「高周波回路設計とはどんな仕事なのか」「普通のアナログ回路設計と何が違うのか」と、仕事内容やキャリアの方向性として気になっている方も多いのではないでしょうか。
高周波回路設計とは、スマートフォンや基地局、車載レーダー、衛星通信などで使われる、高い周波数の電気信号を扱う回路を設計する仕事です。 配線や部品が持つ目に見えない特性まで考慮する必要があり、電子回路のなかでも特に専門性の高い領域です。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、高周波回路設計の仕事内容や種類、必要なスキル・資格、年収、なり方までを解説します。
高周波回路設計とは
高周波回路設計は、主に数百メガヘルツからギガヘルツ帯の信号を扱う回路を設計する仕事です。無線で情報をやり取りする機器には、電波を送受信するための高周波回路が必ず組み込まれています。
高周波の領域では、信号の波長が短くなるため、配線そのものが回路の一部として振る舞います。「部品をつなぐだけでは動かない」点が、高周波回路設計の最大の特徴です。 そのため、回路図だけでなく、基板上の配線の形や長さまで含めて設計します。
高周波回路設計で求められる主な性能は、次のとおりです。
・信号をできるだけ損失なく伝えること
・必要な信号を十分な大きさに増幅すること
・不要な周波数の信号や雑音を取り除くこと
・ほかの機器に電波の悪影響を与えないこと
・小型化・低消費電力化を両立すること
アナログ回路設計(低周波)との違い
一般的なアナログ回路設計では、配線は単に部品同士をつなぐ線として扱えることがほとんどです。一方で高周波回路では、配線や部品の端子が持つわずかな容量や誘導成分(寄生成分)が、性能に大きく影響します。そのため、電磁気学や伝送線路(信号が伝わる配線を波の伝わり方として扱う考え方)の知識が欠かせません。
高速デジタル回路設計との違い
高速デジタル回路設計も、信号の反射やノイズを考慮する点では高周波回路設計と共通しています。ただし、高速デジタル回路はデータを正確に伝えることが目的です。高周波回路設計は、電波を送受信するための増幅や周波数変換など、信号そのものを加工する点が異なります。
高周波回路設計の仕事内容【工程別】
高周波回路設計の仕事は、仕様検討から量産化まで幅広い工程にまたがります。特に「シミュレーション」と「実測評価」を何度も往復する点が、ほかの回路設計より色濃く表れます。
| 工程 | 主な役割 |
| 仕様検討 | 使う周波数帯や出力、受信感度などの目標を決める |
| 全体構成の設計 | 増幅・周波数変換・フィルターなどの組み合わせを決める |
| 回路設計・シミュレーション | 回路を設計し、電磁界シミュレーターで特性を確認する |
| 基板設計の指示・確認 | 配線の幅や長さ、部品配置を細かく指定する |
| 試作・評価 | 計測器で特性を測定し、部品定数を調整する |
| 認証試験・量産移管 | 電波に関する基準への適合を確認し、量産へ移す |
仕様検討・全体構成の設計
製品企画や通信方式の担当者と相談し、使用する周波数や通信距離、消費電力の目標を決めます。そのうえで、信号を増幅する回路や不要な信号を除くフィルターなど、どのような回路をどの順に組み合わせるかを設計します。
回路設計・シミュレーション
高周波回路では、回路図だけでは実際の動きを予測しきれません。電磁界シミュレーターを使い、配線の形状まで含めた特性を計算します。特に重要なのがインピーダンス整合(回路同士の「電気的な相性」を合わせ、信号の反射を防ぐこと)です。
試作・評価
試作基板ができたら、ネットワークアナライザ(回路の反射・通過特性を測る計測器)やスペクトラムアナライザ(信号の周波数成分を見る計測器)で特性を測定します。シミュレーションと実測がずれることは珍しくなく、部品の定数を細かく調整しながら目標に近づけていきます。
認証試験・量産移管
無線機器を製品として出荷するには、電波に関する国内外の法規制や基準を満たす必要があるとされます。試験に合格した後は、量産時に部品のばらつきがあっても性能を保てるよう、調整方法や検査基準を整えます。
高周波回路設計の種類
高周波回路設計は、回路の機能と、実装の形によって分類できます。どの領域を経験してきたかは、転職時の評価にも直結します。
| 分類 | 種類 | 主な役割・特徴 |
| 機能 | 増幅回路 | 微弱な受信信号や送信信号を大きくする |
| 機能 | 発振回路 | 基準となる周波数の信号を作る |
| 機能 | 周波数変換回路 | 信号の周波数を扱いやすい帯域に変える |
| 機能 | フィルター回路 | 必要な周波数だけを通し、不要な信号を除く |
| 機能 | 整合回路・アンテナ周辺 | アンテナと回路の間で信号を効率よく受け渡す |
| 実装 | 基板上の個別部品による設計 | 市販部品を組み合わせて回路を作る |
| 実装 | 半導体集積回路の設計 | 半導体チップの内部に高周波回路を作り込む |
用途としては、移動通信の基地局や端末、車載レーダー、衛星通信、医療機器、計測器など幅広い分野があります。次世代の移動通信やミリ波(非常に高い周波数帯の電波)を使うレーダーの普及により、より高い周波数を扱える技術者が求められています。
高周波回路設計エンジニアの1日の流れ(例)
高周波回路設計エンジニアの1日は、デスクでのシミュレーションと、実験室での測定が組み合わさるのが特徴です。以下は試作評価の時期の一例です。
・9:00 メール確認、前日の測定結果の整理
・10:00 試作基板の特性測定(実験室)
・12:00 昼休憩
・13:00 シミュレーション結果と実測値のずれを分析
・14:30 基板設計者と配線修正の打ち合わせ
・16:00 部品定数を変えて再測定
・17:30 評価報告書の作成、翌日の測定計画づくり
認証試験の前や、量産前に特性のばらつきが見つかった時期は、評価作業が集中して忙しくなる傾向があります。
高周波回路設計に必要なスキル・知識
高周波回路設計では、電子回路の基礎に加えて、電磁気学や計測の知識が欠かせません。目に見えない現象を、理論と測定結果から読み解く力が特に重視されます。
・電磁気学・伝送線路の知識:配線を電気信号の通り道として正しく扱う力
・インピーダンス整合の知識:スミスチャート(整合の検討に使う専用の図表)を読み書きする力
・シミュレーションのスキル:電磁界シミュレーターを使いこなす力
・計測のスキル:高周波用計測器の正しい扱い方と、測定誤差への理解
・ノイズ対策の知識:不要な電波の発生源を特定し、抑える設計手法
・基板設計の知識:配線や部品配置が特性に与える影響の理解
・調整力:通信方式・基板・機構・品質保証など他部署との連携
相談の現場では、「高周波は経験者しか採用されないのでは」という声をよく聞きます。たしかに経験者向けの求人が中心ですが、アナログ回路設計や高周波機器の評価業務の経験は、選考でも評価されやすい傾向があります。
高周波回路設計に役立つ資格
高周波回路設計の仕事に必須の資格はありません。選考では資格よりも、どの周波数帯の回路を、どの工程まで担当したかという実務経験が重視されます。ただし、知識の証明や学習の指針として、次のような資格が役立つ場面があります。
・第一級陸上無線技術士:無線設備の技術に関する国家資格。高周波や電波の知識の証明になる
・陸上特殊無線技士:無線設備の操作に関する資格。電波の基礎知識を学べる
・電気通信主任技術者:通信設備の工事・維持に関する国家資格
・技術士(電気電子部門):技術者としての高度な専門性を示す国家資格
高周波回路設計エンジニアの年収
高周波回路設計エンジニアの年収は、扱う周波数帯や業界、半導体集積回路の設計経験の有無などによって差が出やすい傾向があります。職種単体の公的統計は限られるため、以下は目安として確認してください。
| 指標 | 金額(目安) |
| 給与所得者全体の平均年収 | 約478万円 |
出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
参考として、全職業を合わせた職業計の有効求人倍率は1.12倍です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
私たちが求人を見ている範囲でも、高周波回路設計は経験者を求める募集が中心です。特に高い周波数帯の設計や、評価から量産まで一貫して担当した経験は、選考で評価されやすい傾向があります。
高周波の分野は、用途や周波数帯によって求められる経験が大きく変わります。職種研究に役立つ情報をLINEで配信していますので、まずは気軽に情報を受け取るところから始めてみてください。
高周波回路設計のやりがいと大変さ
高周波回路設計は、専門性の高さゆえに、技術者として大きな手応えを得られる仕事です。一方で、目に見えない現象を相手にする特有の大変さもあります。
やりがいとしては、次のような点が挙げられます。
・通信距離や受信感度など、成果が測定値ではっきり表れる
・移動通信や衛星、車載レーダーなど、社会を支える技術に関われる
・担い手が限られる分野のため、経験を積むほど専門家として評価されやすい
大変さとしては、次のような点が挙げられます。
・シミュレーションと実測が合わず、原因の特定に時間がかかることがある
・配線のわずかな違いで特性が変わり、試作を繰り返すことがある
・一人前になるまでに長い経験が必要とされる
ただし、大変さの感じ方は職場によって大きく異なります。高周波用の計測器が十分にない、相談できる先輩がいないといった状況は、技術領域そのものではなく環境の問題であることも少なくありません。高周波回路設計という仕事が合わないのか、学べる環境が整っていないのかを切り分けて考えることが大切です。
高周波の経験をどう活かせるか、一緒に整理しませんか
経験豊富なアドバイザーが、これまでのキャリアを丁寧にヒアリングします。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
高周波回路設計エンジニアになるには
高周波回路設計エンジニアを目指すルートは、大きく分けて次の3つです。
・電気電子系や通信系の学部・高専を卒業し、新卒でメーカーに入社する
・高周波機器の評価・試験業務から経験を積み、設計職へ移る
・アナログ回路設計の経験を活かし、高周波領域へ広げる
未経験から直接高周波回路設計職に就くのは簡単ではありません。まずは評価や試験など、高周波機器に関わる周辺業務から経験を積むのが現実的な道筋です。
経験者が転職を考える場合は、自分の経験を「周波数帯」「回路の機能」「担当工程」の3点で整理しておくと、求人とのマッチングがしやすくなります。たとえば「ギガヘルツ帯の受信用増幅回路を、設計から量産時の調整まで担当」のように書くと、採用担当者に伝わりやすくなります。
自分に合う高周波設計の求人を見極めたい方へ
今の悩みの相談だけでもかまいません。市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。
まとめ
・高周波回路設計とは、無線通信などで使う高い周波数の信号を扱う回路を設計する仕事
・配線や部品の寄生成分まで考慮する点が、低周波のアナログ回路設計と大きく異なる
・仕事は仕様検討から試作評価、認証試験、量産移管まで幅広い
・電磁気学や計測の知識と、理論と実測を往復して原因を突き止める力が重視される
・大変さを感じたら、技術領域そのものか学べる環境かを切り分けて考える
よくある質問
高周波回路設計は難しいですか?
配線や部品の見えない特性まで考慮する必要があり、電子回路のなかでも難しい領域とされます。ただし、計測器や指導体制が整った職場であれば、段階的に経験を積むことができます。難しさは職場環境にも左右されやすい点を知っておきましょう。
未経験でも高周波回路設計エンジニアになれますか?
未経験から直接設計職に就くのは簡単ではありません。電気電子の基礎を学びながら、まずは高周波機器の評価・試験業務など周辺の職種で経験を積み、設計職を目指すのが現実的なルートです。
高周波回路設計に将来性はありますか?
次世代の移動通信や車載レーダー、衛星通信など、高周波技術を使う分野は広がっています。より高い周波数を扱える技術者は限られており、新しい技術を学び続ける姿勢があれば、長く活躍しやすい職種です。
アナログ回路設計の経験は高周波回路設計に活かせますか?
活かせます。増幅回路やノイズ対策、計測の経験は高周波回路設計でも土台になります。そのうえで、伝送線路やインピーダンス整合などの知識を補うと、高周波領域への移行がしやすくなります。
高周波回路設計の仕事はAIでなくなりますか?
シミュレーションや部品定数の最適化は、自動化ツールで効率化が進む可能性があります。一方で、実測結果から原因を突き止める判断や、性能・コスト・規格を両立させる設計判断は、経験を積んだエンジニアに引き続き求められる領域です。
高周波回路設計の経験は他の職種に活かせますか?
活かせます。アンテナ設計や高速デジタル回路設計、電磁ノイズ対策、無線機器の評価・品質保証、技術営業など、電波や信号品質の知識を必要とする職種で評価されやすい経験です。
高周波回路設計の仕事や、関連する職種への理解をもう少し深めたい方もいるのではないでしょうか。機電系の職種研究に役立つ情報をLINEで配信していますので、情報収集の手段のひとつとしてご活用ください。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
