「ロボットSIerって、どんな会社?」「ロボットメーカーとは何が違うの?」と検索したあなたは、求人票で「ロボットSIer」という言葉を見かけ、どんな働き方になるのか気になっているのではないでしょうか。自動化への関心が高まる中で注目されている業態ですが、会社によって規模や得意分野が大きく異なり、外からは実態をつかみにくい面があります。
ロボットSIerとは、顧客の工場の課題に合わせて、ロボットや周辺機器を組み合わせた生産設備を設計・製作・導入する会社のことです。 ロボット本体をつくるメーカーとは異なり、「ロボットを使って顧客の課題を解決する設備」をつくることが仕事の中心です。機械・電気・制御の経験を幅広く活かせる一方で、会社ごとの働き方の差が大きいため、転職の前に見極めることが大切です。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、ロボットSIerの意味とメーカーとの違い、仕事の流れ、社内の職種と役割分担、種類、働く魅力と大変さ、年収と将来性、会社の見極め方、転職の進め方を解説します。
ロボットSIerとは
ロボットSIer(エスアイヤー)は、「ロボットシステムインテグレーター」の略称です。システムインテグレーターとは、さまざまな機器や技術を組み合わせて、顧客の目的に合った仕組みをつくる会社を指します。
ロボットSIerは、ロボット、ロボットの先端に付ける道具(ハンド)、搬送装置、センサー、カメラ、制御装置などを組み合わせ、顧客の工場で使える一つの生産設備として完成させます。ロボットは単体では作業ができないため、現場で使える形に仕上げるロボットSIerの存在が、工場の自動化には欠かせません。
ロボットメーカー・商社・ユーザー企業との違い
ロボットに関わる会社は、役割によって大きく4つに分けられます。
| 会社 | 主な役割 | 技術者の主な仕事 |
| ロボットメーカー | ロボット本体を開発・製造する | ロボットの機構、電気、ソフトウェアの開発 |
| ロボットSIer | ロボットを組み込んだ生産設備を顧客ごとに設計・製作・導入する | 設備の構想、設計、組立、ティーチング、立ち上げ |
| 商社 | ロボットや関連機器を販売する | 製品の技術的な説明、導入の支援 |
| ユーザー企業(製造業) | 自社の工場でロボットを使う | 生産技術として導入・運用・改善 |
ロボットメーカーが自社内にロボットSIerの部門を持っている場合や、商社がロボットSIerの機能を持っている場合もあります。産業用ロボットに関わる技術者の仕事内容については、「産業用ロボットエンジニアとは?」の記事で詳しく解説しています。
ロボットSIerのビジネスの流れ
ロボットSIerの仕事は、顧客からの相談に始まり、設備の納品と稼働後の支援まで続きます。
| 段階 | 主な内容 | 社内で中心となる人 |
| 1. 引き合い・ヒアリング | 顧客の課題や自動化したい作業を聞き取る | 営業、技術営業 |
| 2. 構想・見積もり | 設備の配置、作業時間、費用を見積もり、提案する | 技術営業、設計のリーダー |
| 3. 受注・設計 | 機械、電気、制御の設計を行う | 機械設計、電気・制御設計 |
| 4. 製作・社内での確認 | 部品を手配し、組み立てて社内で動作を確認する | 組立・配線、ロボットのプログラム担当 |
| 5. 納品・立ち上げ | 顧客の工場に据え付け、実際の生産で調整する | 立ち上げ担当、プロジェクト管理 |
| 6. 保守・改善 | 稼働後のトラブル対応や改造を行う | サービス担当、設計 |
ロボットSIerの仕事は、ほぼすべてが顧客ごとの「一品もの」であり、同じ設備をつくることはほとんどありません。 この点が、決まった製品を繰り返しつくるメーカーとの大きな違いで、仕事のやりがいにも大変さにもつながっています。
ロボットSIerの職種と役割分担
ロボットSIerには、さまざまな職種があります。会社の規模によって、一人が複数の役割を兼ねる場合と、分業が進んでいる場合があります。
| 職種 | 主な仕事 | 活かせる経験 |
| 営業・技術営業 | 顧客の課題の聞き取り、提案、見積もり | 法人営業、生産技術、設備の知識 |
| 機械設計 | ロボットハンド、架台、搬送装置、安全柵の設計 | 機械設計、治具設計 |
| 電気・制御設計 | 配線、制御盤、PLC(設備を制御する装置)のプログラム | 電気設計、制御設計 |
| ロボットのプログラム担当 | ロボットの動作の作成とティーチング | ロボットの操作、プログラミング |
| 組立・配線 | 設備の組立と電気の配線 | 組立、電気工事、設備保全 |
| 立ち上げ・サービス | 顧客の工場での据付・調整、稼働後の保守 | 設備保全、フィールドエンジニア |
| プロジェクト管理 | 日程、予算、品質の管理と顧客との調整 | 生産技術、プロジェクトの取りまとめ |
小規模な会社では、設計から立ち上げまでを一人の技術者が担当することもあります。幅広い経験を短期間で積める一方で、負担が大きくなりやすい点には注意が必要です。
ロボットSIerの種類
ロボットSIerは、得意な分野や会社の成り立ちによって、いくつかの種類に分けられます。
| 分類 | 種類 | 特徴 |
| 得意な用途 | 溶接・塗装 | 自動車や鉄骨などの業界に強い |
| 得意な用途 | 搬送・積み付け | 物流や食品など、幅広い業界に対応する |
| 得意な用途 | 組立・検査 | 電子部品や精密機器など、高い精度が求められる |
| 得意な業界 | 食品・医薬品 | 衛生や洗浄への対応が求められる |
| 会社の成り立ち | メーカー系 | ロボットや設備のメーカーのグループ会社 |
| 会社の成り立ち | 独立系 | 特定のメーカーに属さず、複数のメーカーのロボットを扱う |
ロボットSIerには中小規模の会社も多く、地域の製造業を支えている会社もあります。得意分野によって扱う技術や働き方が異なるため、自分の経験や興味に合う会社を選ぶことが大切です。
ロボットSIerで働く魅力
ロボットSIerで働く主な魅力は、次のとおりです。
- 顧客の課題を、自分たちが設計した設備で解決する手応えがある
- さまざまな業界の工場に関わり、多くの製品づくりの現場を知ることができる
- 機械・電気・制御・ソフトウェアと、幅広い技術を身につけられる
- 構想から立ち上げまで関わり、設備が完成するまでの全体を経験できる
- 自動化への関心が高まる中で、経験の価値が上がりやすい分野である
エージェント視点で言うと、ロボットSIerでの経験は、その後のキャリアの選択肢を広げやすいと感じます。ロボットSIerで設備の導入を一通り経験した方は、ユーザー企業の生産技術やロボットメーカー、設備メーカーの技術営業など、さまざまな職種への転職で評価されやすい傾向にあります。
ロボットSIerで働く大変さ
一方で、ロボットSIerには次のような大変さもあります。
- 立ち上げの時期は、顧客の工場への出張が続くことがある
- 顧客の工場が休みの期間に作業することが多く、休日がずれることがある
- 一品ものの設備のため、立ち上げの直前に想定外の問題が起きやすい
- 案件の受注状況によって、忙しさに波がある
- 小規模な会社では、一人が多くの役割を担うことになりやすい
これらの大変さは、ロボットSIerという業態の特性による部分と、会社ごとの体制による部分があります。たとえば、出張が多いことはある程度避けにくい一方、特定の人に出張が集中しているかどうかは、会社の体制によって大きく変わります。
年収と将来性
ロボットSIerで働く技術者の年収は、会社の規模、担当する職種、経験年数、役職などによって大きく変わります。ロボットSIerに限った公的な統計は限られているため、信頼できる統計を確認したうえで掲載します。
| 指標 | 金額・数値(目安) |
| 有効求人倍率(職業計) | 1.12倍 |
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
※有効求人倍率1.12倍は全職業の数値で、ロボットSIerの職種に限った数値ではありません。
製造業では人手不足への対応として自動化への関心が高まっており、ロボットを使った設備を構築できるロボットSIerの役割は大きくなっています。一般的には、構想から立ち上げまでを任されたり、プロジェクトをまとめる立場になったりすると、評価や待遇に反映されやすい傾向にあります。
※ここで紹介している傾向は一般的なもので、すべての企業に当てはまるわけではありません。
ロボットSIerについて知るほど、会社ごとの違いが気になってくると思います。機電系の職種研究や、自動化の分野の求人の傾向をLINEで配信していますので、まずは気軽に受け取ってみてください。
ロボットSIer企業の見極め方
ロボットSIerは会社によって働き方の差が大きいため、応募前や面接で次の点を確認しておきましょう。
- □ 得意な用途や業界はどこか(自分の経験や興味と合っているか)
- □ 扱うロボットのメーカーは決まっているか、複数か
- □ 設計・組立・立ち上げの役割は分業されているか、一人が兼任するか
- □ 1人あたりが同時に担当する案件の数
- □ 出張の頻度と期間、出張が特定の人に集中していないか
- □ 休日に作業した場合の代休の取り方
- □ 未経験者や他職種出身者への教育の仕組み
- □ 稼働後の保守は、専門の担当がいるか、設計者が兼ねるか
「業態の特性」と「会社の体制」を切り分ける
ロボットSIerで働くことに不安を感じたときは、その原因が「ロボットSIerという業態の特性」にあるのか、「会社の体制」にあるのかを切り分けることが大切です。
| 不安・不満の内容 | 業態の特性か | 会社の体制の問題か |
| 出張がある | 導入を担う業態として起こりやすい | 特定の人に偏っている、期間が極端に長いなら体制の問題 |
| 立ち上げ直前が忙しい | 一品ものの設備では起こりやすい | 受注が多すぎて日程に余裕がないなら体制の問題 |
| 何でも一人で担当する | 小規模な会社では起こりやすい | 支援や相談の仕組みがまったくないなら体制の問題 |
| 技術が身につかない | ― | 同じ作業だけを任され続けるなら体制の問題 |
ご相談の場では、「ロボットSIerに興味はあるが、出張ばかりで家に帰れないのではと不安」という声をよく聞きます。実際には、出張の頻度や期間は会社や担当する職種によって大きく異なります。設計や社内での組立が中心の職種もあるため、自分が希望する働き方を整理したうえで、面接で具体的に確認することをおすすめします。
ロボットSIerの働き方、会社ごとの違いを知りたい方へ
経験豊富なアドバイザーが、これまでのキャリアを丁寧にヒアリングし、ご希望の働き方に合う会社を一緒に考えます。
「出張の少ないロボットSIerはあるか知りたい」といった相談だけでもかまいません。
ロボットSIerに転職するには
ロボットSIerへの転職では、これまでの経験をどの職種で活かすかを明確にすることが大切です。
| 今の経験 | 目指しやすい職種 | アピールのポイント |
| 機械設計 | 機械設計 | 治具や装置の設計経験、さまざまな部品の設計の幅 |
| 電気設計・制御設計 | 電気・制御設計 | PLCのプログラム、制御盤の設計の経験 |
| 生産技術 | 技術営業、プロジェクト管理 | ユーザー側の視点、設備導入の経験 |
| 設備保全 | 組立・配線、立ち上げ・サービス | 設備のトラブル対応、電気や機械の実務経験 |
| 未経験(機電系の学部・第二新卒) | 組立・配線、設計の補助 | 基礎知識と学ぶ意欲 |
ユーザー企業で生産技術としてロボットの導入に関わった経験は、ロボットSIerで顧客の立場を理解できる強みになります。一方、ロボットSIerからユーザー企業の生産技術へ移る方も多く、両者の間は行き来しやすいキャリアといえます。
経験を数値で伝える
転職の際は、設備や自動化に関わる経験を数値で示すと説得力が増します。
| 項目 | 改善前の書き方 | 改善後の書き方 |
| 設計 | 装置の設計を担当 | 搬送装置と治具を年間10件設計し、すべて納期どおりに出図 |
| 導入 | 自動化設備を導入 | ロボットを使った組立設備を導入し、作業者を4名から1名に削減 |
| 立ち上げ | 現地で立ち上げを担当 | 顧客工場で設備3台の立ち上げを担当し、目標の作業時間を達成 |
| 制御 | PLCのプログラムを作成 | 設備5台分のPLCプログラムを作成し、改造にも対応 |
※数値は記入例です。ご自身の実績に置き換えてお使いください。
ロボットSIerへの転職を、一緒に考えませんか
市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。
まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
まとめ
- ロボットSIerとは、ロボットや周辺機器を組み合わせた生産設備を、顧客ごとに設計・製作・導入する会社です。
- ロボット本体をつくるメーカーとは異なり、ロボットを使って顧客の課題を解決する「一品ものの設備」をつくることが仕事の中心です。
- 社内には、営業・技術営業、機械設計、電気・制御設計、ロボットのプログラム、組立、立ち上げ、プロジェクト管理などの職種があります。
- 幅広い技術と業界に関われる魅力がある一方、出張や立ち上げ直前の忙しさなどの大変さもあります。
- 不安を感じたときは、業態の特性か会社の体制かを切り分け、働き方に合う会社を見極めましょう。
よくある質問
ロボットSIerとロボットメーカーはどちらがよいですか?
一概には言えません。さまざまな業界の工場に関わり、設備を完成させるまでの全体を経験したい方にはロボットSIer、ロボット本体の技術を深く追求したい方にはロボットメーカーが向いている傾向があります。働き方も異なるため、希望する働き方とあわせて考えましょう。
ロボットSIerはきついですか?
出張や立ち上げ直前の忙しさなど、大変な面はあります。ただし、分業の体制や出張の頻度、休日の取り方は会社によって大きく異なります。業態の特性による部分と、会社の体制による部分を分けて考え、面接で具体的に確認することをおすすめします。
ロボットSIerに未経験で入れますか?
入れる可能性はあります。組立や配線、設計の補助など、未経験から始められる職種もあります。機械や電気の基礎を学んでおくと、選考で意欲が伝わりやすくなります。教育の仕組みがある会社を選ぶことも大切です。
ロボットSIerとロボットメーカーはどちらがよいですか?
一概には言えません。さまざまな業界の工場に関わり、設備を完成させるまでの全体を経験したい方にはロボットSIer、ロボット本体の技術を深く追求したい方にはロボットメーカーが向いている傾向があります。働き方も異なるため、希望する働き方とあわせて考えましょう。
ロボットSIerはきついですか?
出張や立ち上げ直前の忙しさなど、大変な面はあります。ただし、分業の体制や出張の頻度、休日の取り方は会社によって大きく異なります。業態の特性による部分と、会社の体制による部分を分けて考え、面接で具体的に確認することをおすすめします。
ロボットSIerに未経験で入れますか?
入れる可能性はあります。組立や配線、設計の補助など、未経験から始められる職種もあります。機械や電気の基礎を学んでおくと、選考で意欲が伝わりやすくなります。教育の仕組みがある会社を選ぶことも大切です。
ロボットSIerに出張はどれくらいありますか?
会社や職種によって大きく異なります。立ち上げやサービスを担当する職種では出張が多くなる傾向があり、設計や社内での組立が中心の職種では比較的少ない場合もあります。出張の頻度や期間、特定の人に偏っていないかを面接で確認しましょう。
ロボットSIerの経験は、その後のキャリアに活かせますか?
活かせます。ロボットを使った設備の構想から立ち上げまでの経験は、ユーザー企業の生産技術、ロボットメーカー、設備メーカーの技術営業などで評価されやすい傾向にあります。担当した案件の数や規模を整理しておくと、次の転職でも強みとして伝えやすくなります。
中小規模のロボットSIerでも大丈夫ですか?
中小規模の会社でも、得意分野を持ち、技術者を大切に育てている会社は多くあります。一方で、一人が多くの役割を兼ねる場合もあるため、分業の体制や教育の仕組み、1人あたりの案件数を確認しておくことが大切です。
ロボットSIerについて知ったうえで、もう少し情報を集めてから考えたい方もいらっしゃると思います。機電系の職種研究や、自動化の分野で環境を変えた方の事例をLINEで配信していますので、気軽に受け取ってみてください。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。

