KiCadの使い方|回路図作成から基板設計・製造データ出力まで初心者向けに解説

KiCadの使い方|回路図作成から基板設計・製造データ出力まで初心者向けに解説

「KiCadをインストールしたけれど、どこから手をつければいいか分からない」「回路図は描けたのに、基板の設計に進めない」と悩んで検索した方も多いのではないでしょうか。

KiCadの基本操作は、「回路図を描く」「部品と基板上の形を対応づける」「基板に配置して配線する」「ルールを確認して製造用データを出す」という流れを押さえれば、初心者でも一枚の基板を完成させられます。 つまずきやすいのは、部品の形の割り当てやルールの確認など、工程のつなぎ目の部分です。

この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、KiCadの基本的な使い方を5つのステップで解説し、設計のポイント、よくあるつまずきの対処法、基板設計のスキルをキャリアに活かす考え方までを紹介します。

そもそもKiCadとは

KiCadとは、電子回路の回路図と、プリント基板の設計ができる無料のソフトウェアです。誰でも使えるオープンソース(設計図にあたるプログラムが公開されている仕組み)として開発されており、Windows、macOS、Linuxで利用できます。回路図の作成から、基板メーカーに渡す製造用データの出力まで、一つのソフトで完結できることが、KiCadの大きな特徴です。

無料でありながら本格的な機能を備えているため、学生や個人の電子工作から、企業での試作基板の設計まで、幅広く使われています。

KiCadでできること

KiCadでは、主に次のようなことができます。

・回路図を描き、部品同士の接続を整理する
・部品の基板上の形(フットプリント)を割り当てる
・基板の形を決め、部品を配置して配線する
・設計のルールに違反がないかを自動で確認する
・基板の完成イメージを立体的に確認する
・基板メーカーに渡す製造用データを出力する

商用の基板設計ツールとの違い

企業の設計現場では、有償の基板設計ツールが使われることも多くあります。KiCadは無料で使える一方、大規模な基板や複雑な管理機能では有償ツールが選ばれる場合もあります。ただし、回路図から基板までの基本的な流れや考え方は共通しているため、KiCadで身につけた知識は他のツールにも活かせます。

使う前の準備|インストールとプロジェクトの作成

KiCadは、公式サイトから無料でダウンロードできます。インストール後は、まず「プロジェクト」を作成することから始めます。

準備の手順は次のとおりです。

  1. 公式サイトから、使っているパソコンに合ったインストーラーをダウンロードする
  2. 画面の案内に従ってインストールする(部品のデータ集であるライブラリも一緒に入れる)
  3. KiCadを起動し、メニューから新しいプロジェクトを作成する
  4. 保存場所とプロジェクト名を決める

プロジェクトを作成すると、回路図のファイルと基板のファイルがまとめて管理されます。KiCadは日本語の表示にも対応しており、設定から表示言語を切り替えられます。

KiCadは定期的に新しいバージョンが公開されており、メニューの名称や画面の配置が変わることがあります。この記事では基本的な流れを中心に解説しますので、細かな操作は使用しているバージョンの画面に合わせて読み替えてください。

KiCadの画面構成と主なツール

KiCadは、役割の異なる複数のツールを組み合わせて使います。最初に、どのツールが何をするのかを知っておくと、作業の流れが理解しやすくなります。

ツール主な役割
プロジェクトマネージャープロジェクト全体を管理し、各ツールを起動する
回路図エディター回路図を描き、部品同士の接続を決める
シンボルエディター回路図で使う部品の記号を作成・編集する
PCBエディター基板の形を決め、部品を配置して配線する
フットプリントエディター部品の基板上の形を作成・編集する
3Dビューアー基板の完成イメージを立体的に確認する
ガーバービューアー出力した製造用データの内容を確認する

回路図エディターで「何をどうつなぐか」を決め、PCBエディターで「基板の上にどう作るか」を決める、という役割分担を押さえておきましょう。

KiCadの基本の使い方5ステップ【回路図から製造データまで】

ここでは、簡単な回路を例に、回路図の作成から製造用データの出力までを5つのステップで紹介します。一度最後まで通して作業すると、基板設計の全体像がつかめます。

ステップ1. 回路図を描く

回路図エディターを開き、部品の記号(シンボル)を配置します。「A」キーなどで部品の追加画面を開き、抵抗やコンデンサ、集積回路などを選んで置いていきます。電源や接地は、専用の電源記号を「P」キーなどで配置します。

部品を置いたら、「W」キーなどで配線し、端子同士をつなぎます。離れた場所の配線は、同じ名前のラベルを付けることでつなげることもできます。キーの割り当ては、バージョンや設定によって異なる場合があります。

ステップ2. 部品番号を付け、ルールを確認する

回路図が描けたら、部品に「R1」「C1」などの番号を自動で付けます。この作業は「アノテーション」と呼ばれます。

次に、回路図の電気的な誤りを自動で確認する「ERC(電気的ルールチェック)」を実行します。未接続の端子や、電源のつなぎ忘れなどがあれば警告が表示されるので、一つずつ確認して修正します。

ステップ3. フットプリントを割り当てる

回路図の部品記号に、基板上の実際の形である「フットプリント」を割り当てます。同じ抵抗でも、部品の大きさや取り付け方によって形が異なるため、実際に使う部品の資料を見ながら選ぶことが大切です。

フットプリントの割り当ては、専用の画面でまとめて行えます。ここで誤った形を選ぶと、完成した基板に部品が取り付けられなくなるため、慎重に確認しましょう。

ステップ4. 基板に部品を配置して配線する

PCBエディターを開き、回路図の内容を基板に読み込みます。メニューの「回路図から基板を更新」などの操作で、部品と接続の情報が反映されます。

続いて、基板の外形を描きます。外形は「Edge.Cuts」という専用の層に描くのが決まりです。外形ができたら部品を配置し、「X」キーなどで配線を引いていきます。配線する前の接続は細い線(ラッツネスト)で表示されるため、それを頼りに配線を進めます。

ステップ5. ルールを確認し、製造用データを出力する

配線が終わったら、「DRC(デザインルールチェック)」を実行します。配線同士の間隔が狭すぎないか、つなぎ忘れがないかなどを自動で確認できます。

問題がなければ、基板メーカーに渡す製造用データを出力します。一般的には、各層の形を表す「ガーバーファイル」と、穴の位置を表す「ドリルファイル」を出力します。出力したデータは、ガーバービューアーで内容を確認してから、基板メーカーに入稿しましょう。

ここまでできれば、KiCadでの基板設計の流れは一通り身についたことになります。

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基板設計で押さえたいポイント

KiCadの操作に慣れたら、基板として正しく動くための設計の考え方も押さえておきましょう。ソフトの操作ができることと、動く基板を設計できることは別のスキルです。

配線の太さと間隔を決める

電流が多く流れる配線は太く、信号の配線は細くするなど、用途に合わせて太さを決めます。配線同士の間隔も、基板メーカーが製造できる範囲に合わせて設定します。

電源と接地を安定させる

接地の配線は、基板の広い面を銅で塗りつぶす「ベタ」と呼ばれる方法で作ることが一般的です。KiCadでは「塗りつぶしゾーン」の機能で作成できます。電源と接地を安定させることは、ノイズを減らし、回路を正しく動かすための基本です。

部品の配置を工夫する

集積回路の電源端子の近くには、ノイズを抑えるコンデンサ(パスコン)を配置するのが基本です。配線が短くなるよう、信号の流れに沿って部品を並べることも大切です。

基板メーカーのルールを確認する

基板メーカーごとに、製造できる配線の太さや穴の大きさなどのルールが決まっています。設計を始める前にルールを確認し、KiCadのデザインルールに反映しておくと、後からの修正を減らせます。

よくあるつまずきと対処法

KiCadを使い始めたばかりの頃は、工程のつなぎ目でつまずきやすい傾向があります。多くのつまずきは、フットプリントの割り当てやルールの確認を丁寧に行うことで防げます。

よくある症状主な原因対処法
基板に部品が読み込まれないフットプリントが割り当てられていない回路図に戻り、すべての部品にフットプリントを割り当てる
完成した基板に部品が付かない実際の部品と異なる形を選んでいた部品の資料で寸法を確認し、正しいフットプリントを選ぶ
外形が製造用データに出ない外形を専用の層以外に描いていた外形を「Edge.Cuts」の層に描き直す
確認で大量の警告が出る電源記号のつなぎ忘れなど警告を一つずつ確認し、意図したものか誤りかを判断する
ベタが表示されない塗りつぶしの更新がされていない塗りつぶしゾーンを再計算する

特に、フットプリントの選び間違いは、基板が届いてから気づくことが多いミスです。3Dビューアーで部品の大きさを確認したり、実際の部品の資料と寸法を照らし合わせたりする習慣をつけておくと安心です。

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知っておくと便利な機能

基本操作に慣れたら、次の機能を使うと設計の効率と品質が上がります。特に3Dビューアーは、部品の干渉や配置のミスに早く気づくために役立ちます。

・3Dビューアー:基板の完成イメージを立体的に確認できる
・部品表の出力:使用する部品の一覧を出力し、部品の手配に使える
・階層シート:大きな回路図を、機能ごとのシートに分けて整理できる
・独自の部品作成:ライブラリにない部品の記号や形を自分で作れる
・回路シミュレーション:回路図上で動作を確認する機能も搭載されている

回路の動作を詳しく確認したい場合は、LTspiceなどの回路シミュレーションソフトと組み合わせて使う方法もあります。

基板設計のスキルとキャリア

KiCadのような基板設計ツールを使いこなす力は、回路設計やハードウェア開発の仕事で役立つ実践的なスキルです。回路図を描くだけでなく、製造できる基板として完成させた経験があることが、評価のポイントになります。

求人を見ていると、回路設計やハードウェア開発の求人で、基板設計ツールの使用経験が「歓迎条件」として挙げられるケースが見られます。参考として、全職業の有効求人倍率(職業計)は1.12倍です。

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)

私たちの相談現場では、「回路設計の仕事に就きたいが、今の職場では基板の評価や修理ばかりで、設計に関わる機会がない」という声を聞きます。ここで大切なのは、スキルが伸びない原因が自分の学習量にあるのか、設計に関わる機会のない環境にあるのかを切り分けることです。 学習の問題であれば、KiCadで自主的に基板を設計し、実際に発注してみる経験を積むことができます。環境の問題であれば、設計から関われる職場へ移ることも選択肢になります。

転職の選考では、自主的に取り組んだ内容も、具体的に伝えると評価の材料になります。たとえば「KiCadで2層基板を設計し、基板メーカーに発注して動作確認まで行った」「部品配置を見直し、基板の面積を○割小さくした」のように、工程と成果を具体的に示しましょう。

回路・基板設計のキャリアを、一緒に考えます

市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
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まとめ

・KiCadは、回路図の作成から基板設計、製造用データの出力までできる無料のソフト
・基本の流れは「回路図」「ルール確認」「フットプリント割り当て」「配置・配線」「確認と出力」の5ステップ
・動く基板にするには、配線の太さ、電源と接地、部品の配置、基板メーカーのルールを押さえる
・つまずいたら、フットプリントの割り当てと外形の層をまず確認する
・スキルが伸び悩むときは、学習量の問題か、設計に関わる機会のない環境の問題かを切り分ける

よくある質問

KiCadは無料で使えますか?

KiCadはオープンソースのソフトとして、無料で公開されています。公式サイトからダウンロードして使えます。設計した基板の商用利用の可否など、利用の条件については、公式サイトの最新情報を確認してください。

初心者でもKiCadで基板を作れますか?

作れます。抵抗やLEDなどを使った簡単な回路から始め、回路図の作成から製造用データの出力までを一度通して体験するのがおすすめです。最初は小さな2層基板で練習し、基板メーカーに発注して実物を確認すると、理解が大きく深まります。

ガーバーファイルとは何ですか?

ガーバーファイルとは、基板の各層の形(配線、外形、文字など)を表す製造用データの一般的な形式です。基板メーカーは、このデータをもとに基板を製造します。KiCadでは、PCBエディターから出力できます。穴の位置を表すドリルファイルと一緒に入稿するのが一般的です。

KiCadは日本語で使えますか?

KiCadは日本語の表示に対応しており、設定から表示言語を切り替えられます。ただし、一部の用語や部品のライブラリは英語のまま表示されることがあります。操作に慣れるまでは、日本語と英語の両方の名称を覚えておくと、情報を調べるときに役立ちます。

KiCadの経験は転職で評価されますか?

回路設計やハードウェア開発の求人では、基板設計ツールの使用経験が歓迎条件として挙げられることがあります。企業によっては有償ツールを使っている場合もありますが、基板設計の流れや考え方は共通しています。設計から発注、動作確認まで行った経験を具体的に伝えましょう。

LTspiceとKiCadはどう使い分ければよいですか?

LTspiceは回路の動作をシミュレーションで確認するためのソフト、KiCadは回路図から基板を設計するためのソフトです。LTspiceで回路の動作を確かめ、KiCadで基板として形にする、という使い分けが一般的です。両方を使えると、回路設計の一連の流れを自分で体験できます。

回路や基板の設計の学び方やキャリアについて、まずは情報を集めながら考えたいという方もいるのではないでしょうか。回路設計を含む機電系職種の研究に役立つ情報を、LINEでお届けしています。

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この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部

主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。

この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大

立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。