、検証など工程が細かく分かれ、チームで分担して進める
・基板の回路設計やFPGA設計とは、チップそのものを新しく作る点が異なる
・物足りなさを感じたら、仕事そのものの問題か、担当範囲が限られた環境の問題かを切り分ける
・一つの工程で経験を積み、前後の工程へ理解を広げていくのが一般的な道
よくある質問
未経験からLSI設計エンジニアになれますか?
電気電子や情報系の知識がない状態から、LSI設計エンジニアとして採用されるのは難しいのが実情です。関連学部出身の方は、新卒や第二新卒で目指す道があります。社会人の方は、FPGA設計や回路設計などで経験を積んでから移るのが現実的です。
文系出身でもLSI設計を目指せますか?
論理回路や電子回路の理論が欠かせないため、文系出身から目指すのは簡単ではありません。まずは基礎理論を学び、ハードウェア記述言語やFPGAで実際に回路を作る経験を積むことが第一歩です。検証や評価の補助など、関われる業務から経験を広げる方法もあります。
LSI設計エンジニアの年収は高いですか?
LSI設計エンジニアの年収を示す公的な統計は限られています。専門性の高い職種のため、求人では実務経験者ほど条件面で評価されやすい傾向があります。具体的な水準は、担当工程や企業によって異なるため、個別の求人で確認することが大切です。
LSI設計の将来性はありますか?
LSIは、スマートフォン、自動車、データセンター、産業機器など幅広い分野で使われており、半導体の重要性は高まっています。国内でも半導体関連の動きが活発になっており、設計を担える人材の需要は続くと考えられます。専門性を磨くほど評価されやすい分野です。
LSI設計は「きつい」と言われるのは本当ですか?
製造前に誤りをなくす必要があり、製造用データを渡す前の時期に業務が集中しやすいなど、大変さがあるのは事実です。ただし、負荷の大きさは企業の体制や人員によって大きく変わります。職種と環境のどちらに原因があるかを切り分けて考えましょう。
FPGA設計の経験はLSI設計に活かせますか?
活かせます。ハードウェア記述言語での設計やシミュレーションによる検証は、LSI設計と共通する部分が多くあります。そのうえで、論理合成や物理設計など、チップを製造するための工程の知識を身につけることで、LSI設計エンジニアとして評価されやすくなります。
半導体や電子回路の分野でのキャリアについて、まずは情報を集めながら考えたいという方もいるのではないでしょうか。LSI設計を含む機電系職種のキャリア研究に役立つ情報を、LINEでお届けしています。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
