回路シミュレーションソフトの選び方|初心者から実務まで目的別に8選紹介

回路シミュレーションソフトの選び方|初心者から実務まで目的別に8選紹介

「回路シミュレーションソフトはどれを選べばいい?」「無料のソフトでも実務に役立つの?」と迷って検索した方も多いのではないでしょうか。

回路シミュレーションソフトは、学習目的なら無料のSPICE系ソフトで十分に始められます。一方で、高周波回路や半導体チップの設計などの専門分野では、商用の専用ツールが使われることが多いのが実情です。 大切なのは、ソフトの機能の多さより、自分の目的とレベルに合ったものを選ぶことです。

この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、主な回路シミュレーションソフト8つの特徴を一覧で比較し、レベル別・目的別の選び方、スキルをキャリアに活かす考え方までを解説します。

回路シミュレーションソフトは必要?

回路を学ぶうえで、回路シミュレーションソフトは必須ではありません。ただし、使えるようになると学習の効率と設計の質が大きく上がります。 実際に部品を買って組む前に、電圧や電流の動きをパソコン上で確認できるためです。

回路シミュレーションソフトとは、回路図をもとに、回路の電圧や電流の変化を計算して表示するソフトです。多くのソフトは、「SPICE」と呼ばれる回路シミュレーションの代表的な仕組みをもとにしています。

ただし、シミュレーションは部品の「モデル」に基づく計算です。実際の基板では、配線の長さや部品のばらつきなどで結果が変わることがあります。シミュレーションで傾向をつかみ、試作で確かめるという使い分けが基本です。

主な回路シミュレーションソフト【一覧】

ここでは、学習から実務まで、よく使われる回路シミュレーションソフトを一覧で紹介します。まずは無料のソフトで基本を身につけ、必要に応じて専門的なソフトに広げていくのがおすすめです。

ソフト名提供元費用の目安主な特徴
LTspiceアナログ・デバイセズ無料動作が軽く、電源回路やアナログ回路の解析で広く使われる
QSPICEQorvo無料比較的新しいSPICE系のソフトで、高速な計算を特徴とする
ngspice開発者コミュニティ無料オープンソースのSPICEで、他のソフトに組み込まれることも多い
KiCad開発者コミュニティ無料基板設計ソフトの中で回路シミュレーションも行える
TINA-TIテキサス・インスツルメンツ無料部品メーカーが提供し、同社の部品の検討に使いやすい
ブラウザで動く学習向けツール各提供元無料のものが多いインストール不要で、回路の動きを直感的に学べる
PSpiceケイデンス・デザイン・システムズ有料(試用版あり)企業の設計現場で使われることが多い商用のSPICE
MultisimNI有料(教育向けあり)教育機関でも使われ、測定器を模した画面で学べる

費用や対応する環境、ライセンスの条件は変更される可能性があります。利用前に、各提供元の公式サイトで最新の情報を確認してください。

無料で使える汎用シミュレーションソフト

無料で使えるソフトの中にも、実務で十分に使われているものがあります。特にLTspiceは、学習から実務まで幅広く使われている代表的なソフトです。

LTspice

半導体メーカーのアナログ・デバイセズ社が無料で提供しているソフトです。動作が軽く、電源回路やアナログ回路の解析で多くのエンジニアに使われています。情報や使い方の解説が豊富なため、初めての一本として選ばれやすいソフトです。

QSPICE

電子部品メーカーのQorvo社が無料で提供している、比較的新しいSPICE系のソフトです。高速な計算や、プログラムを使った柔軟な部品の表現などを特徴としています。新しいソフトのため、解説情報は今後増えていくと考えられます。

ngspice

オープンソース(設計図にあたるプログラムが公開されている仕組み)として開発されているSPICEです。単体で使えるほか、基板設計ソフトなどに計算の仕組みとして組み込まれることもあります。文字で回路を記述する使い方にも向いています。

KiCad

回路図の作成から基板設計までできる無料のソフトで、回路図上でシミュレーションを行う機能も備えています。回路の確認から基板づくりまでを一つのソフトで進めたい場合に便利です。

部品メーカー提供・学習向けのソフト

部品メーカーが提供するソフトや、学習向けのツールは、目的を絞って使うと効果的です。特定のメーカーの部品を検討する場合や、回路の基礎を学ぶ段階で役立ちます。

TINA-TI

部品メーカーのテキサス・インスツルメンツ社が無料で提供しているソフトです。同社の部品のモデルが用意されており、その部品を使った回路の検討に使いやすいのが特徴です。部品メーカー各社も、自社製品向けの設計支援ツールを提供していることがあります。

ブラウザで動く学習向けツール

インストール不要で、ブラウザ上で回路を組み、電流の流れを動きで確認できるツールもあります。回路の基礎を直感的に理解したい学生や初心者に向いています。ただし、実務で求められる詳しい解析には向かない場合があります。

商用・専門分野向けのソフト

企業の設計現場や専門分野では、商用のソフトが使われることも多くあります。商用ソフトは、部品のモデルの充実度や、他の設計ツールとの連携に強みがあります。

PSpice

電子設計ツールの大手であるケイデンス・デザイン・システムズ社が提供する商用のSPICEです。同社の回路図作成ツールなどと連携して使われることが多く、企業の設計現場で見かける機会があります。機能を限定した試用版も提供されています。

Multisim

計測機器などを手がけるNI社が提供するソフトです。測定器を模した画面で回路の動きを確認できるため、教育機関でも使われています。教育向けの版も用意されています。

高周波・半導体設計などの専門ツール

高周波回路の設計では、電波の広がり方などを計算する電磁界解析のツールが使われます。また、半導体チップの設計では、大規模な回路を扱える専用のシミュレーションツールが使われます。これらは専門性が高く、主に企業で導入されている商用ツールです。

回路シミュレーションソフトを使う3つのメリット

回路シミュレーションソフトを使えるようになると、学習と設計の両面で大きなメリットがあります。特に「試作の前に問題に気づける」ことは、実務で高く評価される力です。

1. 試作の前に問題に気づける

回路を組む前に動作を確認できるため、設計の誤りに早く気づけます。試作の回数を減らせることは、開発の時間と費用の削減につながります。

2. 部品の値を変えた影響を比較できる

抵抗やコンデンサの値を変えたときに、回路の動きがどう変わるかを簡単に比較できます。実機では手間のかかる検討も、パソコン上で効率よく進められます。

3. 回路の理解が深まる

理論で計算した結果と、シミュレーションの結果を比べることで、回路の動きを感覚的に理解できるようになります。測定器では見えにくい内部の電流なども確認できます。

レベル別・目的別のおすすめ

回路シミュレーションソフトは、自分のレベルと目的に合わせて選ぶことが大切です。迷ったら、まずは無料で情報の多いLTspiceから始めるのがおすすめです。

レベル・目的おすすめのソフト選ぶ理由
回路を学び始めた初心者ブラウザで動く学習向けツール、LTspice直感的に学べ、無料で始められる
電源・アナログ回路の実務LTspice、QSPICE解析が軽く、実務で使われる場面が多い
回路図から基板まで一貫して作りたいKiCad回路の確認と基板設計を一つのソフトで進められる
特定の部品メーカーの部品を検討したいTINA-TIなど部品メーカー提供のツール部品のモデルが用意されている
企業の設計現場に合わせたいPSpiceなどの商用ソフト他の設計ツールとの連携や、社内の標準に合わせやすい
高周波・半導体設計専門分野の商用ツール専門的な解析に対応している

転職を見据えて学ぶ場合は、応募したい企業の求人票で、使われているツールを確認しておくとよいでしょう。ツールが異なっても、回路の考え方やシミュレーションの基本は共通しているため、一つのソフトを使いこなした経験は他のソフトにも活かせます。

回路設計の学び方や、ツール選びに迷っている方に向けて、職種研究やスキル選びに役立つ情報をLINEで配信しています。気軽に情報収集にご活用ください。

公式LINEを追加する

回路シミュレーションのスキルと年収・キャリア

回路シミュレーションのスキルは、回路設計やハードウェア開発の仕事で役立つ実践的な力です。ソフトを使えることそのものより、シミュレーションを使って設計の判断をした経験が評価につながります。

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)

求人を見ていると、回路設計やハードウェア開発の求人で、SPICE系のシミュレーションソフトの使用経験が「歓迎条件」として挙げられるケースが見られます。私たちの相談現場では、「回路設計の仕事に就きたいが、今の職場では評価や修理が中心で、シミュレーションを使う機会がない」という声を聞きます。

ここで大切なのは、スキルが伸びない原因が自分の学習量にあるのか、設計に関わる機会のない環境にあるのかを切り分けることです。 学習の問題であれば、無料のソフトで自主的に回路を検討する経験を積めます。環境の問題であれば、設計から関われる職場へ移ることも選択肢になります。

選考では、シミュレーションを使った検討を具体的に伝えると評価の材料になります。たとえば「電源回路の部品の値をシミュレーションで比較し、出力の変動を○割抑える条件を見つけた」のように、目的と結果を数字で示しましょう。

回路設計のキャリアを、一人で悩まずに

経験豊富なアドバイザーが、これまでのキャリアを丁寧にヒアリングします。今の悩みの相談だけでもかまいません。
無料で相談する

効率的な学び方のポイント

回路シミュレーションソフトは、使いながら覚えるのが一番の近道です。簡単な回路から始め、理論の計算とシミュレーションの結果を比べる習慣をつけることが大切です。

学び方のポイントは次のとおりです。

  1. 無料のソフトを一つ選び、インストールして簡単な回路を動かしてみる
  2. 抵抗とコンデンサの回路で、時間の変化と周波数の特性を確認する
  3. 教科書に載っている回路を再現し、理論の計算結果と比べる
  4. 部品の値を変えて結果を比較し、回路の感覚を身につける
  5. 作った回路と検討の結果を、ポートフォリオとして整理する

学習の進み具合は、次の項目で確認できます。

□ 回路図を描き、シミュレーションを実行できる
□ 時間の変化と周波数の特性を確認する解析を使い分けられる
□ 部品メーカーが提供するモデルを読み込める
□ シミュレーションの結果と理論の計算結果を比べられる
□ 検討の目的と結果を、他の人に説明できる

当てはまる項目が増えるほど、実務でシミュレーションを使う準備が整っていると考えられます。

回路設計への一歩を、一緒に考えます

市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
無料で相談する

まとめ

・回路シミュレーションソフトは必須ではないが、使えると学習の効率と設計の質が上がる
・学習や電源・アナログ回路の検討なら、LTspiceなど無料のSPICE系ソフトで十分に始められる
・高周波や半導体設計などの専門分野では、商用の専用ツールが使われることが多い
・スキルが伸びないときは、学習量の問題か、設計に関わる機会のない環境の問題かを切り分ける
・ソフトの操作より、シミュレーションで設計を判断した経験が評価につながる

よくある質問

無料の回路シミュレーションソフトでも実務で使えますか?

使えます。LTspiceなどの無料ソフトは、企業の設計現場でも電源回路やアナログ回路の検討に使われています。ただし、企業によっては社内の標準として商用ソフトを使っている場合もあります。どのソフトでも回路の考え方は共通しているため、無料のソフトで身につけた経験は活かせます。

初心者はどのソフトから始めればよいですか?

まずは、無料で情報の多いLTspiceから始めるのがおすすめです。回路の動きを直感的に理解したい場合は、ブラウザで動く学習向けのツールで基礎を学んでから、LTspiceに進む方法もあります。一つのソフトで基本の操作を身につけることを優先しましょう。

Macでも使える回路シミュレーションソフトはありますか?

LTspiceやKiCadなど、macOSに対応しているソフトがあります。ブラウザで動く学習向けのツールも、パソコンの種類を問わず使えます。ただし、ソフトによってはWindowsのみの対応の場合もあるため、利用前に公式サイトで対応環境を確認してください。

LTspiceとKiCadはどう違いますか?

LTspiceは、回路の動作をシミュレーションで確認することに特化したソフトです。KiCadは、回路図から基板を設計するソフトで、シミュレーションの機能も備えています。回路の動作を詳しく検討するならLTspice、基板づくりまで一貫して進めたいならKiCadが向いています。

回路シミュレーションの経験は転職で評価されますか?

回路設計やハードウェア開発の求人では、シミュレーションソフトの使用経験が歓迎条件として挙げられることがあります。ただし、ソフトを使えることだけでなく、何を目的に検討し、どんな結果を得たかを具体的に伝えることが大切です。数字を交えて説明すると評価されやすくなります。

商用ソフトは個人でも使えますか?

商用ソフトの多くは企業向けの価格設定ですが、機能を限定した試用版や、学生・教育向けの版が提供されている場合があります。提供の条件はソフトによって異なるため、各提供元の公式サイトで最新の情報を確認してください。

回路設計の学び方やキャリアについて、まずは情報を集めながら考えたいという方もいるのではないでしょうか。回路設計を含む機電系職種の研究に役立つ情報を、LINEでお届けしています。

公式LINEを追加する

この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部

主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。

この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大

立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。