「生産計画の立て方が分からない」「先輩の計画をまねしているけれど、何を根拠に数量を決めているのか分からない」と検索したあなたは、生産管理の担当になったばかりか、現場のリーダーとして計画づくりを任されたところではないでしょうか。生産計画は、工場の動きを決める土台となる仕事ですが、手順を体系的に教わる機会は意外と多くありません。
生産計画は、「需要を把握する→必要な生産量を決める→生産能力と照らし合わせる→日程に落とし込む→実績と比べて見直す」という5つのステップで立てると、根拠のある計画になります。 大切なのは、一度で完璧な計画をつくることではなく、計画と実績のずれを早く見つけて修正し続けることです。
この記事では、IT・機電エンジニア専門の転職エージェントである私たちが、生産計画を立てる前に集める情報、立て方の5ステップ、計算の具体例、生産方式別のポイント、よくある失敗と対策、計画づくりに必要なスキルを解説します。
そもそも生産計画とは
生産計画とは、「どの製品を、いつ、どれだけつくるか」を決める計画です。顧客に約束した納期を守りながら、在庫を持ちすぎず、人や設備をむだなく使うことを目的とします。
生産計画は、期間の長さによって3つに分けて立てるのが一般的です。
| 区分 | 期間の目安 | 主に決めること | 主な使い道 |
| 大日程計画 | 半年〜1年 | 月ごとの生産量、人員や設備の増減 | 設備投資や採用の判断 |
| 中日程計画 | 1〜3か月 | 週ごとの生産量、材料の手配の時期 | 材料の発注、人員の配置 |
| 小日程計画 | 1日〜1週間 | ラインや作業者ごとの作業の順番 | 現場への作業指示 |
長い期間の計画で全体の方向性を決め、短い期間の計画で具体的な作業に落とし込んでいきます。日程計画と工程の進み具合の管理については、「工程管理とは?」の記事で詳しく解説しています。
生産計画を立てる前に集める情報
根拠のある生産計画を立てるには、まず必要な情報をそろえることが大切です。情報が欠けたまま計画を立てると、材料が足りない、設備が空いていないといった問題が後から起こりやすくなります。
| 集める情報 | 内容 | 主な入手先 |
| 需要・受注 | 確定した注文の数量と納期、今後の販売の見込み | 営業部門、販売管理のデータ |
| 在庫 | 製品、仕掛品(作りかけの製品)、材料の現在の数量 | 在庫管理のデータ、倉庫 |
| 安全在庫 | 需要の変動に備えて持っておく最低限の在庫量 | 社内の基準、過去の出荷実績 |
| 生産能力 | 人員、設備の台数、稼働時間、稼働率 | 製造部門、設備保全部門 |
| 標準時間 | 製品1個をつくるのにかかる作業時間 | 生産技術部門、作業標準書 |
| 部品表とリードタイム | 製品に必要な部品と、発注から納品までの期間 | 設計部門、購買部門 |
| 休日・行事 | 稼働日、設備の点検日、長期休暇 | 会社の稼働カレンダー |
特に、標準時間や稼働率は「実際の数字」を使うことが重要です。理論上の数字で計画すると、現場では計画どおりに進まず、遅れが常態化する原因になります。
生産計画の立て方5ステップ
ここからは、生産計画を立てる具体的な手順を5つのステップで解説します。
ステップ1. 需要を把握する
まず、計画の期間内に「いくつ必要とされているか」を把握します。確定している受注の数量に加え、見込み生産の場合は過去の出荷実績や営業の販売計画をもとに、需要を予測します。
需要の予測は、営業部門と数字をすり合わせることが欠かせません。営業の見込みをそのまま使うのではなく、過去の実績と比べて大きくずれていないかを確認しましょう。
ステップ2. 必要な生産量を決める
次に、需要から在庫を差し引き、安全在庫を加えて、必要な生産量を計算します。基本の考え方は次のとおりです。
必要生産量 = 需要量 − 現在の在庫 + 安全在庫
すでに在庫が十分にある製品は生産量を減らし、在庫が少ない製品は優先してつくる、という判断の根拠になります。
ステップ3. 生産能力と照らし合わせる
必要な生産量が決まったら、それをつくるのに必要な作業時間(負荷)を計算し、人や設備が使える時間(能力)と比べます。
負荷 = 必要生産量 × 1個あたりの標準時間
負荷率 = 負荷 ÷ 能力 × 100
負荷率が100%を超える場合は、能力が足りていません。残業や休日出勤、他のラインへの振り分け、生産時期の前倒し、外部への委託などで調整します。逆に負荷率が大きく下回る場合は、人員の配置を見直したり、先の生産を前倒ししたりすることを検討します。
ステップ4. 日程に落とし込む
負荷と能力のバランスが取れたら、週ごと、日ごとの日程に割り振ります。このとき、次の点に注意しましょう。
- 納期の早い注文から優先して割り振る
- 材料の入荷予定より前に生産を入れない
- 段取り替え(製品を切り替える準備作業)の回数が増えすぎないよう、同じ製品をまとめる
- 設備の点検日や休日を除いて計画する
ステップ5. 共有し、実績と比べて見直す
計画ができたら、製造、購買、営業など関係する部門に共有します。生産が始まったら、毎日または毎週、計画と実績を比べ、ずれがあれば原因を確認して計画を修正します。
生産計画は「立てて終わり」ではなく、実績との差を見て修正し続けることで、精度が上がっていきます。
計画を確定する前のチェックリスト
計画を共有する前に、次の項目を確認しましょう。
- □ 確定している受注の数量と納期をすべて反映している
- □ 在庫と安全在庫の数字が最新である
- □ 標準時間と稼働率は、実績にもとづく数字を使っている
- □ 負荷率が100%を超えている期間がない(超える場合は対策を決めている)
- □ 材料の入荷予定と、生産の開始日が合っている
- □ 休日や設備の点検日を除いている
- □ 営業と製造に、計画の前提を説明できる
ステップとチェックリストに沿って進めると、計画の根拠を説明しやすくなります。生産管理の仕事に役立つ情報や、未経験から製造業に転職した方の事例をLINEでもお届けしていますので、学びの一つとして気軽にご活用ください。
具体例で見る生産計画の立て方
ここでは、ある部品メーカーの製品Aについて、翌月の生産計画を立てる例で手順を確認します。
※以下の数値はすべて説明のための例です。
| 項目 | 数値の例 |
| 翌月の需要(受注と見込み) | 1,200個 |
| 月初の在庫 | 300個 |
| 安全在庫 | 200個 |
| 1個あたりの標準時間 | 6分 |
| 稼働日 | 20日 |
| 1日の稼働時間 | 7時間 |
まず、必要生産量を計算します。1,200個 − 300個 + 200個 = 1,100個となります。
次に、負荷を計算します。1,100個 × 6分 = 6,600分で、時間に直すと110時間です。生産能力は、20日 × 7時間 = 140時間です。負荷率は110時間 ÷ 140時間 × 100 = 約79%となり、能力の範囲内で生産できることが分かります。
最後に、週ごとの日程に割り振ります。
| 週 | 稼働日 | 生産量 | 負荷(時間) | 備考 |
| 第1週 | 5日 | 300個 | 30時間 | 月初に納期の早い注文が集中 |
| 第2週 | 5日 | 300個 | 30時間 | ― |
| 第3週 | 5日 | 250個 | 25時間 | 設備の点検日あり |
| 第4週 | 5日 | 250個 | 25時間 | 翌月の需要を見て調整 |
| 合計 | 20日 | 1,100個 | 110時間 | 負荷率 約79% |
実際の工場では、複数の製品が同じラインや設備を使うため、製品ごとの負荷を合計して、ライン全体の負荷率を確認します。
生産方式別の立て方のポイント
生産計画の立て方は、工場の生産方式によって重視する点が変わります。
| 生産方式 | 特徴 | 計画で重視すること |
| 見込み生産 | 需要を予測してつくり、在庫から出荷する | 需要予測の精度と、在庫の量の管理 |
| 受注生産 | 注文を受けてからつくる | 納期の回答と、受注ごとの日程の管理 |
| 多品種少量生産 | さまざまな製品を少しずつつくる | 段取り替えの回数と、製品の並べ方 |
| 少品種大量生産 | 同じ製品を大量につくる | ラインの稼働率と、生産の平準化(日ごとの生産量をならすこと) |
見込み生産では、需要の予測が外れると在庫の過不足が起きるため、販売の実績を見ながら計画をこまめに修正することが大切です。一方、受注生産では、新しい注文が入るたびに、空いている能力の中で納期を回答する力が求められます。
エクセルとシステム、どちらで管理する?
生産計画は、表計算ソフト(エクセルなど)で管理する方法と、生産管理システムで管理する方法があります。
- 表計算ソフト:導入しやすく、自社の業務に合わせて自由に作れます。ただし、品目や工程が増えると管理が複雑になり、作成した担当者しか扱えない状態になりやすい点に注意が必要です。
- 生産管理システム:受注、在庫、部品表のデータと連携し、必要生産量や材料の手配を自動で計算できます。ただし、導入には費用と時間がかかり、正確な基本データの整備が欠かせません。
中小規模の工場では表計算ソフトで管理しているところも多く、規模が大きくなるにつれてシステムへ移行する傾向があります。会社全体のデータを一元管理する仕組みについては、「ERPの生産管理とは?」の記事で詳しく解説しています。
生産計画に必要なスキルと役立つ資格
生産計画を立てる仕事には、計算の力だけでなく、関係者と調整する力が求められます。
- 数字を扱う力:需要、在庫、負荷、能力を計算し、判断に使う力
- 先を読む力:需要の変化や材料の遅れを予測し、早めに手を打つ力
- 調整力:営業、製造、購買の要望をすり合わせ、合意をつくる力
- 現場の理解:設備の特徴や作業の実態を知り、無理のない計画を立てる力
- 表計算ソフトのスキル:関数や集計を使い、計画表を効率よく作る力
必須の資格はありませんが、知識を体系的に学ぶには次の資格が役立ちます。
| 資格 | 実施・主催 | ポイント |
| ビジネス・キャリア検定(生産管理) | 中央職業能力開発協会 | 生産計画を含む生産管理の知識を体系的に学べる |
| 品質管理検定(QC検定) | 日本規格協会 | データの見方や改善の考え方を学べる |
| 日商簿記検定 | 日本商工会議所 | 在庫や原価が会社の利益にどう影響するかを理解できる |
エージェント視点で言うと、生産管理職の選考では、「計画をどう立てたか」よりも「計画が崩れたときにどう立て直したか」を聞かれることが多い傾向にあります。急な注文の追加や設備の故障に対して、どの情報を見て、誰と調整し、どう計画を組み替えたのかを具体的に話せるよう整理しておくと、選考で評価されやすくなります。
立場・経験別に見る生産計画のポイント
生産計画に取り組む立場によって、意識したいポイントは異なります。
| 立場 | よくある悩み | 意識したいポイント |
| 生産管理に配属されたばかりの担当者 | 前任者の計画の根拠が分からない | まず前提の数字(標準時間、稼働率、安全在庫)を確認する |
| 製造現場の班長・リーダー | 計画が現場の実態に合わない | 実際の作業時間や稼働率を数字で示し、計画に反映してもらう |
| 他部門から異動してきた人 | 製造の用語や工程が分からない | 現場を見学し、製品ができるまでの流れを自分の目で確認する |
| 生産管理職への転職を目指す人 | 実務経験がない | 前職で計画を立てて調整した経験を、手順に沿って説明できるようにする |
生産管理職への転職を目指す方は、前職で「需要を見て、能力と照らし合わせ、日程を組み、見直した」経験がないか振り返ってみましょう。たとえば、飲食店でのシフトづくりや、物流での出荷計画なども、考え方は生産計画と共通しています。
生産計画の経験を、次のキャリアにつなげたい方へ
経験豊富なアドバイザーが、これまでの経験を丁寧にヒアリングし、生産管理の仕事で活かせる強みを一緒に整理します。
「自分の経験で生産管理職に応募できるか知りたい」という段階の相談だけでもかまいません。
生産計画でよくある失敗と対策
生産計画づくりでよくある失敗と、その対策をまとめました。
| よくある失敗 | 起こりやすい問題 | 対策 |
| 理論上の標準時間で計画する | 現場で計画どおりに進まず、遅れが続く | 実績の作業時間と稼働率を使う |
| 営業の見込みをそのまま使う | 在庫の過剰や欠品が起きる | 過去の実績と比べ、営業と数字をすり合わせる |
| 材料の入荷予定を確認しない | 材料がなく、生産を始められない | 購買と入荷予定を確認してから日程を組む |
| 計画を共有しない | 現場や営業が計画の前提を知らず、混乱する | 計画の前提と変更点を関係部門に説明する |
| 実績との比較をしない | 同じ遅れが何度も起きる | 毎日または毎週、計画と実績の差を確認する |
計画が崩れる原因を切り分ける
計画がうまくいかないと感じたときは、その原因が「計画の立て方」にあるのか、「組織の仕組み」にあるのかを切り分けることが大切です。
標準時間や在庫の数字が古い、負荷の計算をしていないといった問題であれば、自分の計画の立て方を見直すことで改善できます。一方で、営業が生産の状況を確認せずに納期を約束してしまう、設備の故障の情報が共有されないといった問題は、個人の努力だけでは解決が難しい組織の課題です。
ご相談の場では、「毎日計画を組み直しているのに、急な注文が入るたびに崩れてしまい、自分の力不足を感じている」という声をよく聞きます。お話をうかがうと、原因が受注のルールや部門間の情報共有の仕組みにあるケースも少なくありません。組織の課題であれば、上司に仕組みの見直しを提案するか、体制の整った職場で経験を積むことも一つの選択肢です。
生産管理の仕事、今の職場で続けるか迷ったら
市場価値を客観的に評価したうえで、納得のいく選択肢を一緒に考えます。
まずは情報収集の一環として話を聞いてみたいという方も歓迎です。
まとめ
- 生産計画とは「どの製品を、いつ、どれだけつくるか」を決める計画で、大日程・中日程・小日程に分けて立てる
- 計画の前に、需要、在庫、安全在庫、生産能力、標準時間、部品表、稼働日の情報をそろえる
- 需要の把握、必要生産量の計算、能力との照合、日程への割り振り、実績との比較の5ステップで立てる
- 生産方式によって、需要予測、納期の回答、段取り替え、平準化など、重視する点が変わる
- 計画が崩れる原因が、自分の立て方にあるのか組織の仕組みにあるのかを切り分けて対策する
よくある質問
生産計画は何から始めればよいですか?
まずは、計画に必要な情報をそろえることから始めましょう。特に、需要(受注と見込み)、在庫、生産能力の3つは欠かせません。前任者の計画がある場合は、標準時間や稼働率、安全在庫などの前提となる数字を確認し、根拠を理解することが第一歩です。
安全在庫はどのように決めればよいですか?
安全在庫は、需要のばらつきや、材料が届くまでの期間をもとに決めるのが一般的です。統計的な計算方法もありますが、まずは過去の出荷実績の変動や欠品の発生状況を見て、社内の基準を確認しましょう。在庫を持ちすぎると費用が増えるため、定期的に見直すことが大切です。
生産計画はエクセルで管理しても大丈夫ですか?
品目や工程が少ないうちは、表計算ソフトで十分に管理できます。ただし、品目が増えると管理が複雑になり、担当者しか扱えない状態になりやすい点に注意が必要です。計算の手順や前提を記録しておき、必要に応じて生産管理システムの導入を検討しましょう。
計画どおりに生産が進まないときはどうすればよいですか?
まず、計画と実績の差を確認し、遅れの原因を特定しましょう。作業時間の見込み違い、材料の遅れ、設備の故障など、原因によって対策は異なります。残業や作業の順番の入れ替えで取り戻すとともに、同じ原因が繰り返されないよう、計画の前提も見直すことが大切です。
未経験でも生産計画の仕事はできますか?
できます。生産計画の考え方は、シフトづくりや出荷計画など、他の仕事にも共通する部分があります。入社後は、先輩の計画づくりを手伝いながら、前提となる数字の意味や計算の手順を学ぶのが一般的です。生産管理の基礎を資格などで学んでおくと、理解が早まります。
生産計画のスキルは転職で評価されますか?
評価されることが多いスキルです。特に、担当した製品やラインの数、負荷率の改善、在庫の削減、納期遵守率の向上など、成果を数字で示せる経験は強みになります。計画が崩れたときにどう立て直したかを具体的に話せるよう、事例を整理しておきましょう。
生産計画の立て方を知ったうえで、もう少し生産管理の仕事について調べてみたい方もいらっしゃると思います。製造業の職種研究や、資格選びに役立つ情報をLINEで配信していますので、気軽に受け取ってみてください。
この記事の執筆者

AIdeaCareerMedia編集部
主にIT・機電エンジニアに特化した転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればエンジニア人材の採トレンド等の「エンジニアに携わる転職・採用」の情報を提供します。
この記事の監修者

【機電部門統括責任者】キャリアアドバイザー 湯浅 空大
立命館大学卒業後、新卒で中堅アパレル企業へ入社。当社入社後は未経験圧倒的なスピードで実績を上げ、わずか2年半で機電部門統括責任者に就任。
圧倒的な求職者様目線を強みに、多くの機電エンジニアの転職成功。現在は、機電部門統括責任者として、勝てる組織づくりと後進育成に邁進。

