内定の連絡とともに書類が届き、「労働条件通知書と雇用契約書は何が違うのか」「片方しかもらっていないけれど大丈夫か」と気になって調べている方も多いのではないでしょうか。
最大の違いは、労働条件通知書は会社が労働条件を一方的に知らせる書面で交付が義務とされるのに対し、雇用契約書は会社と働く人の双方が合意したことを示す書面で、法律上の作成義務はないとされる点です。 実務では、2つを1枚にまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」が使われることも多くあります。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、2つの書類の違いを5つの観点で比較し、転職前に確認したいポイントや、内容に疑問があるときの対処法を解説します。
結論:違いを一言で
労働条件通知書は「会社からのお知らせ」、雇用契約書は「お互いの約束の証拠」です。転職者にとって大切なのは書類の名前ではなく、入社前に労働条件が書面で示され、その内容を自分で確認できているかどうかです。
・労働条件通知書:会社が労働条件を明示するための書面。交付が義務とされる
・雇用契約書:双方の合意を示す書面。作成は義務ではないとされる
・署名・押印:通知書は不要、契約書は双方が行うのが一般的
・兼用:1枚にまとめた書面でも、必要な事項が書かれていれば問題ないとされる
・確認の時期:内定承諾の前に内容を確認しておくのが望ましい
なお、私たちはキャリアの専門家であり、法律の専門家ではありません。本記事の法令に関する説明は一般的な内容です。個別の判断が必要な場合は、労働基準監督署や弁護士、社会保険労務士などの専門窓口にご相談ください。
労働条件通知書と雇用契約書の違い【比較表】
2つの書類の違いを、5つの観点で整理しました。まずは全体像をつかんでから、各項目の詳細を確認してください。
| 観点 | 労働条件通知書 | 雇用契約書 |
| 目的・役割 | 会社が労働条件を知らせる | 双方が合意したことを証明する |
| 法的な義務 | 交付が義務とされる | 作成の義務はないとされる |
| 署名・押印 | 不要 | 双方が行うのが一般的 |
| 記載内容 | 法律で定められた事項を記載 | 合意した内容を記載(定めはないとされる) |
| 受け取る時期 | 労働契約を結ぶとき(内定後〜入社前) | 労働契約を結ぶとき(内定後〜入社前) |
①目的・役割の違い
2つの書類は、誰が何のために作るかが異なります。労働条件通知書は「伝える」ための書類、雇用契約書は「約束を確かめる」ための書類です。
労働条件通知書は、会社が働く人に対して、給与や勤務時間などの条件をはっきり示すためのものです。入社後に「聞いていた条件と違う」というトラブルを防ぐ役割があります。
一方で雇用契約書は、会社と働く人がその条件に合意したことを、双方が書面で確認するためのものです。署名や押印をすることで、合意した事実が記録として残ります。
②法的な義務の違い
労働条件通知書は、労働基準法で会社に明示が義務づけられているとされます。一方で雇用契約書は、法律上の作成義務はないとされ、労働契約自体は口頭の合意でも成立すると考えられています。
労働条件の明示を怠った場合、会社は罰則の対象となるとされます。また、明示された条件が事実と異なる場合、働く人は契約をすぐに解除できるとされています。
ただし、実際のケースでどう扱われるかは、状況によって異なります。私たちはキャリアの専門家であり、法律の専門家ではないため、具体的な判断が必要な場合は労働基準監督署や弁護士にご相談ください。
③署名・押印の有無の違い
労働条件通知書は会社から一方的に交付する書面のため、働く人の署名や押印は不要です。雇用契約書は双方の合意を示すため、会社と働く人の双方が署名・押印するのが一般的です。
2つを兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」の場合は、働く人も署名・押印する形式になっています。署名する前に内容をよく確認し、疑問があればその場で質問しましょう。
また、労働条件通知書は、働く人が希望した場合にメールなどの電子データで受け取ることもできるとされています。電子データで受け取った場合も、印刷や保存をして手元に残しておくと安心です。
④記載内容の違い
労働条件通知書には、法律で書面による明示が必要とされる事項が記載されます。雇用契約書の記載内容に法律上の定めはないとされますが、兼用の書面であれば同じ事項が含まれます。
書面で明示が必要とされる主な事項
| 項目 | 主な内容 |
| 契約の期間 | 期間の定めの有無、有期の場合は更新の基準 |
| 就業の場所・業務の内容 | 入社直後の場所と業務、将来の変更の範囲 |
| 労働時間 | 始業・終業時刻、残業の有無、休憩、休日、休暇 |
| 賃金 | 決定・計算・支払いの方法、締め日と支払日 |
| 退職 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
2024年4月からは、就業場所と業務内容について「将来変更される可能性のある範囲」の明示も必要になったとされます。有期契約の場合は、更新の上限なども明示の対象になったとされています。
賞与や退職金、手当などは、制度がある場合に明示が必要な事項とされます。気になる項目が書かれていない場合は、会社に確認しておきましょう。
⑤受け取る時期の違い
どちらの書類も、労働契約を結ぶタイミングで受け取るのが基本とされます。転職の場合は、内定の連絡後から入社日までの間に届くことが一般的です。
ただし、企業によっては入社日当日に渡されるケースもあります。内定を承諾する前に条件を確認したい場合は、労働条件通知書、または条件をまとめた書面を事前に送ってもらえるよう依頼することをおすすめします。 依頼すること自体は失礼にあたらず、むしろ慎重に判断しようとする姿勢として受け止められることが多い傾向があります。
内定条件の確認、一人で不安な方へ
経験豊富なアドバイザーが、これまでのキャリアを丁寧にヒアリングします。条件面の確認や企業とのやり取りも含めて、まずは話を聞いてみたいという方も歓迎です。
どちらを重視すべき?転職者が確認したいポイント
書類の名前よりも、記載された中身を確認することが重要です。特にエンジニアの転職では、次の項目で求人票や面接の説明との食い違いが起きやすい傾向があります。
相談の現場では、「内定後に届いた書面を見て、年収に固定残業代が含まれていると初めて知った」という声を聞くことがあります。また、「就業場所が『会社の指定する場所』となっていて、客先常駐にならないか不安」という相談も少なくありません。
受け取った書面は、次のチェックリストで確認してみましょう。
□ 年収・月給の内訳(基本給、手当)が書かれているか
□ 固定残業代(みなし残業代)がある場合、時間数と金額、超過分の支払いが書かれているか
□ 賞与の有無と、支給の考え方が書かれているか
□ 就業場所に、客先常駐や転勤の可能性が含まれていないか
□ 業務内容と、将来の変更の範囲が面接での説明と合っているか
□ リモート勤務の可否や条件が確認できるか
□ 試用期間の有無と、その間の条件が書かれているか
□ 裁量労働制や年俸制など、特別な働き方の記載がないか
書面で条件を確認しておくことには、もう一つの意味があります。入社後に不満を感じたとき、その原因が仕事内容そのものにあるのか、事前に確認しきれなかった労働条件や環境にあるのかを切り分けやすくなるのです。
条件の見方や転職時の注意点は、ほかの方の事例を知ると判断しやすくなります。求人の傾向や転職事例をLINEでもお届けしていますので、気軽に情報を受け取ってみてください。
内容が求人票と違う・書面がもらえないときの対処法
受け取った書面の内容が求人票や面接での説明と違う場合でも、慌てる必要はありません。まずは落ち着いて事実を確認し、内定を承諾する前に解消しておくことが大切です。
・食い違いを具体的に整理する: 求人票や面接メモと見比べ、どの項目がどう違うかを書き出します
・採用担当者に書面やメールで確認する: 口頭だけでなく、やり取りの記録が残る方法で問い合わせます
・書面の交付を依頼する: 条件が口頭でしか伝えられていない場合は、書面での明示をお願いします
・納得できない場合は承諾を保留する: 疑問が解消しないまま署名・承諾しないようにします
・専門窓口に相談する: 法的な判断が必要な場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナー、弁護士、社会保険労務士に相談します
私たちはキャリアの専門家であり、法律の専門家ではありません。違法性の判断や会社との交渉が必要な場合は、必ず上記の専門窓口にご相談ください。
転職エージェントを利用している場合は、条件の確認や企業への問い合わせを担当者に任せることもできます。直接は聞きにくい年収の内訳や働き方の条件も、確認を依頼しやすくなります。
内定条件に迷ったら、承諾の前に相談を
今の悩みの相談だけでもかまいません。市場価値を客観的に評価したうえで、条件面も含めて納得のいく選択肢を一緒に考えます。
まとめ
・労働条件通知書は会社が条件を知らせる書面で、交付が義務とされる
・雇用契約書は双方の合意を示す書面で、作成の義務はないとされる
・2つを1枚にまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」も一般的に使われる
・書類の名前より、年収の内訳や就業場所などの中身を確認することが重要
・内容に疑問があれば内定承諾の前に確認し、法的な判断は専門窓口に相談する
よくある質問
雇用契約書がなく、労働条件通知書だけでも問題ありませんか?
一般的には問題ないとされます。雇用契約書は法律上の作成義務がないとされ、労働条件通知書で条件が明示されていれば足りると考えられています。ただし、合意の記録を残したい場合は、内容を確認したうえで会社に相談してみるとよいでしょう。
労働条件通知書をもらえない場合はどうすればいいですか?
まずは採用担当者に、書面での交付を依頼しましょう。労働条件の明示は会社の義務とされています。依頼しても交付されない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーなどの専門窓口に相談することをおすすめします。
労働条件通知書はいつもらえますか?
労働契約を結ぶタイミングで交付されるのが基本とされ、転職では内定後から入社日までに受け取るのが一般的です。企業によっては入社日に渡される場合もあるため、承諾前に確認したい場合は事前の送付を依頼しましょう。
労働条件通知書兼雇用契約書とは何ですか?
2つの書類を1枚にまとめた書面です。法律で明示が必要とされる事項が記載され、働く人も署名・押印する形式になっています。署名した時点で合意したことになるため、内容をよく確認してから署名しましょう。
内定承諾の前に条件の書面を求めても大丈夫ですか?
問題ありません。条件を確認してから判断したいという姿勢は、慎重に考えている表れとして受け止められることが多い傾向があります。伝え方に迷う場合は、「条件を正確に理解したうえで承諾したい」と率直に伝えると角が立ちにくくなります。
労働条件通知書の内容が実際と違った場合はどうなりますか?
明示された条件が事実と異なる場合、働く人は契約をすぐに解除できるとされています。ただし、個別の状況によって判断は異なります。私たちは法律の専門家ではないため、具体的な対応は労働基準監督署や弁護士などの専門窓口にご相談ください。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

人材紹介事業部 事業統括責任者 堀 凌也
関西学院大学卒業後、新卒で当社入社。入社直後よりリクルーティングアドバイザーとしてトップクラスの成績を収め、組織内最年少で拠点責任者に抜擢。
現在は求職者への価値提供と企業の採用課題解決を両立する事業統括責任者として、組織の急成長と人材育成を牽引。
