「FTAって何?」「FMEAとは何が違うの?」と検索したあなたは、品質保証や設計の仕事で、故障や事故の原因分析を任されたり、信頼性の手法を学ぼうとしたりしているのではないでしょうか。FTAは品質や安全の分野で広く使われている手法ですが、記号や計算の方法が分かりにくく、最初は難しく感じる方も多いはずです。
FTA(故障の木解析)とは、起きてほしくない事故や故障を出発点に、その原因となる事象を「どの組み合わせで起きるか」を木の形で上から下へ展開して分析する手法です。 原因を一つずつ洗い出すだけでなく、複数の原因が重なって起きる事象の構造を見える化できるため、効果的な対策の優先順位を考えやすくなります。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、FTAの意味とFMEAとの違い、記号の意味、作り方の手順、製造現場での具体例、確率の計算方法、メリットと注意点、FTAに関わる仕事とキャリアまでを解説します。
FTAとは
FTAは、英語の「Fault Tree Analysis」の頭文字をとった言葉で、日本語では「故障の木解析」や「故障木解析」と呼ばれます。製品やシステムで起きてほしくない事象を「頂上事象(トップ事象)」として最上部に置き、その原因を下へ下へと枝分かれさせて、木を逆さにしたような図で表します。
FTAは、1960年代に安全性が強く求められるシステムの分析のために考案され、その後、航空、原子力、自動車、化学、電機など、さまざまな分野に広まったとされます。
FTAの目的
FTAの主な目的は、次の3つです。
- 原因の構造を明らかにする:頂上事象が、どの原因の、どの組み合わせで起きるのかを見える化する
- 弱点を見つける:一つの原因だけで頂上事象が起きてしまう箇所など、システムの弱いところを見つける
- 対策の優先順位を決める:発生の確率や影響の大きさをもとに、どこに対策すれば効果が大きいかを判断する
FTAの特徴は、「結果」から出発して「原因」をさかのぼる、上から下への分析であることです。 すでに起きた事故の原因を調べるときにも、まだ起きていない事故を防ぐために事前に分析するときにも使えます。
FMEAとの違い
FTAとよく比べられるのが、FMEA(故障モード影響解析)です。どちらも故障や不具合を分析する手法ですが、分析の進め方が逆になっています。
| 観点 | FTA(故障の木解析) | FMEA(故障モード影響解析) |
| 分析の方向 | 上から下(結果から原因へ) | 下から上(部品の故障から影響へ) |
| 出発点 | 起きてほしくない一つの事象 | 部品や工程の一つひとつの故障の仕方 |
| 得意なこと | 複数の原因の組み合わせによる事象の分析 | 漏れなく故障の仕方を洗い出すこと |
| 表し方 | 木の形の図 | 表(ワークシート) |
| 確率の計算 | 原因の発生確率から頂上事象の確率を計算できる | 危険の大きさを点数で評価することが多い |
| 主な使い方 | 重大な事故や故障の原因分析、安全の評価 | 設計や工程の段階での不具合の予防 |
FTAとFMEAは、どちらが優れているというものではなく、組み合わせて使うことで効果が高まります。たとえば、FMEAで部品の故障を漏れなく洗い出し、その中で特に重大な事象についてFTAで原因の組み合わせを詳しく分析する、という使い方が一般的です。
なぜなぜ分析との違い
原因を深掘りする手法として、「なぜなぜ分析」もよく使われます。なぜなぜ分析は、「なぜ」を繰り返して一つの原因の流れを深く掘り下げる手法です。一方、FTAは、複数の原因が「同時に起きたとき」に事象が起きるのか、「どれか一つでも起きれば」事象が起きるのかを、論理的に区別して整理できる点が異なります。
FTAで使う主な記号
FTAの図では、事象とゲート(事象同士の論理的な関係)を記号で表します。代表的な記号は次のとおりです。
| 記号の形 | 名称 | 意味 |
| 長方形 | 事象 | さらに下の原因に展開する事象(頂上事象や中間事象) |
| 円 | 基本事象 | これ以上展開しない、最も下の原因 |
| ひし形 | 非展開事象 | 情報が不足しているなどの理由で、それ以上展開しない事象 |
| 平らな底のドーム形 | ANDゲート | 下の事象がすべて同時に起きたときに、上の事象が起きる |
| 底がくぼんだ盾形 | ORゲート | 下の事象のどれか一つでも起きれば、上の事象が起きる |
特に重要なのが、ANDゲートとORゲートの使い分けです。 ANDゲートでつながっている部分は、複数の原因が重ならないと事象が起きないため、比較的強い構造です。一方、ORゲートでつながっている部分は、どれか一つの原因だけで事象が起きるため、弱点になりやすい箇所です。
FTAの作り方【手順】
FTAは、一般的に次の手順で作成します。
| 手順 | 主な内容 | ポイント |
| 1. 頂上事象を決める | 分析する起きてほしくない事象を一つ決める | 「何が、どうなるか」を具体的に定義する |
| 2. 分析の範囲を決める | 対象となる製品やシステム、工程の範囲と前提条件を決める | 図面や工程の流れを確認しておく |
| 3. 直接の原因を洗い出す | 頂上事象を直接引き起こす事象を挙げる | 関係者の知見を集めて漏れを防ぐ |
| 4. ゲートでつなぐ | 原因同士の関係をANDゲートかORゲートで表す | 「同時に必要か」「一つで十分か」を判断する |
| 5. 基本事象まで展開する | それ以上分解できない原因まで、下へ展開を繰り返す | 対策を打てる具体的な原因まで分解する |
| 6. 評価する | 弱点となる原因の組み合わせや、発生の確率を評価する | ORゲートの多い箇所に注目する |
| 7. 対策を決め、見直す | 対策を決め、効果を確認して図を更新する | 設計や工程の変更時にも見直す |
頂上事象の決め方
FTAの成否は、頂上事象をどう決めるかで大きく変わります。「品質が悪い」のようにあいまいな事象では、原因が広がりすぎて分析がまとまりません。「部品の付け忘れが顧客に流出する」のように、何がどうなるのかを具体的に決めることが大切です。
製造現場でのFTAの例
ここでは、組立工場で「部品の付け忘れが顧客に流出する」ことを頂上事象として、FTAを作成する例を紹介します。
※以下は説明のための例です。
- 頂上事象:部品の付け忘れが顧客に流出する(ANDゲート)
- 中間事象A:組立工程で部品の付け忘れが発生する(ORゲート)
- 基本事象1:作業者が取り付けの作業を忘れる
- 基本事象2:部品の欠品に気づかずに作業を進める
- 中間事象B:検査工程で付け忘れを見逃す(ORゲート)
- 基本事象3:検査が実施されない
- 基本事象4:検査員が付け忘れを見落とす
- 基本事象5:検査用のセンサーが故障している
- 中間事象A:組立工程で部品の付け忘れが発生する(ORゲート)
この例では、頂上事象は「付け忘れが発生する」ことと「検査で見逃す」ことが同時に起きたときに発生するため、ANDゲートでつながっています。一方、付け忘れの発生と検査での見逃しは、それぞれの原因のどれか一つでも起きれば発生するため、ORゲートでつながっています。
この図から、対策の方向性として次のようなことが考えられます。
- 中間事象Aの対策:部品トレイに残った部品で付け忘れが分かるポカヨケを導入する
- 中間事象Bの対策:検査の実施を記録で確認し、センサーの点検を定期的に行う
ミスを仕組みで防ぐポカヨケの考え方については、「ポカヨケとは?」の記事で詳しく解説しています。
FTAの確率の計算方法【計算例】
FTAでは、基本事象が起きる確率が分かれば、頂上事象が起きる確率を計算できます。それぞれの事象が互いに関係なく起きる(独立している)と仮定した場合の、基本の計算方法は次のとおりです。
- ANDゲート:下の事象の確率をかけ合わせる
- ORゲート:「1 −(それぞれの事象が起きない確率をかけ合わせたもの)」で求める(確率が小さい場合は、足し算でおおよその値を出せる)
計算例
前の章の例で、各事象の確率を次のように仮定して計算してみます。
※以下の数値はすべて説明のための例です。
| 事象 | 起きる確率(例) |
| 中間事象A:付け忘れが発生する | 0.01(1%) |
| 中間事象B:検査で見逃す | 0.02(2%) |
頂上事象はANDゲートでつながっているため、確率は次のようになります。
頂上事象の確率 = 0.01 × 0.02 = 0.0002(0.02%)
もし、検査工程がなかった場合は、付け忘れがそのまま流出するため、頂上事象の確率は0.01(1%)になります。この比較から、ANDゲートで原因を重ねる(検査などの防護を追加する)ことで、頂上事象の確率を大きく下げられることが分かります。
ミニマルカットセット
FTAでは、「どの基本事象の組み合わせが起きれば、頂上事象が起きるか」を表す、最小の組み合わせを「ミニマルカットセット」と呼びます。ミニマルカットセットに含まれる基本事象の数が少ないほど、その組み合わせは弱点になりやすいと考えられます。特に、一つの基本事象だけで頂上事象が起きてしまう組み合わせがないかを確認することが重要です。
FTAのメリットと注意点
メリット
- 複数の原因の組み合わせを、図で分かりやすく整理できる
- システムの弱点となる箇所を見つけやすい
- 確率を計算して、対策の効果を数字で比べられる
- 関係者の間で、原因の構造について共通の理解を持てる
注意点
| よくある失敗 | 起こりやすい問題 | 対策 |
| 頂上事象があいまい | 分析の範囲が広がりすぎて、まとまらない | 「何が、どうなるか」を具体的に定義する |
| ANDとORの判断を誤る | 原因の構造を誤って評価してしまう | 「同時に必要か、一つで十分か」を関係者で確認する |
| 原因の洗い出しに漏れがある | 重要な原因を見落とす | 設計、製造、品質など複数の部門の知見を集める |
| 確率の値に根拠がない | 計算の結果が信頼できない | 過去の不具合の記録や信頼性のデータをもとに値を決める |
| 作って終わりになる | 設計や工程の変更が反映されない | 変更のたびに図を見直す |
エージェント視点で言うと、品質保証や設計の選考では、「FTAやFMEAを作った経験」だけでなく、「その分析をもとにどんな対策を打ち、何が改善したか」が見られる傾向にあります。たとえば、「FTAで弱点となる箇所を特定し、検査の仕組みを追加して流出不良を減らした」といった経験は、分析を成果につなげられる人材として伝わりやすくなります。
品質や信頼性の経験を、どの職種で活かせるか知りたい方へ
経験豊富なアドバイザーが、これまでの品質保証や設計・製造の経験を丁寧にヒアリングし、強みを一緒に整理します。
「分析の経験を、もっと設計や改善に活かせる職場に移りたい」といった相談だけでもかまいません。
FTAに関わる仕事
FTAは、製造業のさまざまな職種で使われています。
| 職種 | FTAとの関わり |
| 品質保証 | 重大な不具合や市場での故障の原因を分析し、再発防止策を決める |
| 設計・開発 | 製品の安全性や信頼性を、設計の段階で評価する |
| 信頼性・安全の技術者 | 製品やシステムの故障の確率を評価し、安全の要求を満たすかを確認する |
| 製造技術・生産技術 | 工程での不良の流出や、設備の停止の原因を分析する |
| 設備保全 | 設備の故障の原因を分析し、予防保全の計画に活かす |
FTAの考え方は、機械や電気の製品だけでなく、ITのシステムの障害の原因分析など、幅広い分野で活かされています。
年収とキャリア
FTAに関わる職種の年収は、職種、業界、企業の規模、経験年数などによって大きく変わります。品質や設計の職種に限った公的な統計は限られているため、信頼できる統計を確認したうえで掲載します。
| 指標 | 金額・数値(目安) |
| 有効求人倍率(職業計) | 1.12倍 |
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年11月)
※有効求人倍率1.12倍は全職業の数値で、FTAに関わる職種に限った数値ではありません。
一般的には、FTAやFMEAなどの分析を設計や工程の改善に活かし、成果を出した経験があると、評価や待遇に反映されやすい傾向にあります。特に、自動車や医療機器、産業機械など、安全性や信頼性が強く求められる業界では、こうした分析の経験が重視されることがあります。
「分析を活かせない」原因を切り分ける
ご相談の場では、「FTAやFMEAを作っても、審査や顧客への提出のためだけで、実際の改善に使われない」という声をよく聞きます。この悩みは、分析の手法そのものの問題ではなく、分析の結果を設計や工程の見直しに反映する仕組みがない職場の環境に原因があることが少なくありません。原因が職場にあるなら、分析を改善に活かしている企業へ移ることで、経験をより活かせる可能性があります。
FTAの考え方を知ると、品質や信頼性の仕事の広がりも見えてきます。製造業の職種研究や、資格選びに役立つ情報をLINEで配信していますので、まずは気軽に受け取ってみてください。
必要なスキル・役立つ資格
FTAを実務で活かすには、次のような知識とスキルが役立ちます。
- 製品やシステムの知識:構造や動きを理解し、故障の原因を具体的に考える力
- 論理的に考える力:原因同士の関係を、ANDとORで正しく整理する力
- 確率の基礎知識:基本事象の確率から、頂上事象の確率を計算する力
- 関係者の知見を集める力:設計、製造、品質など複数の部門の意見をまとめる力
- 他の手法の知識:FMEAやなぜなぜ分析など、組み合わせて使う手法の理解
役立つ資格には、次のようなものがあります。
| 資格 | 実施・主催 | ポイント |
| 品質管理検定(QC検定) | 日本規格協会 | 品質管理の手法を体系的に学べる |
| 信頼性技術者の資格 | 日本科学技術連盟など | FTAやFMEAを含む信頼性の手法を学べる |
| 統計検定 | 日本統計学会 | 確率や統計の考え方を学べる |
| 機能安全に関する研修・資格 | 各研修機関・認証機関 | 自動車や産業機械の安全設計の考え方を学べる |
経験を数値で伝える
FTAに関わった経験は、数値で示すと説得力が増します。
| 項目 | 改善前の書き方 | 改善後の書き方 |
| 原因分析 | FTAで原因を分析した | 市場不具合1件についてFTAを作成し、3つの原因の組み合わせを特定 |
| 対策の効果 | 対策で不良を減らした | FTAで特定した弱点に検査を追加し、流出不良を年6件から1件に削減 |
| 設計への反映 | 設計の安全性を評価した | 新製品の主要な危険事象5件についてFTAを作成し、設計審査に反映 |
※数値は記入例です。ご自身の実績に置き換えてお使いください。
品質・信頼性のキャリアを、一緒に考えませんか
市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。
まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
まとめ
- FTA(故障の木解析)とは、起きてほしくない事象を出発点に、その原因を木の形で上から下へ展開して分析する手法です。
- FMEAが部品の故障から影響を考える下から上への分析であるのに対し、FTAは結果から原因をさかのぼる上から下への分析です。
- ANDゲートとORゲートで原因の関係を整理し、ORゲートでつながる箇所や、少ない原因で事象が起きる組み合わせが弱点になりやすいです。
- 基本事象の確率から頂上事象の確率を計算でき、対策の効果を数字で比べられます。
- 分析を活かせないと感じたときは、手法の問題か、分析を改善に反映しない職場の環境の問題かを切り分けることが大切です。
よくある質問
FTAとFMEAはどちらを使えばよいですか?
目的によって使い分けます。設計や工程の段階で故障の仕方を漏れなく洗い出したい場合はFMEA、特定の重大な事故や故障について、複数の原因の組み合わせを詳しく分析したい場合はFTAが向いています。両方を組み合わせて使うことも一般的です。
FTAは手書きでも作れますか?
作れます。小規模な分析であれば、紙やホワイトボード、表計算ソフトなどでも作成できます。事象の数が多い場合や、確率の計算を行う場合は、専用のソフトウェアを使うと効率的です。まずは身近な事象で、手書きで作ってみることをおすすめします。
FTAの確率の値はどうやって決めますか?
過去の不具合の記録、設備の故障の実績、部品の信頼性のデータなどをもとに決めます。根拠のない値を使うと計算の結果も信頼できなくなるため、値の出どころを記録しておくことが大切です。値が分からない場合は、定性的な分析にとどめることもあります。
FTAとなぜなぜ分析の違いは何ですか?
なぜなぜ分析は、「なぜ」を繰り返して一つの原因の流れを深く掘り下げる手法です。FTAは、複数の原因が同時に起きる必要があるのか、どれか一つで起きるのかを、ANDとORで論理的に整理できる点が異なります。複雑な事象の分析にはFTAが向いています。
FTAはどんな業界で使われていますか?
航空、原子力、化学、自動車、電機、医療機器など、安全性や信頼性が強く求められる業界で広く使われています。製造業だけでなく、ITのシステムの障害の原因分析などにも活用されています。
FTAの経験は転職で評価されますか?
品質保証や設計、信頼性の分野では評価されやすい経験です。特に、FTAで特定した弱点に対策を打ち、不具合を減らした経験は強みになります。分析した事象と、対策の結果を数字で整理しておきましょう。
FTAについて知ったうえで、品質や信頼性の仕事やキャリアについてもう少し調べてみたい方もいらっしゃると思います。製造業の職種研究や、品質の分野で環境を変えた方の事例をLINEで配信していますので、気軽に受け取ってみてください。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。

