製造業の工場では、さまざまな機械や設備が稼働しています。生産ラインを止めないためには、設備を定期的に点検し、故障を防ぎ、トラブルが起きた場合には復旧させなければなりません。
その役割を担うのが「設備保全」です。
設備保全とは、工場などで使用される機械・設備を点検・修理・管理し、安定して稼働できる状態を維持する仕事です。単に壊れた設備を直すだけではなく、故障を未然に防ぐための点検やメンテナンス、設備改善まで担当する場合があります。
この記事では、設備保全の仕事内容から必要な資格、向いている人、キャリアまで詳しく解説します。
設備保全とは?工場の設備を正常に稼働させる仕事
設備保全とは、工場などに設置された機械・設備を点検し、故障やトラブルを防ぎながら正常な状態を維持する仕事です。
対象となる設備は、製造ラインの機械だけではありません。工場によっては、電気設備、空調設備、ボイラー、コンプレッサー、搬送設備、産業用ロボットなど、幅広い設備を担当します。
厚生労働省のjob tagでも、「工場設備保全員」「機械保全工」「プラント保全工」などが設備管理・保全に関連する職業として紹介されています。
設備保全と設備管理の違い
設備保全と設備管理は、求人によって業務範囲が重なるため、明確に分けられないケースもあります。
一般的には、設備保全は「設備を正常な状態に維持・修復する」という現場作業の比重が高く、設備管理は設備全体の運用計画や予算、業者管理などを含む場合があります。
ただし、企業によって呼び方や担当範囲は異なります。転職する際は職種名だけで判断せず、求人票の仕事内容を確認することが重要です。
| 項目 | 設備保全 | 設備管理 |
| 主な役割 | 設備の維持・修理 | 設備全体の管理 |
| 点検 | ○ | ○ |
| 修理・復旧 | ○ | △ |
| 業者との調整 | ○ | ○ |
| 改善計画 | ○ | ○ |
| 予算管理 | △ | ○ |
設備保全の仕事内容7つ
設備保全の仕事は、点検だけではありません。代表的な業務を7つに分けると、以下のようになります。
| 仕事内容 | 主な内容 |
| 定期点検 | 設備の状態を確認する |
| メンテナンス | 注油・清掃・部品交換など |
| 故障対応 | トラブルの原因を調査して復旧する |
| 修理 | 故障した部品や機械を修理する |
| 設備改善 | 故障や停止を減らす改善を行う |
| 部品管理 | 修理用部品や工具などを管理する |
| 記録・報告 | 点検結果や修理内容を記録する |
厚生労働省のjob tagでは、設備保全に関連する職業について、定期点検、メンテナンス、ライン停止からの復旧、清掃、部品交換、突発的なトラブル対応、修理用備品の管理などが業務として挙げられています。
1.設備の定期点検
設備保全の基本となる仕事が定期点検です。
設備を実際に動かしながら異音や振動、温度などを確認したり、部品の摩耗や劣化を確認したりします。
目視だけでなく、測定機器などを使用して設備の状態を確認することもあります。
異常を早期に発見できれば、大規模な故障や生産ラインの長時間停止を防ぎやすくなります。
2.メンテナンス
設備の状態を維持するため、定期的なメンテナンスも行います。
代表例として、機械への注油、清掃、部品交換、調整などがあります。
設備によって必要なメンテナンスの内容や頻度は異なるため、担当設備について構造や仕組みを理解することが重要です。
3.故障・トラブルへの対応
設備が突然停止した場合、原因を調査して復旧させます。
例えば、モーターが動かない、センサーが反応しない、搬送装置が停止するといったトラブルです。
原因を特定するためには、設備の構造を理解したうえで、電気系統や機械部品などを一つずつ確認する必要があります。
4.設備の修理
故障した設備や部品を修理することも、設備保全の重要な仕事です。
自社で対応できる修理は設備保全担当者が行い、大規模な修理や専門的な対応が必要な場合はメーカーなどに依頼するケースもあります。
そのため、設備保全には「自分で直す力」だけでなく、「どこまで自社で対応できるかを判断する力」も求められます。
5.設備改善
設備保全は、壊れた設備を直すだけの仕事ではありません。
「なぜ故障したのか」「同じトラブルを繰り返さないためにはどうするか」を考え、設備の改善につなげることもあります。
例えば、部品の交換周期を変更したり、設備の構造を改善したり、点検方法を見直したりすることがあります。
修理だけで終わらず、故障を減らすところまで考えることが設備保全の重要な役割です。
6.部品・工具の管理
設備を修理するために必要な部品や工具の管理も業務の一つです。
必要な部品が不足していると、故障が発生してもすぐに復旧できません。
そのため、交換部品の在庫を確認し、必要に応じて発注するなどの管理業務も行います。
7.点検結果や修理内容の記録
点検・修理を行った後は、その内容を記録します。
「どの設備で」「どのような異常があり」「どのような対応をしたのか」を残しておくことで、今後の故障対応や設備改善に活用できます。
設備保全では、現場作業だけでなく記録や報告も重要な業務です。
設備保全は4種類に分けられる
設備保全は、設備を維持する方法によっていくつかの考え方に分けられます。
代表的なのが「予防保全」「事後保全」「予知保全」です。
| 保全方法 | 内容 | 目的 |
| 予防保全 | 故障する前に点検・交換する | 故障を防ぐ |
| 事後保全 | 故障してから修理する | 設備を復旧する |
| 予知保全 | 状態を監視して故障を予測する | 最適な時期に対応する |
| 改良保全 | 設備そのものを改善する | 故障しにくくする |
予防保全
予防保全は、設備が故障する前に点検や部品交換を行う方法です。
例えば「一定期間ごとに部品を交換する」「定期的に設備を点検する」といった方法があります。
計画的に保全できるため、突然の設備停止を防ぐことにつながります。
事後保全
事後保全は、設備が故障した後に修理する方法です。
突発的なトラブルへの対応が中心となるため、設備保全担当者には原因を素早く特定して復旧する能力が求められます。
予知保全
予知保全は、設備の状態を監視し、故障する兆候を把握してからメンテナンスする方法です。
センサーやデータなどを活用するケースもあり、設備の状態を把握しながら適切なタイミングで保全を行います。
改良保全
改良保全は、設備そのものを改善して故障やトラブルを減らす考え方です。
繰り返し発生する故障の原因を分析し、部品や構造を変更するなどして再発を防ぎます。
設備保全に必要なスキルとは?
設備保全では、機械や電気に関する知識だけでなく、トラブルの原因を考える力や周囲と連携する力も重要です。
特に重要なスキルは以下の5つです。
- 機械に関する基礎知識
- 電気・制御に関する知識
- 原因を特定する問題解決力
- 設備の状態を正確に確認する力
- 現場と連携するコミュニケーション力
設備保全は一人で完結する仕事とは限りません。
製造担当者から設備の異常について報告を受けたり、設備メーカーや外部業者に修理を依頼したりすることもあります。
そのため、技術力と同時に「状況を正確に伝える力」も必要です。
設備保全に資格は必要?
設備保全は、必ず資格がなければ就けない仕事ではありません。
厚生労働省のjob tagでも、関連する設備管理・保全職について、入職時に特定の学歴や資格が必須とはされていない職種があります。
一方で、資格を取得することで専門知識を身につけたり、技能を証明したりすることにつながります。
代表的な資格としては「機械保全技能士」があります。
機械保全技能士
機械保全技能士は、設備の保全に関する技能を証明する国家検定制度の技能検定です。
厚生労働省のjob tagでも、設備管理・保全に関連する職種の資格として特級・1級・2級の機械保全技能士が紹介されています。
ただし、企業によって求められる資格は異なります。
設備保全への転職を考える場合は、「資格を取ってから転職する」と固定せず、希望する求人でどの資格・経験が評価されるのかを確認することが大切です。
設備保全に向いている人の特徴
設備保全では、次のような人が仕事との相性を考えやすいでしょう。
| 特徴 | 理由 |
| 機械を触るのが好き | 点検・修理で機械に触れる機会が多い |
| 原因を考えるのが好き | 故障原因の特定が必要 |
| 細かい変化に気づける | 異常の早期発見につながる |
| コツコツ作業できる | 定期点検や記録を継続する必要がある |
| 冷静に対応できる | 突発的なトラブルへの対応がある |
| 周囲と協力できる | 製造部門やメーカーとの連携が必要 |
| 新しい知識を学べる | 設備や制御技術の変化に対応する必要がある |
特に重要なのは、機械が好きというだけではなく、「なぜこの設備はこう動くのか」と仕組みを考える姿勢です。
設備保全では、異常が発生したときに原因を一つずつ切り分ける必要があります。
そのため、問題が起きたときに感覚だけで対応するのではなく、状況を整理して原因を探れる人は、仕事の中でスキルを伸ばしやすいでしょう。
設備保全への転職を考えている方へ
設備保全は、同じ職種名でも「担当設備」「仕事内容」「勤務形態」によって働き方が大きく変わります。
求人票だけでは判断しにくい場合は、経験してきた設備や業務内容を整理したうえで、自分の経験を活かせる求人を比較することが重要です。
設備保全の働き方は会社によって異なる
設備保全の仕事内容を調べる際に注意したいのが、同じ「設備保全」という職種名でも働き方が大きく異なることです。
例えば、工場の生産設備を担当する場合もあれば、物流倉庫の搬送設備、産業用ロボット、プラント設備などを担当する場合があります。
また、勤務形態も企業や設備によって異なります。
24時間稼働する工場では交替勤務や夜勤が発生する場合があります。一方、日勤中心の設備保全求人もあります。
「設備保全だから夜勤」「設備保全だから土日休み」と決めつけず、求人ごとの勤務条件を確認しましょう。
実際に厚生労働省のjob tagでも、設備保全に関連する職種について、交替制や深夜勤務があるケースが紹介されています。
設備保全のキャリアパス
設備保全として経験を積むと、担当できる設備や業務の幅を広げていくことができます。
例えば、以下のようなキャリアが考えられます。
| キャリア | 主な業務 |
| 設備保全担当 | 点検・修理・メンテナンス |
| 熟練保全担当 | 難易度の高い故障対応・改善 |
| 設備改善担当 | 設備改善・予防保全など |
| 設備管理・保全リーダー | チーム管理・計画策定 |
| 生産技術 | 生産ラインや設備の改善・導入 |
| 設備エンジニア | 設備の設計・導入・管理 |
設備保全で身につけた機械・電気・制御の知識は、設備改善や生産技術など、隣接する職種でも活かせる可能性があります。
ただし、キャリアの広がりは企業の組織構造や担当範囲によって異なります。
転職を考える場合は、「設備保全として何年働くか」だけでなく、「将来的にどの技術領域まで経験できるか」を求人選びの基準にするとよいでしょう。
データで見る設備保全の仕事
設備保全は、製造現場の安定稼働を支える仕事です。
厚生労働省のjob tagでは、関連する職業について、設備・装置の定期点検、機械のメンテナンス、ライン停止の復旧、部品交換、突発的なトラブル対応、故障原因の検討などが具体的なタスクとして掲載されています。
また、設備保全に関連する職種の中には、設備の状態確認だけでなく、性能向上や現場改善の提案まで担当する仕事もあります。
このことからも、設備保全は「壊れた機械を直すだけの仕事」ではなく、設備を安定稼働させ、さらに改善していく仕事と捉えることができます。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)/物流設備管理・保全」
設備保全への転職で確認したい3つのポイント
設備保全への転職を考える場合、職種名だけではなく次の3点を確認しましょう。
1.担当する設備
「設備保全」という名称でも、担当設備は企業によって異なります。
機械設備が中心なのか、電気設備なのか、産業用ロボットなのかを確認しましょう。
2.故障対応の範囲
「点検中心」なのか「修理まで担当する」のかによって、必要なスキルや仕事の負担は変わります。
求人票では「保全」とだけ書かれている場合もあるため、面接などで具体的な業務範囲を確認することをおすすめします。
3.勤務形態
工場の稼働時間によって、日勤・交替勤務・夜勤などが異なります。
特に生活リズムを重視する場合は、勤務時間や休日だけでなく、トラブル発生時の呼び出しや休日対応の有無まで確認しておきましょう。
設備保全への転職を考えている方へ
設備保全は、同じ職種名でも「担当設備」「仕事内容」「勤務形態」によって働き方が大きく変わります。
求人票だけでは判断しにくい場合は、経験してきた設備や業務内容を整理したうえで、自分の経験を活かせる求人を比較することが重要です。
まとめ
設備保全とは、工場などの機械・設備を点検・修理・管理し、安定して稼働できる状態を維持する仕事です。
主な仕事内容は以下の7つです。
- 設備の定期点検
- メンテナンス
- 故障・トラブル対応
- 設備の修理
- 設備改善
- 部品・工具の管理
- 点検結果や修理内容の記録
また、設備保全には予防保全、事後保全、予知保全、改良保全などの考え方があります。
設備保全への転職では、単純に「機械を直す仕事」と考えるのではなく、どの設備を担当し、どこまで業務を任されるのかを確認することが重要です。
機械や電気に関する知識を活かしながら、設備の改善や生産技術などへキャリアを広げられる可能性もあります。
仕事内容を正しく理解したうえで、自分の経験やキャリアの方向性に合う求人を選びましょう。
よくある質問
設備保全とは何ですか?
設備保全とは、工場などで使用される機械や設備を点検・修理・管理し、正常に稼働できる状態を維持する仕事です。
設備保全は未経験でもできますか?
企業によって異なりますが、設備保全に関連する職種の中には、入職時に特定の資格や学歴を必須としていないものもあります。
未経験から目指す場合は、機械・電気に関する基礎知識を身につけるほか、求人の応募条件を確認することが重要です。
設備保全に資格は必要ですか?
必須とは限りません。
代表的な関連資格として機械保全技能士があります。求人によっては資格手当や応募条件が設定されている場合もあるため、志望企業の条件を確認しましょう。
設備保全は夜勤がありますか?
企業によって異なります。
工場が24時間稼働している場合などは交替勤務や夜勤が発生するケースがあります。一方、日勤中心の求人もあります。
設備保全と生産技術は何が違いますか?
設備保全は、既存設備の点検・修理・維持などが中心です。
生産技術は、生産ラインの設計や設備導入、工程改善などを担当するケースが多くあります。ただし、企業によって担当範囲は異なるため、求人票で具体的な業務内容を確認することが重要です。
設備保全から生産技術に転職できますか?
可能性はあります。
設備改善や設備導入などの経験を積むことで、生産技術に関連する経験を得られる場合があります。ただし、企業によって求められる経験やスキルは異なります。
設備保全に向いているのはどんな人ですか?
機械や設備に興味があり、異常の原因を考えることが好きな人は、仕事との相性を検討しやすいでしょう。
また、突発的なトラブルに冷静に対応する力や、製造担当者・メーカーなどと連携するコミュニケーション力も重要です。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。

