MATLAB・Simulinkとは?違いやできること、使われる仕事を解説

MATLAB・Simulinkとは?違いやできること、使われる仕事を解説

「MATLAB・Simulinkとは何だろう」「求人でよく見かけるけれど、どんな仕事で使うの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

MATLABは数値計算やデータ解析を行うソフトウェア、SimulinkはMATLAB上でブロック図を使ってシステムを設計・模擬するツールです。自動車や産業機器の制御設計を中心に、モデルベース開発と呼ばれる開発手法で広く使われています。

この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、MATLABとSimulinkの違いやできること、使われる仕事、求められるスキルと学び方を解説します。

MATLAB・Simulinkとは

MATLABとSimulinkは、どちらも米国のMathWorks社が提供するソフトウェアです。MATLABが土台となり、SimulinkはそのMATLAB上で動作します。そのため、Simulinkを使うにはMATLABが必要です。

MATLABとは

MATLABは、数値計算やデータ解析、グラフ作成、計算手順(アルゴリズム)の開発を行うためのソフトウェアです。行列(数値を縦横に並べたもの)の計算を得意としており、専用のプログラミング言語で処理を記述します。

分野ごとの追加機能は「ツールボックス」として提供されています。信号処理や画像処理、制御設計など、目的に応じて機能を追加して使います。

Simulinkとは

Simulinkは、ブロック線図(処理や部品をブロックで表し、線でつないだ図)を使ってシステムをモデル化し、時間の経過に沿った動きを模擬するツールです。プログラムを書くのではなく、ブロックを配置してつなぐ操作で設計を進められます。

例えばモーターの速度制御なら、モーター、センサー、制御器をそれぞれブロックで表します。そのうえで、目標の速度にきちんと追従するかをコンピュータ上で確認できます。

MATLABとSimulinkの違い

両者の違いを整理すると、次のとおりです。

観点MATLABSimulink
位置づけ数値計算の土台となるソフトウェアMATLAB上で動くモデル化・模擬の環境
操作方法プログラムを書いて処理するブロックを配置し、線でつなぐ
得意なことデータ解析、計算、アルゴリズム開発時間とともに変化するシステムの模擬
主な用途実験データの解析、信号処理の検討制御設計、モデルベース開発
単体での利用可能MATLABが必要

実務では、両者を組み合わせて使うのが一般的です。例えば、MATLABで制御の設定値を計算し、Simulinkで動きを模擬し、その結果を再びMATLABで解析するといった使い方をします。

MATLAB・Simulinkでできること

MATLAB・Simulinkは、計算や解析から制御設計、プログラムの自動生成まで幅広く活用できます。主な活用分野は次のとおりです。

分野できること
制御設計モーターやエンジンの制御方法を設計し、動きを検証する
信号処理センサー信号の雑音を取り除き、周波数を解析する
画像処理画像から特徴を取り出し、検査の手順を検討する
データ解析実験データを集計し、統計処理やグラフ化を行う
機械学習データを使って予測モデルを作成する
自動コード生成Simulinkのモデルから組み込み向けのC言語プログラムを生成する

ただし、これらの機能の多くは、目的に応じたツールボックスを追加して使います。職場によって導入されている機能が異なるため、求人を見る際は「どの用途で使っているか」まで確認すると、仕事内容をイメージしやすくなります。

モデルベース開発とSimulinkの役割

Simulinkが特に活躍するのが、モデルベース開発(MBD)です。モデルベース開発とは、コンピュータ上のモデルを使って、設計と検証を早い段階から進める開発手法を指します。

従来の開発との違い

従来の開発では、文書で仕様を決め、手作業でプログラムを書き、試作機で動作を確かめるのが一般的でした。この方法では、不具合が見つかるのが開発の後半になりやすく、手戻りが大きくなる課題がありました。

モデルベース開発では、試作機を作る前にコンピュータ上で動きを確認できるため、問題を早い段階で発見できます。その結果、手戻りや試作の回数を減らしやすくなります。

モデルベース開発の流れ

モデルベース開発は、おおむね次の流れで進みます。

工程内容
要求の整理製品に求められる性能や機能を明確にする
モデル化制御の対象と制御器をSimulinkでモデルにする
模擬による検証コンピュータ上で動作を確認し、設計を改善する
自動コード生成モデルから組み込み向けのプログラムを生成する
実機での検証実際の制御装置で動作を確認する

検証の3段階

モデルベース開発では、検証の段階を次の3つに分けて呼ぶことがあります。

・MILS:モデルだけを使って、コンピュータ上で動作を検証する
・SILS:モデルから生成したプログラムを、コンピュータ上で検証する
・HILS:実際の制御装置を、制御対象を模擬する装置につないで検証する

求人の傾向として、自動車関連の制御設計や組み込み開発では、モデルベース開発の経験を歓迎条件に挙げる例を多く見かけます。車両の電動化や制御の複雑化を背景に、検証の効率化が求められていることが一因と考えられます。

MATLAB・Simulinkが使われる業界・職種

MATLAB・Simulinkは、制御や信号処理が製品の性能を左右する業界で多く使われています。主な業界は次のとおりです。

・自動車:エンジン、モーター、ブレーキ、電池などの制御設計
・航空宇宙:飛行制御や姿勢制御の設計と検証
・産業機器・ロボット:位置決めや動作の制御
・電機・電力:パワーエレクトロニクス(電力を変換・制御する技術)の設計
・大学・研究機関:実験データの解析やアルゴリズムの研究

職種としては、制御設計エンジニア、組み込みエンジニア、信号処理や画像処理のエンジニア、研究開発職、検証・評価エンジニアなどで使われます。同じツールでも、職種によって使う機能や求められる深さは異なります。

相談現場では、「大学の研究でMATLABを使っていたが、仕事で活かせるのか」という声をよく聞きます。研究での使用経験は十分にアピール材料になります。その際は、何のデータを解析し、どんなモデルを作り、どんな結果を得たかを具体的に説明できるよう整理しておきましょう。

MATLAB・Simulinkのメリット・デメリット

MATLAB・Simulinkの大きなメリットは、試作前に設計を検証でき、開発の手戻りを減らせる点です。一方で、費用や習得の面では注意点もあります。

メリットは次のとおりです。

・ブロック線図で設計するため、システムの構造を視覚的に理解しやすい
・分野ごとのツールボックスが豊富で、幅広い用途に対応できる
・試作前に動作を確認でき、手戻りを減らしやすい
・自動コード生成により、手作業によるプログラムのミスを減らせる
・自動車分野などで広く使われており、部署や企業間でモデルを共有しやすい

デメリットや注意点は次のとおりです。

・有償のソフトウェアで、ツールボックスを追加すると費用も増える
・モデルが実物の特性と合っていないと、模擬の結果も誤ったものになる
・大規模なモデルは構造が複雑になり、管理や変更が難しくなる
・データ解析や機械学習の分野では、Pythonなど他の言語が選ばれる場面もある

特に重要なのは、モデルの精度です。模擬はあくまでモデルに基づく結果のため、実機での測定と比較しながらモデルを改善していく姿勢が求められます。

MATLAB・Simulinkを使う仕事で求められるスキル・知識

MATLAB・Simulinkを使う仕事では、ツールの操作よりも、その背景にある理論と対象製品の理解が重視される傾向があります。主なスキル・知識は次のとおりです。

・制御工学:フィードバック制御や伝達関数(入力と出力の関係を数式で表したもの)の理解
・数学・物理:微分方程式、線形代数、力学、電気回路の基礎
・MATLABのプログラミング:計算やデータ解析の処理を記述する力
・C言語と組み込みの知識:自動生成されたプログラムを読み、実機で確認する力
・対象製品の知識:エンジン、モーター、電池など、制御する対象の特性の理解

ツールを操作できることより、「なぜその制御方法を選んだのか」を説明できることが評価につながります。選考でも、作ったモデルの設計意図を問われる場面が多い傾向があります。

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MATLAB・Simulinkに関連する資格

MATLAB・Simulinkを使う仕事に、必須となる資格はありません。選考では、資格よりも実務や研究での使用経験が評価される傾向があります。ただし、知識を体系的に整理する目的で、次の資格が役立ちます。

・開発元のMathWorks社による認定資格
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験:組み込み開発に特化した国家試験で、情報処理技術者試験の高度試験の一つ
・技術士(機械部門・電気電子部門など):技術者としての高度な専門性を示す国家資格

出典:IPA「情報処理技術者試験」

なかでも、モデルベース開発を組み込み開発の文脈で扱う場合は、エンベデッドシステムスペシャリスト試験の学習内容と重なる部分があります。

MATLAB・Simulinkスキルと年収の関係

年収は、MATLAB・Simulinkを使えること自体よりも、制御設計やモデルベース開発の経験、担当する工程の広さによって変わる傾向があります。

指標金額・数値(目安)
制御設計エンジニアの平均年収約703.9万円
モデルベース開発経験者の年収水準約578.5万円
全職業の有効求人倍率(職業計)1.12倍

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)

上記の有効求人倍率は全職業の指標であり、制御設計やモデルベース開発の需要そのものを示す数値ではありません。

なお、スキルを身につけても評価されないと感じる場合は、原因が自分のスキルなのか、スキルを活かす機会のない環境なのかを切り分けることが大切です。例えば、Simulinkを使う部署にいても解析の補助だけを担当し、設計や自動コード生成に関われない場合は、原因が環境にあるかもしれません。その場合は、上流から関われる企業への転職も選択肢になります。

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MATLAB・Simulinkを学ぶには

MATLAB・Simulinkは、ツールの操作と制御工学の基礎を並行して学ぶのが効率的です。次の4ステップで進めましょう。

1. 無料の入門講座で操作に慣れる

開発元のMathWorks社は、MATLABやSimulinkの基本操作を学べる無料のオンライン講座を公開しています。まずはこうした講座で、画面の構成や基本的な使い方に慣れておくと、その後の学習がスムーズになります。

2. 制御工学と数学の基礎を学ぶ

Simulinkで意味のあるモデルを作るには、制御工学の理解が欠かせません。フィードバック制御や伝達関数、微分方程式など、大学の基礎科目にあたる内容を入門書で学び直しましょう。

3. 簡単なモデルを作って模擬する

慣れてきたら、ばねにつながれた物体の運動や、直流モーターの速度制御など、身近な題材でモデルを作ります。制御の設定値を変えたときに、動きがどう変わるかを確かめると理解が深まります。

4. 成果を説明できる形で整理する

学習や研究の成果は、転職活動で伝えられる形にまとめておきましょう。「制御の設定値を調整し、目標速度に達するまでの時間を○%短縮した」のように、改善の内容を数値で示すと説得力が増します。

学習環境は、学生であれば大学のライセンス、社会人であれば個人向けのライセンスなどを確認しましょう。費用を抑えて計算の練習をしたい場合は、無償の互換ソフト(GNU Octave)も選択肢になります。ただし、Simulinkと同等の機能はないため、本格的に学ぶ場合は正規の環境を用意するのがおすすめです。

学んだスキルを活かせる職場を探したい方へ

同じMATLAB・Simulinkの経験でも、評価される業界や職種は求人によって異なります。市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。今の悩みの相談だけでもかまいません。
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まとめ

・MATLABは数値計算やデータ解析を行うソフトウェア、SimulinkはMATLAB上でシステムをモデル化・模擬するツール
・Simulinkはモデルベース開発の中心的なツールで、試作前の検証や自動コード生成に使われる
・自動車、航空宇宙、産業機器、電機などの業界で、制御設計や組み込み開発を中心に活用されている
・評価されるのはツールの操作より、制御工学の理解と設計意図を説明できる力
・スキルが評価されないと感じたら、原因が自分のスキルか、機会のない環境かを切り分けて次の行動を考える

よくある質問

MATLABとSimulinkはどちらから学ぶべきですか?

MATLABから学ぶのがおすすめです。SimulinkはMATLAB上で動作し、設定値の計算や結果の解析にはMATLABを使う場面が多いためです。基本的な操作とプログラムの書き方を身につけてからSimulinkに進むと、両者を組み合わせた使い方を理解しやすくなります。

MATLABとSimulinkは無料で使えますか?

基本的には有償のソフトウェアです。ただし、試用版や学生向け・個人向けのライセンスが用意されているほか、大学によっては学内で利用できる場合もあります。また、基本操作を学べる無料のオンライン講座も公開されているため、まずは費用をかけずに触れてみることもできます。

MATLABの代わりにPythonを使うことはできますか?

データ解析や機械学習など、Pythonで代替できる分野はあります。一方で、Simulinkを使ったモデルベース開発や自動コード生成は、他の言語で置き換えにくいのが実情です。制御設計の仕事を目指す場合は、MATLAB・Simulinkの経験が求められる場面が多いことを踏まえておきましょう。

モデルベース開発の経験がないと転職できませんか?

そのようなことはありません。モデルベース開発は歓迎条件として挙げられることが多く、必須とは限りません。制御工学の知識や研究でのMATLAB使用経験、組み込み開発の経験などがあれば、それらを土台として評価してもらえる可能性があります。

未経験でもMATLAB・Simulinkを仕事で使えるようになりますか?

使えるようになる可能性は十分にあります。ただし、ツール操作だけでなく、制御工学や数学の基礎もあわせて学ぶことが前提です。機械・電気系の学科出身の方や、設備保全・回路設計などの経験がある方は、その知識を活かしながら習得を進めやすい傾向があります。

MATLAB・Simulinkの将来性はありますか?

車両の電動化や制御の複雑化を背景に、モデルベース開発の活用は広がる傾向にあります。そのため、MATLAB・Simulinkを使える人材の需要も続くと考えられます。ただし、ツールそのものより、制御の理論や対象製品の知識と組み合わせて使える力が重視される点は押さえておきましょう。

制御設計やモデルベース開発に関わる職種研究の情報を、LINEでもお届けしています。すぐに転職する予定がない方も、情報収集にお役立てください。

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この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部

主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。

この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大

立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。