「組み込み 開発」と検索したあなたは、実際の開発現場でどのようなツールや環境が使われているのか、気になっているのではないでしょうか。
組み込み開発の現場では、統合開発環境(IDE)やデバッガ、測定器など、複数のツール・環境を組み合わせて使うことが一般的です。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、組み込み開発で使われる8つのツール・環境を紹介し、レベル別の学び方までを詳しく解説します。
組み込み開発にツールの知識は必要?
組み込み開発の現場に入るうえで、すべてのツールを事前に習得している必要はありません。
ただし、どのようなツールが使われているかを事前に把握しておくことで、学習の見通しが立てやすくなり、選考の場面でも具体的な質問ができるようになります。
相談現場でも、「組み込み開発と一口に言っても、使うツールが多岐にわたり、何を優先して学べばいいか分からない」という声を聞くことがあります。
組み込み開発で使うツール・環境【一覧】
| ツール・環境の種類 | 代表的な例 | 主な用途 |
| 統合開発環境(IDE) | Keil、IAR Embedded Workbench、STM32CubeIDEなど | コーディング・ビルド・デバッグを一つの環境で行う |
| コンパイラ・ビルドツール | GCCなど | プログラムを機械語に変換する |
| 実機デバッガ | JTAG・SWD対応デバッガなど | 実機上でプログラムの動作を確認・修正する |
| 測定器(オシロスコープ・ロジックアナライザ) | 各種測定器メーカーの製品 | 電気信号や通信波形を可視化して確認する |
| バージョン管理システム | Gitなど | ソースコードの変更履歴を管理する |
| 静的解析ツール | 各種静的解析ツール | コードの品質・潜在的な不具合を検出する |
| リアルタイムOS(RTOS) | FreeRTOSなど | 複数の処理を時間的制約の中で管理する |
| シミュレータ・エミュレータ | 各種シミュレーションソフト | 実機がない状態でソフトウェアの動作を検証する |
上記はあくまで代表的な例であり、企業によって採用しているツールは異なります。
求人票や選考の過程で、実際に使用しているツールを確認することをおすすめします。
ツール別の個別解説
1. 統合開発環境(IDE)
IDEは、コーディング・ビルド・デバッグといった開発作業を一つの環境で行うためのソフトウェアです。
マイコンメーカーごとに専用のIDEが提供されていることが多く、担当するマイコンの種類によって使用するIDEが変わります。コードの入力補完やビルドエラーの表示など、開発効率を高める機能が搭載されています。
2. コンパイラ・ビルドツール
コンパイラは、C言語などで書かれたソースコードを、マイコンが実行できる機械語に変換するツールです。
IDEに内蔵されている場合もありますが、コマンドラインで独立して使用する場合もあります。ビルド設定(最適化レベルなど)によって、生成されるプログラムのサイズや実行速度が変わるため、設定の意味を理解しておくことも重要です。
3. 実機デバッガ
実機デバッガは、開発したプログラムを実機上で動作させ、変数の値や処理の流れを確認するためのツールです。
JTAGやSWDといった規格に対応したデバッガを使い、マイコンと開発用パソコンを接続して使用します。プログラムを一行ずつ実行しながら動作を確認する「ステップ実行」など、地道な検証作業を支える基本的なツールです。
4. 測定器(オシロスコープ・ロジックアナライザ)
オシロスコープは、電気信号の波形を可視化するための測定器です。ロジックアナライザは、複数のデジタル信号(通信のタイミングなど)を同時に観測するための測定器です。
ソフトウェアだけでは分からない、ハードウェアレベルの不具合の原因調査に使われます。組み込みエンジニアにとって、測定器を使いこなせるかどうかは、実機トラブル対応の実務力を示す要素にもなります。
5. バージョン管理システム
Gitなどのバージョン管理システムは、ソースコードの変更履歴を記録し、複数人での開発を円滑に進めるためのツールです。
組み込み開発でも、チームでの開発が主流になりつつあり、バージョン管理の知識は基本的なスキルとして求められる傾向が強まっています。
6. 静的解析ツール
静的解析ツールは、プログラムを実行せずにソースコードを解析し、潜在的な不具合やコーディング規約違反を検出するツールです。
組み込み開発では、コードの品質が製品の安全性に直結する場合があるため、静的解析による事前チェックが重視される傾向があります。
7. リアルタイムOS(RTOS)
RTOSは、複数の処理を時間的な制約の中で管理するための専用OSです。FreeRTOSなどが広く知られています。
すべての組み込みシステムで使われるわけではありませんが、複雑な処理を扱う製品では採用されることが多く、RTOSの基本的な考え方(タスク管理、優先度制御など)を理解しておくことが役立ちます。
8. シミュレータ・エミュレータ
シミュレータ・エミュレータは、実機がない状態でもソフトウェアの動作を検証できるツールです。ハードウェアの開発と並行してソフトウェア開発を進める場合や、実機の台数が限られている場合に活用されます。すべての動作を実機と完全に同じ形で再現できるわけではない点には留意が必要です。
私たちの求人選考の現場では、特定のツール名を知っているかどうかよりも、「実機デバッグや測定器を使った検証経験があるか」を重視する企業が多いという傾向が見られます。
組み込み開発の仕事、自分に合う環境を探したいなら
経験豊富なアドバイザーが、これまでの経験や興味を丁寧にヒアリングします。まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
主要ツールを知る3つのメリット
1. 転職先を選ぶ際の判断材料になる
求人票や面接で使用ツールを確認する際、ツールの役割を理解していると、業務内容をより具体的にイメージできます。
2. 学習の優先順位をつけやすくなる
数多くあるツールの中で、まず何を学ぶべきかの判断がしやすくなります。基本的なIDEとデバッガの使い方から始め、必要に応じて他のツールへ学習範囲を広げるという計画が立てやすくなります。
3. 実務でのトラブル対応力の土台になる
測定器やデバッガの基本的な使い方を理解しておくことで、実務に入った際のトラブル対応にも早く慣れることができます。
レベル別・目的別のおすすめツール活用法
未経験・学生層
まずは、市販のマイコンボードとIDEを使って、簡単なプログラムを動かす経験から始めるのがおすすめです。実機デバッガの基本的な使い方も、この段階で触れておくと実務への移行がスムーズになります。
実務経験の浅い若手エンジニア
静的解析ツールやバージョン管理システムなど、チーム開発で使われるツールの活用に慣れていくとよいでしょう。
測定器を使った実機の不具合調査にも、積極的に関わる機会を作ることをおすすめします。
キャリアアップ・転職を見据える層
RTOSやシミュレータなど、より複雑な開発環境の経験を積むことで、担当できる業務の幅を広げられます。
特定のツールに詳しいというだけでなく、複数のツールを組み合わせて問題解決に取り組んだ経験を整理しておくと、選考でのアピールにつながります。
組み込み開発の仕事、自分に合う環境を探したいなら
今の経験や興味からどんな環境が合うか気になる方は、一度キャリアを整理してみませんか。市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。
効率的なツール学習のポイント
・最初からすべてのツールを学ぶのではなく、IDEとデバッガの基本操作から始める
・マイコンボードなどを使い、実際に手を動かしてツールの使い方を体験する
・チーム開発を想定し、バージョン管理システムの基本操作は早めに慣れておく
・志望する企業・分野で使われているツールを事前に調べ、学習の優先順位を合わせる
ツールを学んでも実務でうまく活用できないと感じる場合、それが「知識・経験不足」の問題か、「実務で使う機会が少ない環境にいる」という職場環境の問題かを切り分けて考えることが大切です。
前者であれば学習を継続する選択肢がありますが、後者が理由であれば、より幅広い開発工程に携われる環境への転職も選択肢になります。
まとめ
・組み込み開発の現場では、IDE・デバッガ・測定器・バージョン管理・静的解析・RTOS・シミュレータなど、複数のツール・環境が使われる
・ツールを理解しておくことは、転職先選びや学習の優先順位づけ、実務でのトラブル対応力の土台になる
・未経験者はまずIDEとデバッガの基本操作から、経験者はRTOSやシミュレータなどより高度な環境の経験を積むとよい
・特定のツール名の知識よりも、複数のツールを組み合わせて問題解決に取り組んだ経験が評価されやすい傾向がある
・ツールを活かせない場合は、知識不足の問題か環境の問題かを切り分けて考えることが大切
よくある質問
組み込み開発ではどんなツールが使われますか?
統合開発環境(IDE)、コンパイラ、実機デバッガ、測定器、バージョン管理システム、静的解析ツール、リアルタイムOS、シミュレータなどが使われます。
未経験でも組み込み開発のツールは使えるようになりますか?
なれます。まずは市販のマイコンボードとIDEを使って、簡単なプログラムを動かす経験から始めるとよいでしょう。
組み込み開発でよく使われるプログラミング言語は何ですか?
C言語が広く使われており、C++が使われる場合もあります。ツールの多くはこれらの言語での開発を前提に設計されています。
RTOSは必ず学ぶ必要がありますか?
必須ではありません。シンプルな製品ではRTOSを使わない開発(ベアメタル型)も多く行われています。目指す分野によって必要性が変わります。
測定器の使い方は独学で学べますか?
基本的な使い方は独学でも学べますが、実機での不具合調査は実務経験を積む中で身につく部分が大きいとされます。
ツールの知識は転職の選考でどう評価されますか?
特定のツール名を知っているかどうかよりも、実機デバッグや測定器を使った検証経験があるかどうかが評価されやすい傾向があります。
組み込み開発のツールはすべて有料ですか?
無料で使えるツールも多くあります。マイコンメーカーが提供するIDEには無料版が用意されている場合もあるため、学習段階ではまず無料のものから試すとよいでしょう。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。
