「FPGAエンジニアとはどんな仕事?」「LSI設計や組込エンジニアとは何が違うの?」と気になって検索した方も多いのではないでしょうか。
FPGAエンジニアとは、製造後に中身の回路を書き換えられる集積回路「FPGA」に、目的に合った回路を設計して書き込み、通信機器や画像処理装置などを動かすエンジニアのことです。 ソフトウェアのように回路を何度も作り直せる柔軟さと、ハードウェアならではの高速な処理を両立できる点が、FPGAの大きな特徴です。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、FPGAエンジニアの仕事内容や種類、1日の流れ、必要なスキル、資格、年収の考え方、なり方までを解説します。
FPGAエンジニアとは
FPGAエンジニアとは、FPGAを使って電子機器の機能を実現するハードウェアの技術者です。FPGAは、内部に多数の論理回路の部品を持ち、その組み合わせ方を後から自由に設定できる集積回路です。大量のデータを同時に高速で処理する回路を、製品ごとに柔軟につくり分けられることが、FPGAエンジニアが担う価値です。
FPGAは、通信機器、画像処理装置、産業機器、計測器、放送機器、医療機器など幅広い分野で使われています。少量生産の製品や、仕様の変更が見込まれる製品で特に重宝されます。
LSI設計エンジニアとの違い
LSI設計エンジニアは、新しい集積回路のチップそのものを設計し、製造します。FPGAエンジニアは、すでにあるFPGAというチップに回路を書き込みます。ハードウェア記述言語で回路を設計する点は共通していますが、FPGAは製造の工程がなく、完成後も回路を書き換えられる点が大きく異なります。
組込エンジニアとの違い
組込エンジニアは、機器に組み込まれたマイコンなどで動くソフトウェアを主に開発します。FPGAエンジニアは、ソフトウェアではなく回路そのものを設計します。ただし、両者は同じ機器の開発で協力することが多く、プロセッサを内蔵したFPGAではソフトウェア開発に関わる場面もあります。
基板の回路設計エンジニアとの違い
基板の回路設計エンジニアは、FPGAを含む部品を基板の上でどう接続するかを設計します。FPGAエンジニアは、そのFPGAの内部の回路を設計します。実機での確認では、両者が連携して問題の原因を突き止めます。
FPGAエンジニアの仕事内容【工程別】
FPGAエンジニアの仕事は、仕様の検討から実機での確認、量産後の保守までの流れで進みます。どの工程でも「シミュレーションと実機の両方で、意図どおりに動くことを確かめる」ことが仕事の中心です。
| 工程 | 主な作業 | FPGAエンジニアの役割 |
| 仕様の検討 | FPGAに担わせる機能を決める | 処理の速さや規模から必要な回路を見積もる |
| 設計 | 回路の構成を決め、言語で記述する | ハードウェア記述言語で機能を実現する |
| シミュレーション | 動作をパソコン上で確かめる | 実機に書き込む前に誤りを見つける |
| 論理合成・配置配線 | 回路をFPGA向けのデータに変換する | 処理の速さや使用量の目標を満たす |
| 実機での確認 | 基板に書き込んで動かす | 測定器を使い、実際の動作を確かめる |
| 結合・評価 | ソフトウェアや他の部品と合わせて動かす | 機器全体として正しく動くかを確認する |
| 保守・改良 | 不具合の修正や機能の追加 | 回路を書き換えて製品を改善する |
仕様の検討
製品全体の仕様をもとに、FPGAに担わせる機能や処理の速さを決めます。どの程度の規模のFPGAが必要かも、この段階で見積もります。
設計
回路の構成を決め、VerilogやVHDLなどのハードウェア記述言語で記述します。近年は、C言語などから回路を自動で生成する「高位合成」という手法が使われることもあります。
シミュレーション
書いた回路が正しく動くかを、パソコン上のシミュレーションで確かめます。実機に書き込む前に誤りを見つけることで、開発の手戻りを減らします。
論理合成・配置配線
記述した回路を、FPGAの製造元が提供する開発ツールで、FPGAに書き込めるデータに変換します。信号が決められた時間内に届くかといった「タイミング」の条件を満たすよう調整します。
実機での確認
基板に搭載したFPGAに回路を書き込み、実際に動かします。オシロスコープやロジックアナライザなどの測定器を使い、信号が正しく出ているかを確かめます。
結合・評価
ソフトウェアや他の部品と組み合わせ、機器全体として正しく動くかを確認します。問題が起きた場合は、回路、基板、ソフトウェアのどこに原因があるかを、関係者と協力して切り分けます。
保守・改良
製品の出荷後も、不具合の修正や機能の追加のために回路を書き換えることがあります。書き換えられることは、FPGAを使う大きな利点の一つです。
FPGAエンジニアの種類
FPGAエンジニアは、扱う処理の分野や開発の目的によって働き方が変わります。分野ごとに求められる専門知識が異なるため、どの分野で経験を積むかがキャリアの方向性を左右します。
| タイプ | 主な担当 | 特徴 |
| 画像処理型 | カメラや映像機器の画像処理回路 | 画像処理の知識が活きる |
| 通信・信号処理型 | 通信機器や計測器の信号処理回路 | 信号処理や通信方式の知識が求められる |
| 制御型 | 産業機器やロボットの制御回路 | 制御技術や機械との連携が求められる |
| 試作・検証型 | 新しいチップの開発前の試作や検証 | LSI設計に近い知識が身につく |
| プロセッサ内蔵型 | プロセッサを内蔵したFPGAでの開発 | 回路とソフトウェアの両方に関われる |
求人を見ていると、FPGAエンジニアの募集は、通信機器、産業機器、計測器、映像機器などのメーカーや、設計を受託する企業からが多い傾向があります。分野の専門知識とFPGAの設計経験を併せ持つ人材は、特に求められやすい状況です。
FPGAエンジニアの1日の流れ(例)
ここでは、産業機器メーカーで画像処理の回路を担当するFPGAエンジニアの一例を紹介します。
・9:00 業務開始、メールとチームの進捗を確認
・9:30 チームの朝会で課題と予定を共有
・10:00 新しい画像処理機能の回路を設計
・12:00 昼休憩
・13:00 シミュレーションで動作を確認
・14:30 試作基板に書き込み、測定器で信号を確認
・16:00 ソフトウェア担当者と、結合時の不具合について打ち合わせ
・17:00 タイミングの条件を満たすよう回路を調整
・18:00 作業内容の記録、翌日のタスク整理、終業
机上の設計と、実験室での実機確認を行き来するのが、FPGAエンジニアの働き方の特徴です。 製品の評価の時期には、実機での確認やデバッグに多くの時間を使います。
FPGAエンジニアに必要なスキル・知識
FPGAエンジニアには、論理回路の理論とハードウェア記述言語に加えて、実機で問題を突き止める力が求められます。シミュレーションだけでなく、実機の信号を見て原因を探る「ハードウェアのデバッグ力」が、FPGAエンジニアの強みになります。
| 領域 | 主な知識・スキル |
| 基礎理論 | 論理回路、電子回路 |
| 設計 | ハードウェア記述言語(Verilog、VHDLなど) |
| タイミング設計 | 信号が決められた時間内に届くよう設計する知識 |
| 開発ツール | FPGAの製造元が提供する開発ツールの操作 |
| 測定 | オシロスコープ、ロジックアナライザなどの操作 |
| 分野の知識 | 画像処理、信号処理、通信、制御など |
| ソフトウェア | C言語など、組込ソフトウェアの基礎 |
技術以外では、次のような力も求められます。
・回路、基板、ソフトウェアのどこに原因があるかを切り分ける分析力
・基板設計者やソフトウェア担当者と連携する力
・英語で書かれたFPGAの資料を読む力
FPGAエンジニアに近い経験をどれだけ積んでいるかは、次の項目で確認できます。
・□ 論理回路や電子回路の基礎を学んだことがある
・□ ハードウェア記述言語で回路を書いたことがある
・□ FPGAの評価ボードなどで、回路を実際に動かしたことがある
・□ オシロスコープなどの測定器を使ったことがある
・□ 画像処理や信号処理など、得意な分野の知識がある
当てはまる項目が多いほど、FPGAエンジニアに必要な経験を積み始めていると考えられます。
FPGAエンジニアに役立つ資格
FPGAエンジニアになるのに、必須の資格はありません。 選考では、FPGAの設計や実機での確認の経験が最も重視されます。ただし、関連する知識を体系的に示す手段として、資格は役立ちます。
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験:組込システムのハードウェアとソフトウェアに関する高度な知識を問う国家試験です
・応用情報技術者試験:コンピュータの仕組みを含む応用的な知識を問う国家試験です
・基本情報技術者試験:ITの基礎知識を幅広く問う国家試験です
出典:IPA「情報処理技術者試験」
このほか、FPGAの製造元や関連団体が提供する研修や講座も、開発ツールの使い方や設計の手法を学ぶ手段として活用できます。
FPGAエンジニアの年収
FPGAエンジニアの年収を示す公的な統計は限られています。専門性の高い職種のため、経験によっては評価されやすいと考えられますが、具体的な水準は統計で確認したうえで判断することが大切です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
求人を見ていると、FPGAエンジニアの募集は、設計から実機での確認まで一通り担える人材ほど、条件面で評価されやすい傾向があります。画像処理や通信など、分野の専門知識を持つ人材も求められやすい状況です。
FPGAや電子回路の分野でのキャリアを調べている方に向けて、職種研究に役立つ情報をLINEで配信しています。まずは情報収集から始めたい方も気軽にご活用ください。
FPGAエンジニアのやりがいと大変さ
FPGAエンジニアには、自分が設計した回路が実機で動く瞬間を味わえるやりがいがあります。一方で、ハードウェアならではの大変さもあります。
やりがい
・自分が設計した回路が、実際の機器の中で高速に動く
・回路を書き換えながら、製品を改良し続けられる
・画像処理や通信など、最先端の分野に関われる
・LSI設計や組込開発など、キャリアの選択肢を広げやすい
大変さ
・シミュレーションでは動くのに、実機で動かない問題の原因特定に時間がかかる
・タイミングの条件を満たすための調整が難しいことがある
・開発ツールの処理に時間がかかり、修正の確認に待ち時間が生じる
私たちの相談現場では、「FPGAは特殊な分野なので、経験が他で通用しないのでは」という声を聞きます。また、「設計受託の会社で客先に常駐し、検証の一部だけを担当していて、設計の経験が積めない」という声もあります。ここで大切なのは、不安の原因がFPGAエンジニアという職種そのものにあるのか、担当範囲が限られた働き方や組織の環境にあるのかを切り分けることです。 FPGAの経験は、LSI設計や組込開発にも活かしやすいものです。環境が原因であれば、設計から関われる企業へ移ることで、経験の幅を広げられる可能性があります。
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FPGAエンジニアになるには
FPGAエンジニアは、電気電子や情報系の基礎知識が欠かせないため、関連する学部・学科の出身者や、回路設計・組込開発の経験者が目指すことの多い職種です。評価ボードなどで実際に回路を動かす経験を積むことが、FPGAエンジニアへの近道です。
主なルートは次のとおりです。
・電気電子系や情報系の学部・学科を卒業し、メーカーなどに入社する
・基板の回路設計者から、FPGAの内部の設計へ専門を広げる
・組込エンジニアから、ハードウェアの設計に関わる範囲を広げる
・評価や試験の担当者から、FPGAの設計の担当へ移る
次のステップで進めると、無理なく近づけます。
- 論理回路と電子回路の基礎を復習する
- ハードウェア記述言語で簡単な回路を書いてみる
- FPGAの評価ボードで、書いた回路を実際に動かしてみる
- シミュレーションとタイミングの考え方を身につける
- 設計や評価の成果を、数字で説明できるように整理する
選考では、担当した工程と成果を数字で示すと評価されやすくなります。
例文:検査装置の画像処理を、ソフトウェアからFPGAの回路に置き換える開発を担当しました。処理を並列化する回路を設計し、1枚あたりの処理時間を○割短縮しています。また、実機での確認手順を整備し、評価にかかる期間を○日短縮しました。
応募先を選ぶ際は、面接で次のような質問をしておくと安心です。
・入社後は、設計から実機での確認まで一通り担当できますか
・担当する製品の分野と、使用しているFPGAの規模を教えてください
・社内で開発するのか、客先での業務が中心なのかを教えてください
FPGAエンジニアへの一歩を、一緒に考えます
市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
まとめ
・FPGAエンジニアとは、書き換え可能な集積回路「FPGA」に回路を設計し、機器を動かすエンジニア
・LSI設計と違い製造の工程がなく、完成後も回路を書き換えられる点が特徴
・仕事は仕様の検討、設計、シミュレーション、実機での確認、結合・評価、保守まで幅広い
・不安を感じたら、職種そのものの問題か、担当範囲が限られた環境の問題かを切り分ける
・評価ボードで回路を動かす経験を積み、分野の知識と掛け合わせて目指すのが近道
よくある質問
未経験からFPGAエンジニアになれますか?
電気電子や情報系の知識がない状態から、FPGAエンジニアとして採用されるのは難しいのが実情です。関連学部出身の方は、新卒や第二新卒で目指す道があります。社会人の方は、回路設計や組込開発などで経験を積み、評価ボードで自主的に学ぶことから始めるのがおすすめです。
FPGAの経験は他の職種でも活かせますか?
活かせます。ハードウェア記述言語での設計やシミュレーションの経験は、LSI設計と共通する部分が多くあります。また、ハードウェアとソフトウェアの両方を理解していることは、組込開発でも強みになります。特殊な分野だと考えすぎず、経験の活かし方を整理することが大切です。
FPGAエンジニアの年収は高いですか?
FPGAエンジニアの年収を示す公的な統計は限られています。専門性の高い職種のため、求人では設計から実機での確認まで担える人材ほど、条件面で評価されやすい傾向があります。具体的な水準は、担当する分野や企業によって異なるため、個別の求人で確認することが大切です。
FPGAエンジニアの将来性はありますか?
FPGAは、通信、画像処理、産業機器など、高速な処理が求められる分野で幅広く使われています。大量のデータを高速に処理する用途も広がっており、FPGAを扱える人材の需要は続くと考えられます。分野の専門知識と組み合わせることで、より評価されやすくなります。
プログラミングの経験は役立ちますか?
役立ちます。ハードウェア記述言語はソフトウェアの言語とは考え方が異なりますが、プログラミングの経験は学習の助けになります。また、C言語などから回路を生成する手法や、プロセッサを内蔵したFPGAでの開発では、ソフトウェアの知識がそのまま活かせます。
FPGAエンジニアは「きつい」と言われるのは本当ですか?
実機で動かない問題の原因特定に時間がかかることなど、大変さがあるのは事実です。ただし、業務の負荷は、開発の体制や人員、担当範囲によって大きく変わります。職種と環境のどちらに原因があるかを切り分けて考えることが大切です。
FPGAや電子回路の分野でのキャリアについて、まずは情報を集めながら考えたいという方もいるのではないでしょうか。FPGAエンジニアを含む機電系職種のキャリア研究に役立つ情報を、LINEでお届けしています。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
