「是正処置 予防処置 違い」と検索したあなたは、不具合の報告書を書く場面や内部監査の準備などで、2つの言葉の使い分けに迷っているのではないでしょうか。どちらも「対策」に聞こえるため、現場では混同されやすい言葉です。
是正処置は「すでに起きた問題の再発を防ぐ処置」、予防処置は「まだ起きていない問題の発生を防ぐ処置」です。 両者を分けるのは、問題が実際に起きたかどうかという1点です。さらに、目の前の不良品を手直しするだけの「修正」も、是正処置とは別のものとして区別する必要があります。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、是正処置と予防処置の違いを比較表で整理し、修正との違い、製造現場の具体例、進め方の手順、品質保証職のキャリアまでを解説します。
結論:違いを一言で
是正処置と予防処置の違いは、「起きた問題」に対する処置か、「起きそうな問題」に対する処置かです。
- 是正処置:発生した不適合(規格や要求を満たさない状態)の原因を取り除き、再発を防ぐ
- 予防処置:まだ発生していない潜在的な不適合の原因を取り除き、発生そのものを防ぐ
- 修正:発生した不適合そのものを取り除く(手直し、選別、交換など)。原因には手を付けない
「修正」は目の前の火を消すこと、「是正処置」は同じ場所から火が出ないようにすること、「予防処置」はまだ火が出ていない場所の火種を取り除くこと、とイメージすると分かりやすいです。
是正処置と予防処置の違い【比較表】
まずは、観点ごとの違いを表で確認しましょう。
| 観点 | 是正処置 | 予防処置 |
| 対象 | 発生した不適合 | 発生する可能性のある不適合 |
| 目的 | 再発防止 | 発生防止(未然防止) |
| きっかけ | 不良、クレーム、監査での指摘 | 傾向分析、他製品の事例、リスク評価 |
| タイミング | 問題が起きた後 | 問題が起きる前 |
| 主な手法 | なぜなぜ分析、特性要因図、8D | FMEA、FTA、データの傾向分析 |
| 効果の確認 | 同じ不適合が再発していないか | 想定した不適合が発生していないか |
| 範囲 | 発生した製品・工程が中心 | 類似製品・類似工程まで広げる |
修正(応急処置)との違い
現場で特に混同されやすいのが、「修正」と「是正処置」です。修正は、不適合を取り除くための処置で、不良品の手直しや選別、再検査などが当たります。一方で、是正処置は不適合の原因を取り除く処置です。
例えば、ネジの締め忘れが見つかった製品を締め直すのは「修正」です。締め忘れが起きた原因を調べ、締付けの確認手順を追加したり、締め忘れを検知する仕組みを入れたりするのが「是正処置」です。
報告書に「不良品を手直しした」としか書かれていない場合、再発を防ぐ対策が取られていないことになります。内部監査で指摘されやすいポイントなので、修正と是正処置は分けて記録しましょう。
①目的とタイミングの違い
是正処置の目的は再発防止で、問題が起きた後に行います。不良の発生、顧客からのクレーム、内部監査での指摘などがきっかけになります。
予防処置の目的は未然防止で、問題が起きる前に行います。「不良率がじわじわ上がっている」「別ラインで同じ構造の部品にトラブルが出た」といった兆候や他の事例が、予防処置のきっかけになります。
ここで迷いやすいのが、「別ラインで起きた不具合を、自分のラインに展開する」ケースです。発生したラインにとっては是正処置ですが、まだ起きていないラインにとっては予防処置に当たります。このように、同じ対策でも見る立場によって分類が変わる点を押さえておきましょう。
②対象と手法の違い
是正処置は、実際に起きた不適合が対象です。そのため、現物や記録をもとに原因を特定する手法を使います。代表的なのは、なぜなぜ分析(「なぜ」を繰り返して真の原因を探る手法)や、特性要因図(原因を4M=人・機械・材料・方法などに分けて整理する図)です。自動車業界では、8D(8つの手順で問題解決を進める手法)がよく使われます。
予防処置は、まだ起きていない不適合が対象です。そのため、起こりうる問題を事前に洗い出す手法を使います。代表的なのは、FMEA(部品や工程ごとに故障の起こり方と影響を洗い出す手法)や、FTA(起きては困る事象から原因をさかのぼる手法)、管理図などを使った傾向分析です。
③規格(ISO 9001など)での扱いの違い
品質マネジメントシステムの規格でも、2つの扱いには違いがあります。
| 規格 | 是正処置 | 予防処置 |
| ISO 9001(2015年版) | 要求事項として規定 | 独立した条項はなく、「リスク及び機会への取組み」に含まれる考え方とされる |
| ISO 13485(医療機器) | 要求事項として規定 | 独立した要求事項として規定 |
| IATF 16949(自動車) | ISO 9001に加え、問題解決の手法などを要求 | リスク分析やポカヨケなどの形で要求 |
ISO 9001は2015年の改訂で、予防処置という独立した条項がなくなったとされます。ただし、予防の考え方がなくなったわけではありません。リスクを事前に考えて手を打つという形で、マネジメントシステム全体に組み込まれたと理解するとよいでしょう。医療機器のように、今も予防処置を独立した要求事項としている規格もあるため、自社がどの規格で運用しているかを確認することが大切です。
製造現場の具体例
同じ「部品の付け忘れ」というテーマで、3つの処置を比べてみます。
| 区分 | 具体的な処置 |
| 修正 | 付け忘れが見つかった製品に部品を取り付け、同じロットを全数検査する |
| 是正処置 | 付け忘れの原因(部品が置き場に混在していた)を特定し、部品のキット化と重量チェックを導入する |
| 予防処置 | 同じ組立方式の他ラインにもキット化と重量チェックを展開し、新製品の工程設計の基準に追加する |
※企業によって分類の考え方は異なります。ここで紹介するのは一般的な傾向です。
この例のように、修正→是正処置→予防処置と範囲を広げていくことで、1件の不具合を組織全体の品質向上につなげられます。
どちらを優先すべき?使い分けの考え方
結論から言うと、発生した問題には、まず修正と是正処置を確実に行い、そのうえで予防処置へ広げるのが基本です。起きた問題を放置したまま予防処置に手を広げても、目の前の再発リスクは残ってしまうからです。
一方で、是正処置ばかりに追われる状態は、「問題が起きてから動く」体質になっているサインでもあります。新製品の立ち上げや工程変更の前には、FMEAなどで予防処置を計画的に行い、是正処置の件数そのものを減らしていくことが理想です。
IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちのもとには、品質保証の担当者から「毎日クレーム対応と是正処置の報告書に追われ、予防の仕事にまったく手が回らない」という声が寄せられます。この悩みは、品質保証という職種の問題ではなく、人員体制や開発段階の品質の作り込みといった職場環境の問題であることも少なくありません。「仕事内容がつらいのか、今の職場の体制がつらいのか」を切り分けることが、次の一手を考える出発点になります。
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是正処置の進め方と報告書のポイント
是正処置は、一般的に次の手順で進めます。
- 不適合の内容を明確にする(いつ、どこで、何が、どれだけ)
- 修正を行い、影響範囲を確認する(流出品の回収や選別など)
- 真の原因を特定する(なぜなぜ分析、特性要因図など)
- 原因を取り除く対策を決めて実施する
- 対策の効果を確認する(一定期間、再発していないか)
- 標準書や手順書を改訂し、類似工程へ展開するか判断する
報告書では、修正と是正処置を分けて書くこと、原因を「作業者の不注意」で終わらせないことが重要です。人のミスに見える問題でも、「なぜミスが起きやすい状態だったのか」まで掘り下げると、仕組みで防ぐ対策が見えてきます。
是正処置報告書の記入チェック表
報告書を提出する前に、次の項目を確認しましょう。
| 項目 | 確認内容 | 確認欄 |
| 不適合の内容 | 5W1Hで事実が書かれているか | □ |
| 修正 | 不良品の処置と影響範囲の確認が書かれているか | □ |
| 発生原因 | なぜ起きたかが、仕組みの問題まで掘り下げられているか | □ |
| 流出原因 | なぜ検査で見逃したかも分析されているか | □ |
| 是正処置 | 原因に対応した対策になっているか | □ |
| 効果確認 | 確認の期間と判定基準が決まっているか | □ |
| 標準化 | 手順書や図面の改訂につながっているか | □ |
| 水平展開 | 類似製品・類似工程への展開を判断したか | □ |
処置の成果を数値で示す
是正処置や予防処置の成果は、数値で示すと社内でも転職活動でも伝わりやすくなります。
| 指標 | 対策前 | 対策後 |
| 同一不良の再発件数(半年) | 5件 | 0件 |
| 工程内不良率 | 1.2% | 0.3% |
| 顧客クレーム件数(年間) | 12件 | 4件 |
| 水平展開したライン数 | — | 3ライン |
※数値は記入例です。
品質の仕事を、もっと前向きに続けるために
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よくある失敗と注意点
是正処置・予防処置の運用では、次のような失敗がよく見られます。
- 修正だけで終わる:手直しや選別で終わり、原因に手を付けていない状態です。
- 原因が「不注意」で止まる:「教育を徹底する」だけの対策は、再発しやすい傾向があります。
- 効果確認をしない:対策を実施しただけで完了とし、再発の有無を確認していない状態です。
- 水平展開が漏れる:同じ原因を持つ他製品・他工程に対策が広がらず、別の場所で同じ不良が起きます。
- 予防処置が書類だけになる:FMEAを作ったものの、見直しや対策につながっていない状態です。
是正処置・予防処置に関わる仕事とキャリア
是正処置と予防処置に深く関わるのは、品質管理・品質保証の職種です。品質管理は主に製造工程での不良を防ぐ役割、品質保証は製品の品質を顧客に対して保証し、仕組みを整える役割を担います。設計者や生産技術者も、原因の分析や対策の実施で関わります。
品質管理・品質保証の年収は、業界や企業規模、経験によって大きく異なります。転職市場全体の状況としては、有効求人倍率(職業計)は1.12倍となっています。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
選考の場では、「是正処置の報告書を書いた」という経験よりも、「真の原因を特定し、再発ゼロを継続した」「予防処置として他ラインへ展開し、クレームを減らした」のように、成果まで話せる人が評価されやすい傾向があります。前述の数値化の表を参考に、自分の経験を整理しておくと、職務経歴書や面接で強みとして伝えやすくなります。
品質保証の経験を、正しく評価してくれる企業へ
是正処置や予防処置の経験は、品質系の職種で大きな強みになります。市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
まとめ
- 是正処置は「起きた不適合の再発防止」、予防処置は「起きていない不適合の発生防止」です。
- 修正は不適合そのものを取り除く処置で、原因を取り除く是正処置とは区別して記録します。
- 是正処置ではなぜなぜ分析や8D、予防処置ではFMEAやFTAなどの手法がよく使われます。
- ISO 9001(2015年版)では予防処置の独立条項がなくなったとされますが、医療機器の規格などでは今も要求されています。
- 品質の仕事のつらさが職種によるものか環境によるものかを切り分け、成果を数値で語れるよう整理しておきましょう。
よくある質問
是正処置と予防処置の違いを一言で言うと?
問題が実際に起きたかどうかの違いです。起きた不適合の再発を防ぐのが是正処置、まだ起きていない不適合の発生を防ぐのが予防処置です。どちらも、原因を取り除く処置である点は共通しています。
是正処置と修正の違いは何ですか?
修正は不適合そのものを取り除く処置で、是正処置は不適合の原因を取り除く処置です。不良品の手直しは修正、手直しが必要になった原因をなくす対策が是正処置に当たります。報告書では分けて書くのが基本です。
水平展開は是正処置ですか、予防処置ですか?
不具合が発生した工程にとっては是正処置の一部ですが、まだ発生していない類似工程への展開は予防処置に当たると考えられます。社内の規定で分類が決まっている場合は、それに従いましょう。
ISO 9001に予防処置はもうないのですか?
2015年版では、予防処置という独立した条項はなくなったとされます。ただし、リスクを事前に考えて対策する考え方として、規格全体に組み込まれています。予防の取り組み自体が不要になったわけではありません。
是正処置の効果確認はどのくらいの期間行えばよいですか?
不良の発生頻度や生産量によって異なります。発生頻度の高い不良なら数週間、頻度の低い不良なら数か月から複数ロットで確認するのが一般的です。社内規定で期間を決めておくと、判断がぶれにくくなります。
是正処置や予防処置の経験は転職で評価されますか?
品質管理・品質保証の職種では評価されやすい経験です。特に、真の原因の特定から再発防止、水平展開までを主導した経験は強みになります。件数や不良率などの数値で成果を示せるよう整理しておきましょう。
品質管理・品質保証の職種研究や、品質系のキャリアの考え方に役立つ情報を、LINEで配信しています。転職を決めていない段階でも、気軽に受け取れます。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
